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ヲタッキーズ181 元カレはストリッパー

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第181話「元カレはストリッパー」。さて今回はバチェロレッテパーティに呼ばれた男性ストリッパーが警官コスプレのママ殺されます。


捜査線上に浮かぶ、イケメン役者に群がる金と欲に塗れた女達。さらに、非ヲタクなモーターサイクルギャングの純愛がカオスに輪をかけて…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 元カレとの再会(デスティニー)


夜のアキバに屹立する"秋葉原マンハッタン"の摩天楼群。その1角では乱痴気騒ぎが行われている。


「37F。アパート区画4Bか…」


廊下に置かれた自転車を避けヤタラ騒々しい部屋の前に立つ巡査。拳銃に手をかけドアをノックする。


万世橋警察署(アキバP.D.)だ!開けろ。ジェミ・ルイスに逮捕状が出ている!」


中の喧騒がピタリと止む。


万世橋警察署(アキバP.D.)だ!」


巡査が拳で連打スルとドアが薄く開く。黒い瞳?次の瞬間、巡査は中へ引き摺り込まれるw女の悲鳴!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


朝焼けに"秋葉原マンハッタン"が青く染まって逝く。コチラの高層タワー最上階では…発声練習中w


「あぁまままままままままま!」


元気な声のメイド服はミユリさん。お付き合いは…ハッカーのスピア。そして、寝ぼけマナコの僕だw


「ハハハ・ハ・ハ!そして脱力」


ダランとする僕の大好き女子達。


「ミユリさん。夢を見ていた。蓮の葉の上で寝転んでいたら、周りでビキニのスーパーヒロイン達が僕のSFを口々に絶賛してくれる夢だった」

「まぁテリィ様。素敵に良い夢で良かったですね…で、なぜソンな話をスルの?」

「(その後で泣き喚く猫の夢に変わったしまったからだw)みんなで分け合いたくて。ミユリさん、良い朝だ」


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くて常連が沈殿。客回転率は急降下w


今日は朝からメイド長が発声練習してるし←


「今、スピアと腹式呼吸のためのエクササイズをしていたのです」

「(朝の5時からか?)そりゃ素敵だな」

「オーデ(ィション)に受かるには、ミュージカル女優は準備が必要なのです」


僕は、ソファ席でほとんど放心状態のスピアの隣に腰を下ろす。すると、小声で僕にささやくスピア。


「カルチャーセンターのオーディションがあるって一言ミユリ姉様に言っちゃったの」

「そしたら、貴女にはミュージカル女優の血が流れてると言われた?」

「え。言われたけど」


僕は、長い、長い、ながーい溜め息をつく。


「ソレは"死刑宣告"だ。聞くべきじゃなかったな。ミユリさんにミュージカルの話をするな」


天を仰ぐスピア。


「町内会の掲示板で見て、少し話しただけなのに…まさか、こんな暗い内から起こされるなんて」

「スピア!ミュージカル女優になるためには、犠牲を恐れてはダメょ。どーせ死んだら、いくらでも寝られルンだから」

「あーそーだわ(な)」


僕とスピアは異口同音。ついでに2人で大アクビ。ココでスマホが鳴り、ミユリさんがとってくれる。


「"死"と逝えば、スーパーヒロイン殺しみたいですょテリィ様」

「…ラギィか?え。もちろん、もう起きてたさ」

「あーあ」


スピアは、僕の肩に頭を載せて、目を瞑る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


朝焼けの電気街。中央通りから東半分は雲の下なのか暗いママ。神田リバーをフェリーの1便が逝く。


「なぜ急ぐ?死体は逃げないぜ」


現場は万世橋の北詰め。神田リバー川面近くの船着場だ。赤コートのラギィと黄色いテープをくぐる。


「被害者は警官だって?」

「そうみたい」

「ウチが呼ばれたとなると被害者はスーパーヒロインだな?となると…婦警?」←


突然アキバに開いた"リアルの裂け目"の影響で、腐女子がスーパーヒロイン化する例が多発してる。

彼女達が絡む犯罪は、南秋葉原条約機構(SATO)を通じ警察と"ヲタッキーズ"の合同捜査となるのが通例だ。


万世橋(アキバポリス)の人?誰かな?」

「知らない。タクシーの運転手から通報があった」

「こんな朝早く?」


なるほど、路面に制服警官が倒れてる。婦警ではナイ。僕のスマホがハッキングされ能弁に語り出す。


超天才ルイナがラボから"リモート鑑識"中だ。


「胸を1発撃たれてる。防弾チョッキ未着用。凶器は対スーパーヒロイン用の音波銃だけど"彼"自身は"blood type RED"。超能力には覚醒してナイわ」

「そもそも男子だしな」

「ソレにこのバッチ、かなり古いタイプだわ」


革手袋で遺体の胸のバッジを差すラギィ。


「捨てられナイのさ。思い出が詰まってて」

「何言ってんの?彼はまだ20代よ?」

「きっと子供の頃から警官に憧れてたんだ」


答えになってナイ。ラギィは、ホルスターから音波銃を抜く。ラッパ型に開いた銃口に鼻を近づける。


臭いを嗅ぎ…指で拭って舐めるw


「うわ。何やってンだ!気は確かか?」

「…テキーラだわ。ソレも超安物」

「え。音波銃はニセモノ?しかも水鉄砲?」


ラギィは、フザけてテキーラを"連射"し僕達を追い回す。キャッキャッと逃げ回る僕達。のどかだ。


「安い酒の入った水鉄砲。古いバッチ。彼は、ニセモノ警官ね」

「警官のコスプレで女性を餌食にスル輩だ」

「水鉄砲で?」


"リモート鑑識"のルイナが遮る。


「逆に、女どもの餌食にされたみたいょ。ズボンを裂いてみて」


簡単にビリビリに破ける。

 

