No.2 紅い青年
コルサットから少し離れた所にテグスターという小さな町があり、そこは町のほぼ全域が繁華街になっているためガラの悪い人間が多く、酔っ払い同士や裏社会の人間同士などのイザコザがよく巻き起こっていた。
町が最も賑やかになる夕方を迎え、テグスターは活気に溢れた夜の町へと変貌していた。
そんなテグスターの騒がしい道を、10代後半ぐらいの青年が酒を片手に歩いていた。
その顔立ちは整っていて、赤茶色の髪を持ち、瞳の色は光が当たると綺麗な紅色に輝いた。
女たちが次々に彼の方を振り返る。
しかし、青年はそんな目を気にも止めず、一直線に目的地を目指していた。
青年は、とあるレストランに足を踏み入れた。
レストランの戸を開けると、中から「いらっしゃいませ」という元気の良い声が聞こえてくる。
青年は、レストランのカウンターの横にある階段を下りて、地下へと消えて行った。
どうやら、そこの店の従業員は皆、彼を知っているようだ。
その証拠に、地下に消えた青年を気に掛ける者は、誰一人としていない。
青年は、薄暗い階段をゆっくりと物静かに下って行く。
それは、まるで気配を消しているようだ。
青年は地下に辿り着くと、手探りで電気のスイッチを探した。
そして、パチッという音と共に、辺りは明るくなった。
すると、青年の目の前には銃を構えた男がいることが分かった。
その男は、青年の方に銃口を向けて、やや震えた様子でいる。
「あんたが、ブルースカイのリーダー?」
と、青年は、落ち着いた面持ちで銃を構える男に訊ねた。
「あぁ、そうだよ!!お前は、例の殺し屋だろう!?
俺を殺しに来た、噂の死神だろう!?」
その男が、震える声で叫んだ。
すると、青年はニコッと笑った。
「死神?俺って、陰じゃあ、そんな風に呼ばれてるんだ。」
青年は丈の長いコートを羽織っていた。
そして、おもむろにそのコートを少しめくった。
そのまま、やや姿勢を落とし、両拳を胸の前で構える。
それを見て、銃を持っている男が怯え始める。
「や、やめろ!!俺は、死にたくない!!」
男は、そう叫んだ瞬間に勢いで銃の引き金を引いた。
バーンッ!!!という凄まじい銃声が地下内に響き渡った。
弾丸は、青年の胸を見事に貫通していった。
しかし、青年は倒れることなく、その場に立っている。
苦しんでいる様子もない。
「残念でした。」
そう言って、青年は近くにあった棒を手に取ると、男の首を後ろから強く殴打し、その首の骨を折って立ち去った。
去り際に、青年は手に持っていた酒をぐったりと倒れている男の傍らに置いて行った。
青年は階段を上って、再びレストランに現れた。
すると、カウンター越しに1人の美女が青年に話し掛ける。
「カイ。ご苦労様。」
「銃声、聞こえちゃった?」
美女にカイと呼ばれた青年が、頭をポリポリとかきながら言った。
「大丈夫よ。誰も気にしてないから。」
美女は、そう言ってカイにドリンクを手渡した。
それは酒ではなく、グレープフルーツジュースだった。
「サンキュー、ミキカ。」
そう言って、カイはグレープフルーツジュースを一気に飲み干した。
そして、カイはカウンターに腰掛けた。
その隣に、カイにミキカと呼ばれた美女が静かに腰掛けた。
「ねぇ、カイ。本当にこの仕事辞めるつもりなの?辞めて、一体どうするつもり?」
「もう、辞めるって決めたんだ。今さらだけど、やっぱり人の命を奪うのは、良くないよ。
俺も、ようやくそう思えるようになったわけ。
それに、これからは本格的に不死鳥の行方を捜すつもりだから、本気で旅にでるよ。」
カイは、やわらかな笑みを浮かべ、頬杖をつきながら言った。
「不死鳥を追って、どうするの?前からカイって不死鳥に興味持ってる感じしたけど、不老不死の伝説なんて信じてるわけじゃないわよね?」
ミキカが、馬鹿にしたような口調で言った。
すると、カイはミキカの瞳を見つめて、
「呪いを解く。」
と、一言残すと、カイはレストランを足早に立ち去った。
ミキカは、意味不明だと言わんばかりの表情で、カイを見送った。
こんにちは。作者のJOHNEYです。第二話を投稿させていただきました。何かお気づきの点など、ございましたら、是非ご意見等お聞かせ願いたいです。今後もよろしくお願い致します。では、失礼致します。