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No.4 不老不死

爆弾は、あと30秒で爆発する。


爆弾の側面にある時計が、それを教えてくれた。


カイは、急いでコルサットの森を目指した。


その爆弾が、どれほどの威力があるかは、全く分からない。


しかし、万が一強力な爆弾だったとしたら、コルサット全体が危険にさらされる。


そんなことを考えながら、カイは必死に走った。


ただ、カイはその間、自分の身を案ずるような様子は全くない。


カイは自分の身に危険が迫っているとは、全く思っていないのだ。


その理由は、彼の果てしない過去が物語る。





カイは以前、コルサットのあるシュンオウ大陸ではなく、カイオウ大陸に住んでいた。


カイは、両親を幼くして亡くし、母方の祖母の家で育てられた。


両親がいないという辛い現実にも負けず、カイは明るく活発な子どもだった。


また、他の子ども達と比べてカイは、幼いわりには思考能力が長けていて、優れた頭脳を持っていると周囲の噂になるほどだった。


そんなカイが、伝説の不死鳥に興味を持ち、不死鳥についての勉強を始めてみると、不死鳥の痕跡報告や目撃談、過去の偉人が記した不死鳥研究・調査の書物などを照らし合わせて、その居場所や寝床を突き止めるということは、そう困難なことではなかった。