「脱ぎ専用の使い捨てコスプレだわ」

「破きやすい、の不当表示かな」

「やっぱりストリッパーだわ」


心なしか鼻息の荒いラギィw


「遺留品だけど、IDがなかった代わりに、車のキーを見つけた。何処かに停めてアルと思うンだけど」


鑑識からキーを渡されたラギィは、高くかざしてスイッチを推す。近くの車列からピコピコ音がスル。


赤いコンバーチブル。僕はダッシュ。


「おっと!助手席は譲らないぞ!」

「別に助手席狙ってないから」

「ヒョー!」


車内にはコスプレ関連の服、靴、メイク道具が散乱している。ダッシュボードに飲みかけのコーヒー。


「学生寮とか思い出すな」

「…お財布があった。被害者の名前はデレク・ブルナ。27才…入金伝票の裏にアドレスの殴り描きがアルわ」

「西59丁目423の4B?お隣の摩天楼だな。きっと彼はその部屋に呼ばれたんだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


4Bは4Fと思ったら37Fだ。廊下に置かれた自転車を避け、シンと静まり返った部屋の前に立つ僕達。


「男のストリッパー自体がレアなのに、その殺人事件なんて、そう滅多に出くわさないょな」

「ホント運が良かったわ」

「悪かった、の間違いでは?」


答えズ"元気良く"ノックするラギィ。


万世橋警察署(アキバP.D.)よ。開けて」


ドアが薄く開く。黒い瞳…の上にピンクのオシボリを当てた全力で二日酔いのヨレヨレ女が登場スルw


「寝てるの。帰って」


閉まりかけたドアに、靴を挟むラギィ。


「ちょっと入るわょ」


ソコは強者達の夢の跡だw


ピンクのふさふさマラボーが天井から垂れ下がり、テーブルはひっくり返ってイスは散らかっているw

良く見るとマラボーにニセの黄色い規制テープが絡みアチコチに打ち上げられたマグロのような女達…


「見ろ!あのケーキの形は…」

「あ、ストリッパーだわ」

「脱いじゃいな!」


てっきり、壮烈な戦死を遂げたと思いきや、しっかり全員がゾンビみたいに蘇りムックリ起き上がるw


「脱いじゃいな!」

「間違えるのも無理はないが、僕はストリッパーじゃないぞ!」

万世橋警察署(アキバP.D.)ょ!私は、モノホンの警部。音波銃もある。殺されたデルク・ブルクについて聞きたいの!」


誰も聞いてない。ゾンビだからなw


「昨夜、ココでストリップしてたょね?」

「ウッソォー!あの"イケナイ巡査"のコト?」

「昇天しちゃった?私、そんなに良かった?」


ラギィはイライラと詰問。


「彼は何時から何時までいたの?」

「えっと遅い時間よ。ダンスがやたら長かった」

「アレも長かったけど」


イヒヒと笑う女達。


「…署まで来て。色々思い出してちょうだい」

「え。コレからショーがアルの?」

「その前にブランチ食べたいンだけど」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる…が、そのゴミ箱を抱え込んで、口々にゲロを吐く女達。胃液の臭いw


「リバマさん。何も覚えてないの?」

「ねぇ昨夜のコト、話して」

「▼◉◆〓♬➗■」


女達はゴミ箱に顔を突っ込んだママだ。その指輪のLEDが虚しく明滅。顔を見合わせるヲタッキーズ。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラギィと僕はラウンジで少しマシな女子を担当。


「デレクは警官コスプレのママ、車に戻る途中で殺された。つまり、最後に彼を見たのは貴女達なの」

「え。でも、パーティではごく普通だった」

「あ、ありがとう」


スターボックス(スタボ)コーヒーのベンティカップを渡す。


「誰かの旦那や、恋人が押し掛けて来たり、問題はなかった?」

「ないわ。だって、女子会だから女子だけょ」

「誰が手配したの?」


手を挙げる翠髪の女子。ジュピと名乗る。


「私よ。ジェミは警官コスプレがツボなの」

「実は、僕も警察のボランティアなんだ」

「え。そーなの?エヘヘ」


酔っ払い女達は無意味に爆笑。むっとするラギィ。


「男性ストリップ、どうやって呼ぶの?」

「ピザの注文と同じよ。ネットで探して、支払いはカード。ムーチョ何とかっていう店だった。結婚する親友のために1時間3万円ね」

「ヒヒヒヒヒ」


肩を震わせ笑う女達。不気味だろw


「"イケナイ巡査"が来た頃には、みんな酔っ払ってて、どんな話をしたかも覚えてナイわ」

「バチェロレッテパーティか。アキバでも盛んになってきたのね」

「男性ストリッパーに安いテキーラ。当然画像も山ほど撮ったょな?」


気まずく顔を見合わせる女達w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"押収"したスマホから次々と画像データを抜く。


「ホントにコレで最後ね?」

「おまわりさん、しつこいなー」

「ジェミがババアになって、結婚に飽きたら、みんなで楽しもうと思って撮っただけ!」


だから何?ラギィはオカンムリだ。


モニターを9分割して全画像をモニターして逝く。"イケナイ巡査"の胸倉を掴み部屋に引っ張り込む女達、乱痴気騒ぎ、口の中に水鉄砲を押し込んで…

 

