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No.24 最終章

右手を二発の銃弾に撃ち抜かれたダングは、うめき声を上げながら悶えていた。


「あの、アマ・・・許さねぇ・・・!!」


しかし、ダングの右手はすでに言う事をきかなくなっていた。


「ダング、あんたの右手はもう再起不能だよ。そんな完全に撃ち抜かれてたら、日常生活にだって支障をきたすだろうしね。ましてや、殺し屋なんて続けられないだろう。」


カイは、地面に落ち伏せているダングの目の前にしゃがんだ。


「それに、肝心のイレイザーのリーダーは、もう寝たきり老人。死を待つのみってかんじだ・・・。そんな奴に付いて来る奴もいないだろうし、あんたがまとめ上げようとしても、たかが知れてる。イレイザーは、自然消滅が先の山だな・・・。」


そして、


「ダング、負けたんだよ。あんたも、イレイザーも・・・。」


複雑な表情のカイの言葉を聞いて、ダングは音がするほど歯を食いしばってはいたものの、その場で脱力して静止した。














無事、ミキカを取り戻し、カイ達はホテルからカーザの部屋に戻ってきた。


しばらくしてからサガミは、独りシオンの港へと出て行った。


部屋には、カイとカーザとミキカの三人になった。


「助けてくれて、ありがとう。」


ミキカのその一言の後、部屋の中には会話が一つも生まれずにいた。


そして、しばらくしてからカイが口を開く。


「・・・イレイザーがこの先壊滅したとしても、俺やイレイザーの人間全てが犯した罪が消えるわけじゃない・・・。俺は、不老不死の体で、「死」というものをどこか軽く考え過ぎていたのかもしれない・・・。今こうして生きているということが、どんなに掛け替えのないことなのかってことに、気付いてなかったんだ・・・。」


真剣な表情で、カイは語った。


すると、


「・・・・・・実は、サガミちゃんに「カイを誤解してる」って怒られたよ・・・。俺は、お前が不老不死であることを苦しみと思っているとは、思ってなくてさ・・・。悪かったよ・・・、ごめん・・・。」


カーザがカイに深々と頭を下げた。


カイは、ただ、どこか寂しげな表情で、そのカーザの頭を上げさせた。


そして、少しの沈黙の後、


「これまで犯してきた数々の罪を償いながら、しょく罪に生きるのが、これからの俺の「生きる」意味になる・・・。もちろん・・・」


カイは黙り込んだ。


その言葉を聞いて、ミキカがすぐに口を開く。


「カイ・・・。」


悲しげな瞳のカイが、ミキカの声に反応した。


「ずっと・・・、いつ言おうかって、思ってて・・・。カイから私の曾祖母の話を聞いた時に、一つ思い出したことがあったの。でも、伝える機会を見失っちゃって・・・。」


カイもカーザも、不思議そうにミキカを見つめた。


「以前にね、私の祖母、つまりルミの書いた日記を見たことがあったの。その中で、すごく印象的だったところがあって・・・。」


ミキカは、日記に記されていたことを少しずつ思い出しながら語った。













○月×日


昨日の夜、幼い頃の夢を見た。


母がまだ生きている頃の夢だ。


当時、私はまだ3歳程で、記憶としてはとても曖昧なものだが、根強い思い出が残っている。


父は、お世辞にも良い父親であったとは言えない人だった。


母をいつも泣かせていた。


しかしある日、不思議な青年と母は近所の林で落ち合うようになった。


その青年は、見た目の若さからは想像できないほど落ち着いた様子で、母は彼に好意を持っていた。


私も、彼の優しさや暖かさに触れるにつれて、彼が私の父親だったらどんなに幸せだろうとさえ感じていた。


彼に出会ってからの母は、驚くほどの変化があり、笑顔が増え、将来への希望などなかっただろう時とは比べものにならないほど、明日への希望に満ち溢れていた。


そんなある日、母は私にこう漏らしたのだ。


「今という幸せな時が常に最高の時で、それが明日への希望に繋がっている。これ以上の幸せは、きっとないだろう。今が幸せであり過ぎるから。」


その言葉は、私の記憶に根強く残っている。


昨日の夢の中でも、母は満弁の笑みで私にそう、語りかけてきた。


あの不思議な青年が、どうか今、幸せでありますように。













それは、カイにとって思わぬ知らせだった。


ルミが生前、そのような日記を残していたとは、カイにとっては意外な事実だった。


「ちゃんと全て覚えたわけじゃないから、多少違うところがあるかも知れないけど、少なくとも、日記に書かれた「不思議な青年」っていうのは、カイのことで、私の曾祖母や祖母は、カイのことを怨んだりしていないってことは、私にも分かるわ・・・。」


カイは、呆然としている。


「カイ、あなたは初めから償う必要なんてなかったのよ・・・。むしろ、あなたは感謝され、・・・・・・愛されていたのよ。」


放心状態のカイの肩に、ミキカが触れた。


「カイ、二人が願っているのは、あなたが苦しむことじゃない。幸せであることよ。」


ミキカは、真っ直ぐカイの瞳を見て言った。


すると、表情のないカイの瞳から、一粒の涙がこぼれ落ちた。













サガミは、シオンの港から大海原を見つめていた。


イレイザーの任務不履行によって、ロングシャドウは一先ず手を引き、サガミを襲う輩は消えた。


サガミはようやく、静かな気持ちでシオンに立つことができたような気がしていた。


しばらく経って、シオンの港に独り佇むサガミの横に、静かにカイが現われた。


そのカイの表情は、どこか柔らかで、ここ最近の沈んだ様子のカイとは、どこか違っていた。


「カイ、諦めなくて良かったね。」


そのサガミの言葉に、カイが不思議そうな表情を浮かべる。


「ミキカさんを救うこと。」


するとカイは、一つため息を吐いた。


「結局、俺はミキカを救えたのかな・・・?」


「何言ってんの?ミキカさんは、イレイザーっていうしがらみから解放されて、唯一の肉親であるカーザさんと、何からも怯えることなく暮らしていくことが、できるようになったんだよ!それは、幸せなことでしょう?」


その、サガミの言葉に、カイは一瞬の間の後、笑い出した。


サガミも、何故かそれにつられて小さな笑いがこみ上げた。


「やっぱり、サガミには敵わないな。」


そのカイの呟く声は、サガミには聞こえなかった。


「私ね、明日、シオンを出ようと思うんだ。それで、カイオウ大陸に渡って、ライク国の森に向かうつもり。」


そう言って、サガミはポケットから紅い羽を取り出した。


「そっか。」


「うん。それで、今度は不死鳥の羽じゃなくて、本物の不死鳥をこの目で見るんだ!」


「そっか。」


カイの表情が優しい笑顔に変わった。


すると、次の瞬間、サガミの手から羽が突風に乗って空高く舞い上がった。


「あ!!」


二人の声が合わさり、二人が同時に上を見上げた瞬間、そこには紅の美しい羽を広げて飛ぶ、神秘の鳥がいた。


まるで、ここで解かれた一つの呪いを拾いにきたかのように。

こんにちは。作者のJOHNEYです。ついに完結しました!全24話、至らない点が多々あったかと思いますが、ここまで見捨てずにいてくださった方々に、感謝の一言です。これからも、どうぞよろしくお願い致します。

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