No.14 追憶のとき2
ダングが立ち去った後、ミキカは大きく息を吐いた。
「・・・、ありがとう。助かったわ・・・。」
ミキカが、微かに笑みを浮かべながらカイに言った。
「いや、いいんだよ。・・・・・・当然のことをしたまでだから。」
その言葉を聞いて、ミキカが優しく微笑んだ。
「何か、困ってることがありそうだな?」
そのカイの問いに、ミキカは一時の間の後、自分のことを話し出した。
ミキカの母親は、裏社会で名を馳せている、「イレイザー」という殺し屋一味の頭の、孫としてこの世に生を受けた。
当然、ミキカの母親はその家業とも言うべき仕事に就くことが強いられていたが、残酷な殺し屋などにはなりたくないという気持ちから、幼い時に早くも家を飛び出したのだという。
それからしばらくは、イレイザーの人間から逃れ、それなりに平穏無事に暮らし、やがて子どもを二人儲けた。
それが、ミキカと、その兄のカーザであった。
しかし、ミキカが12歳の時に、両親は亡くなり、兄妹二人で肩を寄せ合って細々と暮らしていた。
そして、ミキカが15歳の時に、イレイザーの人間に所在を掴まれ、ミキカだけが連れ戻されてしまった。
その時のカーザは、当時暮らしていた所の近くの診療所で医学を学び、医者としての才能を開花させようとしている時だった。
カーザに医学を教えたその診療所の医師が彼を護ったから、カーザはイレイザーに引き戻されなかった、というのもあるが、実際は、彼が何やら「切り札」を握っていたおかげで、連れ戻されなかったようだ。
しかし、イレイザーの連中の考えることは汚く、ミキカには、「カーザの命を奪われたくなければ、おとなしくイレイザーに従え。」と告げ、カーザにも、何か脅しをかけていたようで、やがてミキカにもその所在が掴めないようになった。
ミキカは、もし自分が従わなければ、いくら切り札を握るカーザであっても、イレイザーならいとも簡単にその命を奪い、けして脅しなどではないのだと、自分に見せしめるだろうことは、よく分かっていた。
だから、ミキカはイレイザーに従い、他人の命を奪う残酷な行為をやらざるを得ない状況に置かれていた。
しかし、「殺し屋」としての時間を重ねていくうちに、ミキカの善良な精神は麻痺していった。
他人を「殺す」という行為が、今のミキカには至極自然な行為になりつつあったのだ。
そんな自分が、ミキカは恐ろしかった。
いっそ、いなくなりたいと考えた。
しかし、それすら許されないのだろうかと、ミキカは絶望している。
カイは、ミキカが望むことを叶えてやりたい気持ちがあった。
しかし、「死」以外に、このミキカが望むものが何なのか、分からなかった。
そして、カイは、こう口にする。
「俺は、力になれることは、あるか・・・?」
そのカイの質問に、ミキカは、
「・・・・・・じゃあ、私の代わりに殺し屋になって・・・。私の力になるってことは、そういうことなのよ・・・。私に力を貸そうなんて、到底無理だってことが分かったでしょう・・・?」
と、うつむき、目を閉じ、しかし、微かに口元だけを笑わせて答えた。
その言葉にカイが応える前に、ミキカはその場を静かに離れようとした。
しかし、カイがミキカに応える。
「分かった。力を貸すよ。」
ミキカは、何も応えなかった。
何故、今になってエイミとの過去を夢に見たのか。
カイは、「エイミを救えなかった」。
そして結局、「ミキカも救えなかった」。
だから、カイの中で結論は、こうなった。
死してなお、「エイミは、自分を怨んでいる」。
エイミへの償いになればと、ミキカに加担したが、それは根本的に間違っていて、そもそも、ミキカが言ったように、自分の行いは単なる「偽善」に過ぎず、そんなことで自分が許されるはずもなかったのだと、カイは自分なりに悟った。
本当は、このまま苦しみ生きることが、エイミやルミへの償いになるのではないかと、カイは考える一方で、その恐怖さえ感じていた。
気が付けば、カイの目の前のシーフードグラタンは、すっかり冷め切り、先ほどまでの元気な湯気は見られなくなっていた。
こんにちは。作者のJOHNEYです。今回は少し短めです。今後もよろしくお願い致します。