「最高級のテキーラだった!美味しかったわ」


警官姿のストリッパーに首輪をかけ制帽を被せ大はしゃぎ。またがって警官を脱がせる。コスを破くw


「警察を何だと思ってるの?」

「だって、彼も仕事なのょ仕方ナシだわ」

「彼もソレなりに楽しんでたし」


女子達の腰に手を当てて踊る。飲む。歌う。変顔のセクシーポーズ。最後は集合写真でみんなキス顔。


「待って待って待って。止めて」

「君達。もっとポージングのバリエーションを考えるべきだな」

「後ろにいる2人を拡大して!」


アホ顔の女達の後ろで喧嘩腰の2人。1人はデレク。


「あの女性は誰?」

「ジェミの高校の同級生でカミュ」

「デレクの知り合い?」


翠髪のジュピは頭をヒネる。


「聞いてナイし」

「2人を拡大して…今朝、部屋にいなかったけど」

「帰ったの。"イケナイ巡査"が帰った直後に」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。ヲタッキーズのエアリが駆け込む。因みに彼女はメイド服。だってココはアキバだからね。


「5年前、カミュは恋人の荷物を窓から投げて接近禁止命令を出されてるわ」

「その手の危ない女は一通り経験済みさ」

「デレクは、その時の恋人だったのかしら」


顔を見合わせる僕とラギィ。ソコへヲタッキーズのマリレが飛び込んで来る。因みに彼女もメイド服w


「カミュ・ロバツを勤務先のカフェで見つけた。とりあえず、取調室に入れてあるけど」

「デレクの自宅はどうだった?」

「日銀総裁、上田和夫の経済書が大量にあったわ」


何で?


「実業家を目指してるとか?ソレとも何かのジョークかな?」

「他には?」

「ジェシ・マダレって名刺があった」


ラギィの仕切り。


「ヲタッキーズはジェシを調べて。私達はカミュ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の取調室。青いブラウスのカミュ。


「まるで悪夢だった。彼が死ぬなんて」

「デレクが帰った直後、貴女も帰ったの?」

「とてもいられなかった。パーティを楽しむ気分になれなくて」


ラギィは室内を歩きながら質問スル。


「その後は?」

「1人になりたくて家に帰りました」

「デレクには会わずに?」


突っ込むラギィ。


「彼の姿はもうなかったし…待って!私が殺したと思ってるの?」

「接近禁止命令をもらってたわね」

「昔のコトょ。アレは誤解だった。確かにフラれてショックだったけど…でも、もう乗り越えたわ」


必死に弁明するカミュ。画像を示すラギィ。例のアホ面が並ぶ背後で、2人がマジ喧嘩の最中の奴だw


「見て。コレは、乗り越えた人の顔にはとても見えないわ」

「元カレが現れて、突然ストリップを始めたの!確かに動揺はしたけど、殺してない!」

「ねぇもう1度確認スルわ。あの夜、デレクと貴女は喧嘩別れした。ほぼ同時に帰った直後、彼は殺される。そろそろ正直に事実を話して」


ラギィの先入観に恐怖するカミュ。


「ウソじゃナイ。元カレのストリップがショックだっただけ!」

「どうしてショックだったの?」

「どうして?だって…」


絶句するカミュ。ラギィは机に両手をつき火を噴くような審問。どんどん追い詰められて逝くカミュ。


「私達が出会ったのは、カルチャーセンターのミュージカルクラスだった…彼は、期待されていた。だから、夢を貫いて欲しかったの。ストリップは、お金が必要で仕方なくやってたと思いたかった」

「理由は聞いたの?」

「別の仕事もやってたみたいだけど…ソッチは命に関わるからヤメると言ってたわ」


頭を抱え、泣き崩れる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室から出て来たラギィを捕まえる。


「テリィたん。犯人は彼女じゃない気がスル」

「ヲレもー。でも、念のため服の硝煙反応は調べてみないとね」

「カミュが言っていた別の仕事って何だろう?」


ヲタッキーズが合流。2人はメイド服…以下は省略w


「デレクは、役者の仕事は1年以上やってないわ。エージェントが弱小なのょ」

「デレクの出演作が送られてきた。笑える」

「どれどれ」

 

画像が流れる。


"通りでインタビュアーがイケメン若夫婦を呼び止めインタビューする。

「ちょっとすみません。"プロロング"と言う商品をご存知ですか?」

「驚いたな。実は僕も使ってる」

テロップ"効果が4時間以上続く場合は医者にご相談を。個人差があります"。

「おかげで彼女との夜も上向きさ」

ウットリとデレクを見上げるAV女優。デレクはウィンク。AV女優は意味アリなカメラ目線。図太い男の声でキメのフレーズ。

「処方箋は不要です」"


呆れてモノも逝えない。殺されて当然だw


「シリアスな役もこなしています」

「え。今のはシリアスじゃナイのか?」

「しっ。静かに」


"番組テロップ「アメリカの危険な犯罪者達」

イメチェンしたのか、ハデなバンダナにツケ髭。二の腕むき出しのデレク。ホールドアップする気の弱そうなアジアンに音波銃を突きつけてスゴむ。

「金とガレージにある部品を全部よこせ。従わないなら頭をブチ抜く」

背後に犯罪者本人の手配写真がポップアップ。良く似ている。本人がみすぼらしく見えるほどだ。

アナウンス「ブリィ・グリムは、モーターサイクルギャングのリーダーです。この危険な犯罪者の情報をお持ちの方は、ぜひ近くの警察までご連絡を!」"


瞬間、静まり返る捜査本部。


「この感じじゃ、ストリッパーに堕ちるのも無理はナイな」

「彼がカミュに話した"謎の仕事"は俳優業とは無関係のようだわ…じゃヲタッキーズは、デレクを派遣した"ムーチョメン"へ行ってくれる?定期的にやってた仕事やトラブルがなかったかを聞いて来て欲しいな」


スマホが鳴る。


「はい。ラギィ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の検視局は地下にアル。モニターには超天才ルイナの画像。僕達は、遺体の顔を覗き込む。


