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決戦前

穏やかな陽射しが降り注ぐ今日、私達はこの学園を卒業する。


今から何代か前の国王が平民、貴族問わず様々な身分の者に門戸を開いた事で、従来では埋もれてしまう筈だった才能が開花して、この国を豊かにしている。

しばらくは貴族による反発やあまりにも常識のない者の入学で混乱していたらしいが、こうして今平和に暮らしていけるあたり、この試みは成功したのだろう。


(いいえ……成功していた、かしら)


自身と同じ時期に入学した一人の平民の少女によって、学園の秩序は荒れ果てている。

やがてこの国を背負って立つ筈の殿下や、その補佐をする側近達は己の婚約者を蔑ろにしてまで入れ込んでいるらしい。

……殿下と筆頭公爵家のご令嬢が婚約破棄をする、という笑えない噂も流れている。


最早、問題は学園だけでは収まらず王国の一大事となっている。


自分達のことだけしか見えていないのか、殿下達と少女は所構わず愛を口にして、在るべき姿だと皆に見せつける。

その光景を見ても、目を瞑るだけで他の生徒は口を出さない。勇敢にも忠言をした令息が家門ごと潰されたのを知っているからだ。


身分問わず門戸が開かれていても、身分差というものは存在する。たとえ正しくとも殿下が気に入らない、と告げるだけで話は終わる。

唯一注意出来る筈の公爵令嬢が沈黙を選んだことで皆、我関せずと見ないふりをしているのだ。


(……どうしようもなく愚かで救えない、なんて私も言えないわね)


私も、他の方と同様にその場では見ないふりをして現状を家に伝えるのが精一杯……いいえ、むしろ殿下達のように"恋"というものに浮かれてしまっている分、罪深いわ。


卒業式を行っているホールではなく、中庭のベンチで人を待っている私は、令嬢としても、娘としても不出来なのだろう。


けれど、


(それでも私は、あなたに伝えたい)



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