第0話 元社畜の神、下界へ降り立つ
連載したてで文章の表現が拙いこともありますが、よろしくお願います
神界中心部、神座の間。
「エイド様!第113世界で勇者が魔王を倒しました!後処理の許可を!」
慌ててやってきたミカエルは、頭上の玉座でくつろいでいる優しげで整った顔立ちをしている青年に対して跪きながらそう進言する。
「うるさいミカエル!!いま休憩中ってのがわかんねぇか!」
ミカエルが……。俺が休みなしで働いているのを知らないのか!
いや、知っているか……。こいつ俺のストーカーだし。
俺はイラつきながらそう答える。そんな俺の心情を読み取ったのだろう。ミカエルは焦った様に口を開ける。
「申し訳ございません。エイド様。しかしですがね……」
どうやら、これは少しばかり大事な書類らしい。
「……チッ。わかったぜ。書類を作成する。それでいいな?」
「感謝します。エイド様」
恭しく一礼をし、俺の部屋から完全に去っていったのを確認してから俺は、亜空間から紙を取り出して慣れた手つきで書類にハンコを押していく。
(こうなったのも全部あのくそゴッドのせいだ...)
ここから、俺は昔の最悪すぎる出会いを回想する。
*
*
「……あれ?ここどこだ?さっきまで残業してたはずじゃ…」
俺は先ず、周りを見渡した。見渡す限り、あたり一面真っ黒な空間だ。
「気が付いたか……」
前を見ると神々しい姿をしたロマンある存在……。ではなく、バカンスの水着を着たヒゲがボサボサのおじさんだった。手にはポップなイラストが描かられたジュースを持っている。
「俺なんでこんなところに、確か......上司と口論になって……それから……」
俺自身、今起きている状況の整理をしたかったのだが、目の前のおっさんの発言のせいで、俺の思考はさらに困惑することとなる。
「其方、死んだぞ。まあ、殺したのは我だが......」
は?それって、どういうことだよ。
俺の耳は、大事な所だけをシャットアウトしていた。
そして、そのフレーズが耳を通過した時、俺の心は大いに動く。
「俺。死んだの!?!?てか、あんたが殺したって……一体なんで!?」
俺はその男の肩を掴み、揺らしながら問いかける。
「ちょ、そんなに揺らすな!」
「うるせぇ!神ならさっさと生き返らせろ!!今すぐな!まだ上司に押し付けられた仕事が10件以上あるんだよ!」
その男は、神だからだろう。普通揺らされたら声も揺れるはずなのに一切の声の揺らぎがなかった。
「無理じゃ。だって、其方は『休暇をやるから他の人に仕事を任せてこい』と言われると、迷いなく押し付けるじゃろ?それと同じじゃ」
「何処がだよ!俺はそんな事するわけ……するわけ……確かにするな」
「じゃろ?後、あまり揺らさない方がいいぞい。神威が漏れ出してしまうかもしれないんじゃからな!其方の前で神威を解放したら其方どころかそれこそ、この世界が壊れるわい」
今度は攻守交代して、ビシバシ背中を叩かれながら俺はからかわれる。
「痛たたっ!てか、あんた誰だよ?」
「神じゃ」
「そうじゃなくて!名前だよ!」
男はは少し驚いていたが、すぐに気を取り直して衝撃の一言を発した。
「そういや言ってなかったんじゃったか。我の名前はセブノック。神界の七代目神にして、全世界の唯一神である」
…………………え?……え?このジジイそんなすごいの?まぁ、自分が死んだのは自覚できてたから何となくはそう思っていたが。それにしても、神か。分かってはいたけど、唯一神か……。唯一神!?
「わしを褒め称えるのは良いが、ジジイって言うな!まだ十五億歳じゃ!」
心読まれた!?てか十五億歳って、ジジイじゃねえか!
「ジジイじゃないって言うとるじゃろうが!……ゴホン、まあ良い。俊よ。其方にはこれから我の代わりに八代目の神になってほしい。あとこれは決定事項じゃ」
「…………ん?」
とりあえず、言った言葉は理解できる。腐っても社畜。上司の言う一言一句を流さない様に四六時中耳は覚醒状態なのだ。
だが、神になれ?神ってなれるもんなのか!?
「なんで俺なんだよ!それよりさっき俺を殺したってどう言うことだよ!?」
神ーーセブノックは少し眉間を寄せていった。
「其方、本当は十歳の誕生日に交通事故で死ぬ運命じゃったんじゃぞ。この世界の抑止力が其方を消そうとしていたからな」
待って。ますます理解が追いつかない。抑止力うんぬんは置いておいて。じゃあなんで俺生きてんだ?