「ソレほど良い男でもナイ。ルイナ、こいつが1時間3万円は高過ぎると思わないか?」

「テリィたん。私は、彼の全てを見たからね。(ココは小声でw)安いと思うわ」

「ルイナ。他に何か発見は?」


咳払いするルイナ。車椅子の彼女は、自分のラボにいる。検視局のモニターにウロコ?の拡大写真。


「見て」

「髪の毛?」

「YES。被害者は一時的に毛染めを使ってたわ。最近白髪に染めてた形跡がアル」


頭をヒネるラギィ。


「敢えて白髪に染めてたの?白髪隠しじゃなく?」

「おいおい。白髪男子は、ファザコン女性に需要がアルんだ」

「役者でしょ?何かのオーディションのタメじゃないかしら?」


別スクリーンに映る青いスクラブのルイナは語る。


「別の髪の毛も見て欲しいの。コッチの髪の毛はもっと重要ょ。被害者の服についていたわ。犯人のカモしれない」


証拠品袋入りの髪の毛が示される。


「金髪のロン毛?パーティにいた女性をお持ち帰りしたのかな。バンケットコンパニオンとか」

「ソレが、私もそう思って検査をしたら、なーんとテストステロンとステロイドが出たの」

「え。だから何だ?」


僕だけがわかってナイ。ラギィのドヤ顔。


「コレは男の髪の毛ってコトょ」


第2章 大根役者の青春


「…おいおいおい。昼間からピチピチパンツでそのお値段ナンて無理だょ…OK、他に聞いてもどーせ結果は同じさ」


東秋葉原にある雑居ビルの3F。狭い階段を登って逝くと開け放しのドアから派手に大声が漏れて来る。

芸能プロダクション"ムーチョメン"は、つまるところストリッパー斡旋事務所で所長の名はロイド。


「客が来た。悪いけど切るぞ…あぁ待たせたね。面倒なオファを断ってたトコロさ。ウチはいつでも注文殺到ナンだ」

「"ムーチョメン"のロイドさん?」

「ごめん。君みたいなメイドはもう足りてる」


デスク1つのワンマンオフィスだ。ロイドはイヤホンのマイクをオフにし入って来たメイド達を見る。


「おや?でも、お友達の方はイケるかも。"ムーンライトセレナーダー"人気で、色白ぽちゃぽちゃ系のツルペタが熱いンだ。カップがちょっと大きいカモな。パッドを入れとけ。着替えは向こうのトイレ」


真っ赤なブラジャーを投げられるマリレ。


「ねぇ南秋葉原条約機構(SATO)だけど。デレク・ブルクについて話を聞かせて…ソレから"ムーンライトセレナーダー"にツルペタは禁句だから。感電死させられるょ?」

「し、失礼!てっきりオーデ(ィション)に来たメイドかと思って」

「言っとくけど、パッドは要らないから」


赤ブラを投げ返すマリレ。


南秋葉原条約機構(SATO)は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗するための防衛組織。

僕の推しミユリさんが率いる"ヲタッキーズ"は、SATO傘下にある民間軍事会社(PMC)で僕がCEOだ。


「みんなそう言う。まぁ強がるなょ。デレクがなんだって?」

「殺されたわ」

「ええっ!人気(商品)だったのに」


率直に驚いてる。いや、惜しがってる?


「先月はどんな仕事をしてたの?」

「ゲストのフリをしてパーティに潜り込み突然脱ぎ出すゲリラストリッパー、あとは誕生パーティで脱ぐ正常位ストリップだ」

「男の誕生会は?」


念のため確認w


「いや。奴は女しか相手にしなかった」

「ステロイドをやっているロン毛の金髪の男がファンの中にいるハズなの。誰だかわかる?」

「別の店じゃないか?」


業界通だ。澱みなく応える。


「別の店?どこかしら?」

「"パッケージストア"って言うストリップクラブでも週何回か踊ってる。あそこの連中はみんなステロイド漬けだ」

「そこで何か揉めてたの?」


突っ込むマリレ。


「女みたいな意地悪をする奴がいるとか聞いたな。"ショーガール"も真っ青さ」

「そ。以上ょ。どうも」

「なぁ気が変わったら吸血鬼のコスプレなんだ。頼むよ」


マンザラでもないマリレ。


「え。吸血鬼?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"the package store open 24h"


"僕の腹筋どう?"とか"会いに来て!"そんな文字が明滅するサイト。そうだ。パッケージとは…


「確かに全員ステロイドをキメてそうだけど、ロン毛で、しかも金髪はいなさそうょ」

「そもそも画像が古いわね」

「流行に合わせてルックスを変えなきゃ」


ヲタッキーズの2人は楽しそうだ。


「最近のファッションリーダーは"ムーンライトセレナーダー"だって言ってたわ。ポチャポチャのツルペタでロン毛好きがキテるのょ!」


コーヒーを1口飲むマリレ。ムッとするエアリ。溜め息をつき立ち上がるラギィ。僕を指鉄砲で撃つ。


「確実に知る方法は、1つしかないわね。ねぇテリィたん?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


コロナ前は"執事カフェ"だった御屋敷だ。今も執事はいる。ただ、執事達は歌って踊って服を脱ぐw


「わ。可愛くしてきたな!で、何でヲタッキーズは来ないのか?」


行列に並んで腕を差し出し、ブラックライトスタンプを押してもらう。ラギィは髪を下ろし革ジャン。


そして、革のミニスカ←


「テリィたんに潜入捜査(アンダーカバー)を体験させるためょ…あとソレから2人には断られたw」

「実は、スーパーヒロイン絡みの事件が起きて合同捜査になる度に思ってた。いつか、今日はストリップクラブの潜入捜査ょと逝われる日が来るってさ。でも、まさか男バージョンとはな」

