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第6話

 部室の戸を開ける。しかし、そこにはいつもいる先輩の姿はない。いつも先輩は先にいて、キーボードを叩いているのに。何かあったのだろうか。まああの先輩のことだ、大したことないだろう。

 だけど一人の部室というのも、新鮮だけどつまらない。なんか面白いものでも置いてないかな。先輩がいつも座っている机を漁り始める。無断だけど先輩だからいっか。シャーペンや消しゴムなどの筆記用具と、何冊かのノートが入っている。意外にも整理されていて驚き。一番上のノートを取り上げる。文芸部に関係あるものだろうから、小説のプロットとかが書いてあったりしないかな。少しワクワクしながらペラペラと捲る。たまたま開いたページが目に留まった。


“恋愛

案1. 正面突破

案2. 何となく話していく中で

案3.


 なんだろう、小説のプロットづくりだろうか。あの先輩が恋愛小説、ねえ。前、友達と恋人に抱く気持ちの違いなんて聞いてきたのもこれに関係してるのかな。他に何も書いてないし、作り始めたところだろう。他のページには何が書いてあるのかな、とパラパラとノートを捲る。すると、何やら聞きなじんだ声が聞こえてきた。


「よお、百瀬。今日は来るのが遅れて、って何見てんだよっ」


 先輩だった。扉にいたはずの先輩が、いつの間にか手に持つノートを奪う。


「こんにちは先輩。そんなに慌てなくたって」


「人のノートを見るんじゃない。どのページ見たんだよ」


「あー、恋愛って書かれたページ読みましたね。あれは小説のプロットですか? 先輩はプロットって言ってもほとんど作んないタイプなんですね」


「あー、そうなんだよ」


 気づかれなくて良かったような良くなかったような、なんて先輩が言っているがよくわからない。小説のプロットってそんな大切なんだろうか。私は小説を書かないからよくわからない。オレンジの陽が部室を照らす。


「そういえば、先輩来るの遅かったですね。なんかあったんですか」


「ちょっと先生の手伝いしてたら遅くなっちまってな。早くこの部室に来たかったんだが引き止められて」


「そういうことだったんですね。優しい先輩なら確かに先生も使いやすいですもんね」


「おい、使いやすいって何だ。生意気な後輩にはこうだー」


 先輩はそう言って持っていたノートで私の頭をぽすっと叩いた。全く痛くない。


「そういうところが優しいって言っているんですよ」


「いいんだか悪いんだかよくわかんねえな」


「先輩はそのままでいてくださいよ」


「当たり前よ。いつだっていてやるよ」


 それならいいんですけど。私はぽつりと呟いて時計を見る。


「すいません先輩。今日は早く帰んなきゃいけないんでそろそろ帰りますね」


「まじかよー。わかってたら早く来たのに。まあいいや、じゃあな百瀬」


「先輩、また明日」

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