「それはな、我が助けたからじゃ。強制的に其方が死ぬ運命を先延ばしにしたのじゃ。」
この爺さん心読むの好きだなぁ。おい!ってそうじゃなくて。成程な。だから今度は疲労死したのか。
「理解は出来た。だが、それを踏まえて質問いいか?」
「勿論じゃ。じゃが、急ぐんじゃ」
「お、おう。じゃあ聞くが、なんであんたは神をやめたんだ?」
セブノックは、自信満々の笑みで言い放った。
「神ってのは忙しくてな。休暇という休暇が殆どないのじゃ。休みが欲しかった我は神をやめたくてな。だから素質ある代わりの者を探していたのじゃが,そこで其方がいたのじゃ」
うん。マジで理不尽。聞く限り、労働環境は今の俺の職場とそう変わらないように聞こえる。
だが、社畜として生きてきた俺はこの無責任の発言に腹が立った。
「あんた。それを言ったらおれは459連勤だよ!!」
「我、542万連勤だったんだが」
今度こそ何も言えなくなった。
神は言い負かしてやったぜと言いたげな顔で、
「あ、さっき言えなかったんじゃが、現時点で神が不在じゃから、次元がなんかすごい不安定であと10分で全世界消滅するぞ」
と、俺がこの神とやらに直接会っていなかったら信じていない言葉を言いやがった。
「消滅って、どうすればいいんだよ!死ぬのは良いんだけど、死んだあと死ぬのは意味がわからねーよ!」
「うむ。其方の意見も頷ける。話は戻るが其方が神になれば良いのだ」
「神?俺が?冗談じゃない!できるわけ……」
神は申し訳なさそうな、いや、訂正しよう。完全な悪意がこもってる様な声で言う。
「もう其方で神の座に登録しておいたから!よろしく!」
突如俺の足元に穴が空いき、俺は真っ逆さまに落ちていく。
「うわぁぁぁぁぉ!!!」
セブノックが、俺を覗き込みながら声を張り上げる。
「其方の名前はこれから俊ではなく、エイドと名乗るように!あと神の権能はもう其方のうちで覚醒しておる。よって、力に関しては心配するなよ。わからないことがあればミカエルに聞くように!それでは達者でな!」
くそゴッドがぁぁぉ!その無責任な発言でキレそうになったが叫ぶ前に、俺の意識は闇に飲まれていった。
*
俊改めエイドが去ったあとセブノックは、少し困った様に自問自答する。
「初代神怒るじゃろうな……。どうしたものか……まぁいいか!怒られたら怒られた時に考えるのが1番じゃわい」
そうして空間をいつの間にか手にしていた杖で切り裂き、その中に消えて行った。
*
俺が神となった日を思い出しながら作業をしていると、ミカエルが、
「そう言えばエイド様、近頃ナンバース世界で、魔王討伐記念祭が行われています。仕事の気休めとして、観光してきてはどうでしょうか?七天使長には私から伝えておきます。エイド様の仕事は我々で分担しておきますので...」
おぉ、ミカエル。お前やっぱいいやつだわ!
俺は勢いをつけて玉座から立ちあがり、階段下に居るミカエルの元まで行く。
「ミカエル!七天使長を集めろ!神転輪を開く!」
「承知しました。エイド様」
ミカエルは一礼し、魔法通話で七天使長に連絡をかけ始めた。
「エイド様、神転輪を開けれるまでの時間はおおよそ2時間です。その間に支度を済ませてみてはどうですか?」
「わかった。そうさせてもらう。ありがとな!ミカエル」
ミカエルはなぜか涙ぐんでいたが、今の俺はさほど気に留めていなかった。
「もう神とか疲れたんだよねー!ゆっくり休暇を楽しむとするか!」
*
神の座にミカエルならびに七天使長が集まった。このメンツで集まったのは、ちょうど250年ぶりだった。
「エイド様、準備が整いました。支度は済みましたか?」
第二天使長のウリエルは、恭しい態度で俺にそう進言する。
ここは、厳格に、「うむ。ご苦労である」とか言わないといけないんだろうけど、俺の性に合わない。
「あぁ、支度は済ませた!いやー、150年ぶりの休暇だ!少し羽を伸ばさせてもらうよ!みんなには悪いがな.......」
七天使長は、口を揃えて跪きながら言う。
「「「問題ありません!どうかごゆっくり休暇を満喫してください!」」」
よし!言質は取った!
「んじゃ、行ってくる!神転輪オープン!」
鈍い音を立ててゲートが出現する!ミカエルが
「ゆっくりして楽しんできてください!変な人についていってはダメですよ!」
お前はお母さんか!と喉まででかかったが押さえておく。あいつもあいつで心配なのだ。だから俺は笑いながら言う。
「心配すんな。おれは神だぞ!?」
後ろから心配そうな気配がしたが俺は後ろを振り返らずゲートを潜る。
「当分ここには戻るつもりないから!俺の仕事、分担してやっておいてねー!」
瞬く間に、俺の視界が歪み始めた。
少しして、目の前に大量の番号が表示される。迷わずエイドは五番を選択し、ナンバース世界にテレポートする。
誰も居ない空間......。直後、空間一面に、エラーマークが発生したのだった。
楽しんでいただけたのなら幸いです。今後ともクエーサー島津をよろしくお願いします。不定期で更新していきます!