「チップなら任せて」


会場の中は女達の嬌声に満ちてる。赤いパンツのストリッパーが踊る。一緒になって踊る女達。

シックスパッドの筋肉。汗で光る裸体。赤パンを脱いで投げる。嬌声が沸き…僕の顔に当たるw


すると、女達が札を握りしめ僕に殺到←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。捜査本部のギャレー。


「考えてみればデレクも可哀想ょね。夢を追って秋葉原に出て来たのに、結果はどう?都合よく使われおしまい」


100均製のミルクフォーマーでホットミルクを泡立てるマリレ。その後ろで腕立て伏せしてるエアリ。


「そうょ間違ってるわ。きっと、彼は認められたかったのね」

「そうね。誰かに認められたかった」

「秋葉原で必死に生活して最後はTバックのママ死体になるなんて」


のんびりミルクを泡立てるマリレ。大胸筋エクササイズを終えて、壁に向かって小胸筋に入るエアリ。


「美味しく出来たわ」


カプチーノ2杯を両手に持って振り返ると壁に向かって格闘中?のエアリがいて呆然、棒立ちになる。


「何してるの?」

「私みたいなツルペタは足りてるdeathって?あんな人にソンなコトを言われる筋合いナイ。妖精大学で3年、魔法部隊で2年トレーニングを積んだのょ?1975年の"妖精カレンダー"にも載ったわ」

「集合写真でしょ?首から上だった」


エクササイズを続けるエアリ。息が荒い。


「ファンレターも来た」

「テリィたんからでしょ?しかも、ミユリ姉様と連名だった」

「"マチガイダ・サンドウィッチズ"からも来た」


そりゃ顧客宛のDMだw


「そうね」

「ぽちゃぽちゃ系のツルペタなんてクソょ」

「ソレ、ミユリ姉様のコトだけど」


カプチーノを1口飲むエアリ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び同時刻。ストリップクラブの喧騒の中、髪を下ろしたラギィ(ミニスカw)がグラスを手に戻ると…


「テリィたん?」


僕はチップの札を手にした女達の中に埋もれてるw


「やぁハニィ!どこにいたんだ?ちょうどみんなにハニィの話をしてたトコロだ。僕をココに誘ってくれた恋人さ。すごく、冒険好きナンだ」


すると、女達はシラケた顔で一斉に立ち上がる。中には、僕のベルトに挟んだ万札を抜く輩までいる。


「ラギィ、助かったょ!全くピラニアみたいに群がって来て、生きた心地もしなかった。ありがとう!ホントに困ってたンだ」

「…さっきバーマンに聞いたトコロ、デレクの敵がわかったわ。ムーチョメンのロイドが言ってた通りハンズってストリッパーょ。2人は相当揉めてたらしいわ。デレクがいつもスター扱いされてたから、彼に嫉妬してたみたい。殺人の十分な動機になるわ」

「よし!じゃハンズを捕まえよう」


ハヤる僕の肩を抑えるラギィ。


「座っててハニィ。ショータイムを見てから」


歓声が湧く。全員が執事姿でオンステージ。女達は大興奮。僕はウンザリ。ラギィは…口を開けてるw


ミュージック!


女達はグラスを手に大騒ぎ。一斉に踊り出し、全員が目をランランとさせ、万札手にチャンスを伺う。


何のチャンスだ?


「今さら黒執事なんてアリかょ」


ダンス!一斉に燕尾服を脱ぐ。絶叫レベルの嬌声。


「ウソだろ。執事が何で日焼けしてンの?日焼けとガンの関係性とか知らないのかな」

「どれがハンズか探さなくちゃ」

「金髪のロン毛だっけ?」


げ。センターだ。アレ?と指差すと最前ゼロゼロに向けてヲタクかき分け、ツカツカ歩み寄るラギィ。


万世橋警察署(アキバP.D.)ょ!貴方、ステージを降りなさい!」


堂々とバッチを示すラギィ。すると、半裸の執事ダンサー達が次々とステージを飛び降りて取り囲む。


チップ目当てだw


「違う!用がアルのはハンズだけょ。貴方達は、要らないの。ちょっと!ヤメなさい。私はモノホンの警部ょ!」


とうとう半裸執事に囲まれラギィの姿が見えなくなる。周りの女達から羨ましいのか怨嗟の声が飛ぶw


「ふざけないで!逮捕スル…」


突然!消火器の白い噴霧。周囲も関係者も真っ白。男も女も茫然となるが、キッと振り向くラギィw


「やり過ぎた?」


僕は、未だ白い粉が立ち昇ってる消火器の噴霧口をフッと吹く。まるで西部劇のガンマンみたいにさ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ストリッパー達の楽屋。様々なカツラを載せたマネキンの首が10数個ズラリ並ぶ。大きな鏡。蛍光灯。


ハンズは憤慨してるw


「デレクは最低のビッチだ。"人妻創世記ヲヴァンゲリオン"のリハにも何回出たと思う?ゼロだょ!全く参加してない。役者気取りで、オーディションばかり気にしてた。あのな。このクラブを支えてるのは、このハンズ・東急・マンシャフト様だ!」

「ん?マンシャフトって…男性の◆〓➗って意味だょな」

「おい!マンシャフトは由緒アル家名だ。馬鹿にするな!」


ヒョロ長のハンズが憤る。ラギィが割って入る。


「由緒ある苗字なのに、人を殺したの?」

「ちょちょちょちょ…殺人?」

「おいおい。声が裏返り、ドイツ訛りのアクセントは飛んで…キャラがコペルニクス的激変だぞ」


全くの標準語になってるハンズ。


「おまわりさん。あのね、ココは女性に夢を与える場所です。俺はそーゆー夢を与えるために演技もします」

「で、その崇高なお仕事のためにライバルを殺すのも演技の内かしら?貴方のライバル、デレクは昨夜殺された。そして、彼の衣装に貴方の髪の毛がついてたの。彼とモメてたコトは認める?」

