第十五章─決着?
さて、近衛騎士への試練、悠君の分は、これでラストです
二話でしたけどね
見た感じ、ルーさんとやらは、剣を使って戦うみたいだ
刃渡り70センチメートルくらいの剣を持っている
「この剣はシュワユーズといいまして、代々我が家に伝わる、歴史のある剣なのですよ」
聞いてもいないことを語りだした
よっぽど自分の剣に自信があるんだろう
というかシュワユーズだって?これまた神話の聖剣じゃないか
あれ?実在したんだっけ?まあいいか
「ところであなたのその武器はなんと言うのですか?
見た事の無い形状ですが…」
見た事が無い?ああ、この世界には刀は無いのか
「この類の武器は、刀、といいまして、こいつの名前は未定概念といいます」
「刀、ですか…やはり聞いた事はありませんね」
「ええ、どうやら僕達の地方だけの文化の模様ですね」
「まあ、互いの武器解説はこれくらいにして、そろそろ始めましょうか」
そっちから振ってきたくせに…
「まあ、そうですね、いつまでも喋っていても仕方が無いですし」
「ところで…剣、いや、刀を抜かれないのですか?」
あ…抜くのを忘れていた…
包み隠さず言うのも恥ずかしいし…よし、誤魔化そう
「いえ、この刀と言うものは、鞘から抜かなくても戦える武器なんですよ」
「へえ?どのようにですか?」
「戦う前から手の内を明かすわけが無いでしょう?」
「それもそうですね」
2人して乾いた笑いを漏らす
そのとき響が欠伸をした、それもかなり盛大に…空気読め
「おっと、さすがにそろそろ始めなくてはいけませんね」
「ええ、観客が暇を持て余しています」
「それでは始めましょうか…行きます!」
意気揚々と僕
「それではこちらも…参ります!」
ルーさんも返してくれた…よかった…すべらなくて
っと、そんなふざけたモノローグをいれている場合じゃなかった
ルーさんは一気にこちらに向かって突進し、
そのまま勢いに乗じてとてつもない速さで横に一閃──!
なんとかバックステップでかわしたが…
(忘れられてる設定かもしれないけど、僕は異常な反射神経があるのだ)
「これは…迂闊にくらえば真っ二つでしたね…」
「今のを避けますか…さすがですね…」
「それでは…僕も行かせて貰います!」
先程と同じように僕も突進、ではなく、時々足運びにフェイントをいれながら
着実に間合を縮めて行く…こんな才能もくれたのかよ…
「くっ…」
ルーさんは惑わされている模様だ、これぞ好機と見て、
鞘の根元を掴んで、手首を返して思いっきり相手を殴る!
「ッ!」
これが果たしてきれいにヒットしたみたいで、悶絶の表情を表す
「やりますね…私の一撃をかわしたことと言い、今の一撃と言い…
それに、やはりこんな戦い方は見た事がありません…」
「今のは帯刀術と言いまして、刀を納刀しながらも戦えるものです
抜刀時より、遥かに攻撃の幅が増すんですよ」
某ゲームで一回みて、やって見たかったのだ
意外にできるものだ
「なるほど…帯刀術ですか…
これは私もうかうかしていられませんね…!」
と、鞘に手を掛けるルーさん…何をするつもりなのか、と思っていたら
その鞘をこちらに投げてきた、小次郎敗れた…いや、なんでもない
まあ、当然簡単に弾き飛ばしたが、一瞬そちらに気を取られてしまったのだろう
「これで、決めます!」
僕の意識は当然鞘の方に向いていた…その一瞬の隙を見計らって、
死角から切り上げるように剣を振るってきた
「っと!」
なんとか防いだが、そのときの勢いで鞘が飛んで行ってしまった…!
「ふふふ、これで帯刀術とやらは使えませんよ」
完全に勝ち誇っているルーさん
こちらには帯刀術しかないと思い込んでいるようだ
「甘いですよ、ルーさん。僕がいつ帯刀術しか使えないと言いましたか?」
「なんですって?」
「僕は帯刀術以外にも戦う術がある、ということですよ」
「…ああ、その抜き身の刀で戦う、と言う意味ですか…
ですが、あくまであなたの戦闘スタイルは帯刀術でしょう?
付け焼刃で私には勝てませんよ」
「…半分正解、半分間違いです」
「どういうことですか?」
「僕は帯刀術以外でも十分に戦える、ということですよ」
と、言うが早いか僕は切りかかって行った、彼も警戒しているみたいだ
が、しかし、僕の目的は切りつける事ではない、
遥か向こうにある鞘だ
確かに、僕は抜刀した状態で十分に戦えるだろう、だがしかし、
それでは彼を殺してしまう可能性があるのだ
ならば、帯刀術しかない、もしくは…
「ふっ、猪突猛進ですね」
「あなたほどではありませんよ!」
ちなみに演技である
と、彼が僕の刀の間合に入ったと同時に、彼も切りかかってきた
先程のように、いや今回は切り下ろし、先程よりも早く、強い──!
けどまあ、それもかわして、僕は、彼の遥か向こうの鞘へと走っていく!
「やはり帯刀術ですか!」
当然彼も見逃すはずもなく、僕を追いかけてくる
だが、そんなものは想定内だ!
「ラインフレイム!」
と、僕が叫んだとたん、辺りに炎が落ちた、辺りと言っても
人には当たらないようにちゃんと制御したが
「なっ!」
どれでも人を止めるには十分で、ルーさんは立ち止まった、
そして、僕は鞘にたどりつき、手に取り、納刀!
「ッ!予定外ですね…魔法、それも無詠唱ですか…」
「だから言ったでしょう?僕の攻撃する術は帯刀術だけではない、と
…ところで、降参しませんか?」
「は?」
「いえ、こうして僕が鞘を取り戻した以上、僕は負けません、
ここからは不毛なだけですよ?」
「…ふざけないで下さい、そんなことが出来るわけが無いでしょう」
口調は静かだが、怒っているようだ
まあ、当然だろう、それが狙いだ
「仕方ありませんね…では、行きます!」
先程のように、いや、今回はフェイントなど混ぜずに突進──!
間合に入る寸前に、僕は刀の柄に手を掛け、一気に抜刀!
すなわち、居合い抜きだ
刃は彼の服を切り裂き、皮一枚切っていた
「もう一度聞きます、降参、しませんか?」
「…はあ、降参します。ここまで圧倒的に倒されてしまえばね
あなたの勝ち、そして近衛騎士団への入団を許可します」
「ありがとうございます」
「負けた、と言うのもありますが、君に興味が沸きました、これからよろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします、あなたとは気が合いそうですしね」
「あ、君もですか。私もですよ」
そうして、僕の試練は和やかに終わった
さて、いかがでしたでしょうか、
ちなみに帯刀術、と言うのは、某ナ○コのゲームからの引用です
では、次回は響君編です