不死鳥の居場所を突き止めた以上は、カイ自身も一目みたいと思うようになった。


そして、祖母の元を離れ、カイは18歳の時に一人、旅に出た。


不死鳥が居るであろうと自分で突き止めた、ライク国の森。


しかし近年、悪名高い殺し屋が出現したり、血に飢えた獣が増え始めたりして、この世界の治安は、確実に悪化していた。


そのため、森に辿り着くまでの道のり自体も非常に困難なものであることが予想された。


その上、辿り着いた森の中でも、危険な野獣などに襲われる可能性だってある。


旅は、危険以外の何物でもなかった。


しかし、幼い頃から最低限の戦闘技術や護身術を身に付けることは、世界の治安の悪化と共に、当然のこととして考えられていたし、それは義務に近かった。


危険が身近にある時だからこそ、自分の身は自分で護る。


それが鉄則、ということだったのだろう。


しかし、やはり危険が付き物の道中、万が一のことがあってはいけない、と心配した祖母から、カイは護身用の短剣を譲り受けた。


旅立ってから何ヶ月もの間、猛獣や夜盗などに襲われながらも、ライク国の森に隣接する小さな町に拠点を設け、森の中を気持ちの向くままに歩き回った。


しかし、一向に不死鳥らしきものの影すら見当たらない。


やがて、町に拠点を設けてから一年が経過し、もう一度初めから調べなおすべきなのか、と諦めかけた時だった。


森の中を歩き回っていたカイの頭上が突然暗くなったり明るくなったりし始めた。


それまで、深い森の中とはいえ、陽の光は途切れることなく注いでいた。


しかし、それが遮られる瞬間がある。


カイは、頭上を見上げた。


するとそこには、大きな赤い羽根を広げ、燃え上がる炎のような赤の羽毛を身にまとった、神秘の鳥がいた。


それが、自分が捜していた不死鳥だと、カイは時間差で理解した。


その姿は、あまりに美しかった。


カイは、思わずその姿に見とれていた。


しかし、次の瞬間、不死鳥が思いもよらない行動を起こした。


不死鳥の真下でボーっとしているカイに、不死鳥が襲い掛かってきたのだ。


カイはとっさに懐から、忍ばせていた短剣を取り出した。


そして、自分の方に迫り来る不死鳥の腹を、短剣で思いっきり斬り付けた。


カイは、そのような行動を起こしてから、すぐに罪悪感を感じた。


カイが斬り付けた傷口から、不死鳥の血がドバっと噴き出した。


カイは、その大量の不死鳥の鮮血を全身に満遍なく浴びた。


カイの姿は、不死鳥の真っ赤な血で塗り潰され、すぐに体が熱くなってきた。


体の熱が恐ろしくなり、カイはその場を走って逃げた。


そして、森にある湖に勢い良く飛び込んだ。


湖の水で、全身についた不死鳥の血を、カイはキレイに洗い流そうとしたのだ。


しかし、服に染み付いた血は、全くとれなかった。


そして、カイは水面に揺れながら映る自分を見て、愕然とする。


カイはもともと、瞳は茶色で髪も茶色だった。


しかし、何故か不死鳥の血を浴びた今、瞳や髪の色素が一気に薄くなったのか、瞳も髪も赤みの強い色に変化していた。


カイは、驚きはしたものの、瞳や髪の色の変化くらいなら大したことではない、とショックを和らげようと、そう自分に言い聞かせた。


しかし、カイの体の変化はそれだけでは留まらなかった。






サガミの家に投げ込まれた爆弾を、カイはコルサットの森の中に投げた。


すると、爆弾は森の中で思ったよりも小規模な爆発を起こし、消滅した。


おそらく、何者かがサガミの家だけをターゲットにして作った、爆弾だったのであろう。


爆弾がうまく処理できて一安心しているカイの元に、見知らぬ男が姿を現した。


「余計なことをしてくれたな。」


そう言って、謎の男はカイの元にゆっくりゆっくりと歩み寄ってくる。


カイはポケットに手を突っ込んだ。


「余計なこと?」


カイが、嫌味な聞き返し方をした。


「そうだ。あの爆弾は、サガミの家で見事に爆発する予定だったシロモノだ。それを、邪魔してくれただろう?だから、余計なことなんだ。」


「あんた、何者だ?」


「俺は、不死鳥研究団体ロングシャドウの一員だ。」


「ご苦労様です。」


カイは、ふざけた様子で謎の男に会釈した。


すると、謎の男は苛立ち始める。


「てめぇこそ、何者だ?」


その、謎の男の質問に、カイは笑顔で応える。


「しがない、ただのゴミ処理業務員です。」


その言葉を聞いて、謎の男は高笑いしだす。


そして、


「目障りだ。死ね。」


謎の男は表情を一変させて、カイに銃を向けた。


カイは、それを見ても微動だにしない。


そして、謎の男はためらうことなく、カイに1発の銃弾を打ち込んだ。


それは、確かにカイの胸を貫いていった。


しかし、カイは撃たれた部分をポリポリと掻きながら、


「あ。やべぇ。避けるの忘れてた。」


と、大げさに悔しがる様子を見せながら、おちゃらけて見せた。


謎の男は、カイのその様子を目の当たりにして、怯え出した。


「な、なんだ、お前!?化け物か!?」


謎の男は、そう言って徐々に後ずさりしている。


カイは、ゆっくりと謎の男に歩み寄った。


「確かに、化け物だよ。だって、俺今年で133歳になる、長寿人間だからね。」


と、カイは笑いながら言った。


しかし、見るからにカイは133歳には見えない。


どう見ても、カイは10代後半の青年にしか見えない。


謎の男は、またカイがふざけているのかと思った。


しかし、先ほど銃弾をくらっても微動だにしなかった彼の様子と、今の発言から考えると、


「お前まさか、不老不死なのか……!?あの、不死鳥に会ったことがあるっていうのか!?」


答えは、必然的にそうなった。


するとカイは、これといった返答はせず、ただほのかな笑みを口元に浮かべている。


「そんなことは、どうでもいいんだ。あんた、サガミの家に爆弾投げ込んで、爆発させて、サガミやサガミの親父さんを殺して、一体どうするつもりだったんだ?」


目の前で青ざめている謎の男は、一呼吸置いてから口を開いた。


「サガミは、不死鳥の貴重な羽を所持している。それは、我々ロングシャドウの物になるべき物。ロングシャドウを裏切ったサガミには、消えてもらうつもりでいたのさ。」


「なるほど。つまり、ロングシャドウの皆さんは、サガミを忌み嫌ってるわけですな。」


カイが、真面目なのか不真面目なのか区別のつかない口調で言った。


「その通りだ。ところで、さっきの質問に答えてもらおうか。お前は、不死鳥に会ったことがあるのか?」


「ある、と言ったら?」


カイが、謎の男を探るように見つめた。


「ロングシャドウの研究所で、お前の身体の全組織のデータをとる。そして、本当に不老不死の体なのか調べる。そして、最終的にお前が不老不死だと分かったら、我々ロングシャドウの一員として加わってもらう。」


謎の男の話を聞きながら、カイはずっと顔をしかめていた。


「じゃあ、ないってことにしといてください。俺、男に体触られて喜ぶ人間じゃないし、ましてや陰気そうな研究団体に参加する気もないし。交渉決裂ということで。」


そう言って、カイは謎の男に手を振った。


そんな間の抜けたようなカイの態度に、謎の男は苛立ってくる。


「俺を、馬鹿にしてんのか!?」


という、謎の男の叫びに、カイは振り向き、


「はい。」


と、笑顔で答えた。


そして、謎の男に背を向け、その場から立ち去ろうとした。


すると、謎の男は逆上して、無数の銃弾をカイの背中に撃ち込んだ。


しかし、カイはたくさんの銃弾を受けながらも、普通に歩いている。


謎の男は、その信じ難い光景に、腰を抜かした。

こんにちは。作者のJOHNEYです。どうやら、お読み頂いた方にご評価を頂くことができたようで、少しほっとしております。

今後も、どうぞよろしくお願い致します。

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