「たかがパンツに万冊ネジ込んでもらうために人を殺すか?ソレほどの仕事じゃナイんだょ」


コロコロ変わる職業観w


「じゃ何でアンタのロン毛がついてたの?」

「髪の毛かょ。ご覧の通り、ココじゃコスプレもカツラも全部共用のクローゼットだ。俺どころか、誰の髪の毛がついても当然さ。そもそも、俺がどれだけ抜け毛に悩んでいるか、おまわりさん達は知らねぇだろう」

「気持ちはワカル。で、昨日の夜はアンタは何処にいたの?」


髪をおろしたラギィ。ヤタラ美人。


「20時から21時までステージでストリップしてたさ。目撃者はザッと見ても100人以上いるぜ」

「アリバイもカチカチに固いな」

「おっさん、ウケる」


ラギィには睨まれるw


「おっさん。アイツの恋人とは話したのか?」

「恋人?」

「おぅ。金持ちの恋人がいた。デレクは完全に金目当てだったが…最近フッたらしいぜ」


フッた?


「そんなコト、何でわかルンだ?」

「ショーのある日は、いつも楽屋に豪勢な花束が届いてた。けど、先週からパッタリお花は届かなくなった」

「そりゃ悲しいねぇ」


ハンズはドイツ訛りに戻ってる。何だか安心←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部に戻るとヲタッキーズが冷やかす。


「たっぷり楽しんだ?チップが足りなくなった?」

「お店に聞いたけど、ココ4カ月間、毎週お花が届いてたンだって?」

「まぁなマンシャフトをしごいた甲斐があったぜ」


ヲタッキーズは露骨にイヤな顔だが僕は涼しい顔。


「で、花の送り主はわかったか?」

「支払いはクレジットカード。レベカ・ダルト。48才。住所は東秋葉原63丁目」

「ねぇ見てょ。彼女の旦那の出版社、去年の秋葉原フォーチュン誌の企業番付に入ってるわ」


記事のコピー画像がモニターに映る。見出しは"出版業界で大成功!妻は元モデル"。提灯記事だょw


「人妻で元モデルか。最高だな」←

「旦那はモデル大好き(モデライザー)なのね。今じゃ絶滅危惧種じゃん」

「で、死んだ。数年前に。今は、財産は全部彼女のモノになってる」


ますます最高じゃないか!僕の妄想がほと走るw


「きっとレベカは、若い内に結婚。夫は金持ちだったが粗暴だった。その夫が死に、ようやく愛のない結婚から解放された。ある晩、元モデル仲間と夜の街に繰り出し、魅力的でハンサムなデレクと出会う。彼女は、数十年ぶりに生き返った気持ちになる。久しぶりに。しかし、2人の関係は長くは続かない。デレクが若い女を見つけたからだ。悲しみにくれたレベカは殺人を決意する。彼が誰かのモノになるくらいなら、死んでもらう方が良いわ…」


プロットが流れるように湧き出る…が、誰も聞いてナイ。みんな、忙しそうにデスクワークしてるw


「ありがとう、テリィたん。貴方の話は、いつも心地よいエンタメょ。でも、明日の朝、直接レベカに聞くから」←

「なぁラギィ。今のプロット、なかなか良いと思わないか?」

「最高だったわ、テリィたん」


第3章 "ヘルズ・ヘンシェルズ"の青春


夜の神田リバー。窓の下遠く、黒い川面を行き交う満艦飾の屋形船は…まるで光るゴキブリみたいだ。


「コーヒーフロートでお祝い?まさか…」

「未だだけど、ヒロイン役が私とケリィに絞られたの。緊張しちゃって、どーしよーって感じ」

「テリィ様。なので、今、衣装を着てセリフの練習をしていたトコロです。コレで明日は問題ないわ」


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。ミユリさんが…ズボンだw


「ミユリさんのパンツルックは久しぶりだな。レトロを超越してアンティーク?今からタイムカプセルに入れるの?」

「テリィ様。このズボンには成功したステージの思い出が染み込んでます。ジンクス付きの幸運のズボンなのです」

「JALLの新スッチー服もズボンらしいな。あ、確か社長は元JASSで…」


コレ幸い?と逃げ出すスピア。


「じゃ明日に備えて私は寝るね。おやすみ!」


ミユリさんとカウンター越しにキス。


「ぐっすり寝るのょ…結果は、どうであろうと褒めてあげなきゃ。スピアはスゴい。怖いモノ知らずのチャレンジャーだわ。ハッキングで鍛えた度胸があります」

「自慢の元カノだょ。そう育ったのは今推しのミユリさんの影響さ」

「テリィ様。そんな…熱でもあるの?」


僕はミユリさんと向き合う。


「スーパーヒロインに"覚醒"スル前のミユリさんは、ミュージカルに人生を捧げてた。苦労もしただろうに」

「草ミュージカルでしたけど、確かに辛い時もありました。舞台の青春は、いつもバラ色だったワケではありません。やりたくない役もやりました」

「例えば?」


恥ずかしげに語られるミユリさん秘話。


「サンタの隣でカンガルーの役とか、スカイツリーの格好で外に立ってた時もありました」

「クスクス。で、最悪は?」

「そうですね。アキバに来て最悪だったのは、ホントに合わないお仕事で…私は、全く演じるコトが出来なくて、もう」


テレるミユリさん。


「だから、何の仕事?」

「巨乳カフェょ」

「そりゃ無理だな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


朝焼け。電気街がオレンジ色に染まる。高層タワーの億ション区画。ラギィは黒のスラックス。何で?


「何人ものイケメンがココを通ったコトだろう。だが、誰1人気づかない。今、まさに熟女の罠の中に落ちたと逝うコトを」

「今度は映画監督気取り?」

「キャストは、アイドル時代の麻丘めぐみんでキマリだな。ビキニの可愛い奈緒子とか」


単なる妄想だ。ラギィがピンポン。ドアが開く。


万世橋警察署(アキバP.D.)です。レベカ・ダルトさんは?」

「どうぞお入りください。私は、弁護士のマイケ・ケルマです。私も同席します」

「デレクとは資金集めのパーティで逢った。後々知ったんだけど、彼はプロダクションに言われて、金満投資家役のサクラとして来てたらしい。でも、そう知った時には…既に2人は恋に落ちていたわ」


先にソファに座っていたレベカが、早々に口火を切る。コレは話が弾みそうだ。僕達も遠慮なく逝くw


「デレクがストリッパーであるコトは?」

「モチロン、彼は正直に話してくれたわ。私達の間に隠しゴトはなかった。役者の夢を追うには、ある意味ちょうど良いポジションだと思った。彼は努力家だったの。いずれ花開く。私にはワカルの」

「では、なぜ別れたんですか?」


瞬間、言葉に詰まるレベカ。


「…彼に興味がなくなったの。急に」

「御自分にウソをつかれてるように聞こえますけど?それとも、私達を騙してる?」

「ねぇ私が殺したと思ってるの?」


単刀直入に返して来る。助かるw


「でも、貴女と別れた直後にデレクは死んだのょ。ソレは確かなコトだから」


大事な質問は僕に委ねられる。


「どっちがフッたの?」

「依頼人からフリました」

「なぜ?」

 

僕達は、弁護士マイケの方を向く。


「先週デレクが依頼人に8800万円貸してくれと言って来たためです」

「…経験から言って、お金が絡むと役者との関係性はあやふやになる。だから、別れたわ」

「何のためのお金です?」


悲しげに首を振る金持ち未亡人。


「さぁ…でも、その後は疎遠になったわ」

「浮気だと思った?」

「実は、私もそう思って、恥ずかしいけど、マイケに頼んで探偵を雇ってもらったの」


マイケが答える。


「デレクは、反社会的集団に関わっていたのです」

「反社会的集団とは?」

「津軽の田舎出身で純真なデレクとは明らかに異質な集団でした」


津軽だったのか!


「デレクは、その集団に関わって殺された。もし、私がお金を渡してたら、デレクの命は助かっていたカモしれない」


ウソ泣き。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。雇われ探偵が撮った写真を見る。デレクが路地裏で革ジャンに白キャミの女子と話してる。


「デレクは、先ずこの女と話してから、別の場所に一緒に移動している。ソレはコチラ」

「げ。ココはヘンシェル社のバイクにしか乗らないモーターサイクルギャング"ヘルズ・ヘンシェルズ"がアジトにしてる"佐久間河岸ガレージ"じゃナイの。今までに潜入捜査官が何人も行方不明になってるわ…あら?仲間に紹介されてる。何なの?一味だったの?」

「基本的には、アーバンな暴走族だろ?路地裏でセクシーな不良お姉ちゃんと話して、溜まり場でお友達にも紹介されたって感じだな。何で死ななきゃナラナイのかな」


ココでラギィがヒラメく。さすが現役警部w


「待って。いつかのデレクの出演画像、出せる?」

「え。また見なきゃイケナイの?あの精力剤、彼に飲ませたけど、直ぐイッちゃったンですけど」

「じゃなくて、モーターサイクルギャングの方!」


本部のモニターに気弱なアジアンをホールドアップさせて、コチラを向いたチョビ髭のデレクが映る。


"…金をよこせ。金とガレージにある部品を全部よこせ。従わないならこいつで頭をぶち抜いてやる。ブリィ・グリムは…"


デレクの静止画像の直ぐ横にモーターサイクルギャングのボスの手配写真が並ぶ。確かに良く似てるw


「デレクが"佐久間河岸ガレージ"で会ってたのは、この手配写真のボスだわ」

「"ヘルズ・ヘンシェルズ"のブリィ・グリム?」

「モーターサイクルギャングの大物ねw」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ハッカーのスピアが呼ばれ桜田門のDB(データベース)をハッキング。モーターサイクルギャング"ヘルズ・ヘンシェルズ"のブリィ・グリムのオンライン検索を開始。


「はい、グリムの前歴。ゆすり、凶器による暴行、強盗…割と地味ね。あの"番組"の時は、殺人未遂で逮捕状が出てたみたい。借金を返さなかった奴をバイクで中央通りを引きずり回した…ソンなコト、あったっけ?」


モニターに無差別殺人級の大きさの新聞記事コピーが出るが…最近の若いモンは誰も新聞を読まないw


「なんで蔵前橋(けいむしょ)にぶち込まないの?」

「えっと…でも"番組"のおかげで逮捕はされたみたいょ。でも、肝心の公判で、仕返しを恐れた被害者が証言を拒んで、最近出所してる」←

「デレクは、そんな危険な人達と何の話をしてたのかしら。お誕生会のストリップの打合せ?」


モニターは、モーターサイクルギャングの白キャミ女と話してるデレクの画像。スピアが話を続ける。


「その答えは、テリィたんのお友達が知ってた。最高検察庁のDB(データベース)をハッキングしたら、グリムは送検された時、検察官にこう語ってる。"俺を蔵前橋(むしょ)送りにしたあの番組は許さねぇ。特にあの番組に出演して俺をコケにしやがった俳優はな"…だって。コワ」

「以前、モーターサイクルギャングを調べたコトがあったけど"チームのロゴ入り革ジャン"は、連中にとっては命より大事なモノなのょ。それを"番組"でチャラい三文役者デレクが身につけてた」

「そっか…つまり、あの白キャミソールの金髪女はデレクをガレージに誘き出すための罠だったのね?」


ラギィは断じる。


「そして、殺したンだわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"佐久間河岸ガレージ"。表向きはバイクの修理工場だが、実はモーターサイクルギャングのアジト。


「bow wow!」


ドーベルマンが吠え、旋盤工が火花を飛ばす中、男も女も全員がタトゥ&鋲打ちスパイクの革ジャンw


「テリィたん。ドーベルマンは、つながれてるから怖がらなくても大丈夫…万世橋警察署(アキバP.D.)だけど!」

「そっちの彼女(ガキ)は?」

「私の情夫(イロ)ょ。手を出さないで」


ラギィに続きガレージの奥へ。ガンを飛ばす用心棒に、情夫(イロ)っぽい怖い顔で返したら変な顔をされるw


「おい、お嬢ちゃん。無断で入るな」

「じゃチャッチャッと話を済ませましょう。アンタがグリム?」

「おい!ヤメろ!」


旋盤工がうなずきハデに飛んでた火花が止む。


「貴方とデレク・ブルナとの関係を聞きたいの」

「誰だ?そいつ?」

「あのね。ココにある車の識別番号を調べましょうか?盗んだテールランプが1つでも混ざってたら、どうなると思う?貴方も工場も今日で全て終わり…ねぇ何か思い出した?」


犬と戯れて遊んでたグリムの顔に、ニヤけた笑いがユックリ広がって逝く。(おもむ)ろにラギィの方をむく。


「急に思い出したぜ。良い奴だったさ」

「死んだわ。貴方が関係スルと思って間違いナイわね?」

「やい!ブリィ・グリム!お前は、デレクが出演した、あのチャラい"番組"のせいで逮捕された。だから、仕返しに殺人を依頼した。そうだろ?」


ラギィと共闘でグリムを追い込む。カッコ良いw


「腹が立ったのは確かさ。だが、デレクが"寄付"を申し出たから許した」

「寄付?救世軍の社会鍋かょ?」

「いや。ブラスアンサンブルはナシだ。ま、奴もヲレ様の怒りが880万円で鎮められるなら安いと思ったんじゃねーか」


何なんだ?その中途半端な金額は?


「売れない役者がそんな大金を用意出来たとは、とても思えないわ」

「でも、事実だぜ」

「その金は、何処から?」


突然、白キャミソールの金髪女がヤタラ大股で歩いて来て、グリムに抱きつくや全くKYなキスシーンw


そして、物語の幕は開く。


「アンタがテリィたん?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


世の中、狭いな。


例の画像の白キャミ女だ。近くで良く見ると意外に巨乳。ソレじゃ革ジャンの前が閉まらナイだろう。


「ミユーリの新しい情夫(イロ)ってアンタなの?ねぇソレを先に言いなっ!」

「ミユーリって誰だ?ミユリさんのコトなら、僕は彼女の情夫(イロ)じゃなくてTO(トップヲタク)だぞ」

「何?ミユーリ?"ヘブン・ドールズ"の"伝説の姐さん"のイロ?アンタが?まさか…マジかょ」


今度はブリィ・グリム。まるで幼稚園児が上野のパンダを見るように上から下まで僕をジロジロ見るw


急に印籠を目にした悪代官モードに移行w


「と、と、とにかく!アイツが何処から金を集めて来たかなんて俺には関係がありません、じゃなかった、関係ねぇよ。だから、聞かなかった。俺達は金が入れば、余計なコトは聞きません。頭が悪いから」

「…何だか良くワカラナイけど、とにかく、貴方がデレクを強請ったのね?ソコの白キャミ女を通して額は880万円を提示した?」

「そして、1週間待ったけど金を払わないから殺した。そーだな?」


急に弱気、というか小市民協力モードに入ったモーターサイクルギャング相手に一気にタタミかける。

さらに、ラギィが白キャミ女とデレクが話している写真を示すと、事態は思わぬ方向へと転がり出すw


「お前、奴に何を話したんだ?」

「説明させて!」

「あの男と何を握ったんだ?正直におまわりさん達にお話しスルんだ!」


グリム。お前、割と話がワカル奴だな。


「わ、わかったょ…アタシは、オマエさんがデレクに手を出すと思って怖かったのさ。だから、アイツに"提案"したんだょ。いくらか"寄付"したら良いンじゃないって!」

「だから、奴は金を払ったのか?!」

「オマエさんを蔵前橋(ムショ)には行かせないょ!アタシは、もうオマエさんを失いたくは無いンだょ!」


すると、女の腕を掴み力任せに抱き寄せるグリム。


「お前…最高にロマンチックだぜ!」


グリムは、白キャミ女を抱き上げる。白キャミ女は両股でグリムを挟み、マウントとって萌えるキス!


ドン引きスル僕とラギィw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「ミユリさん。あのさ、この前、神田リバー沿いにある暴走族のガレージに逝ったら、不思議なコトが…」

「テリィ様!ソンなコトより、結局"首都高ルーレットのブリィ"…じゃなかった、ブリィ・グリム…さんは、無実ではナイでしょうか。どーなのエアリ?」

「はい、姐様。グリムは事件と関係ありません。事件の晩はビリヤードをしてたアリバイもあります。ソレとストリートの高利貸しを当たりましたが、デレクは何処からも借金はしてません」


冒頭の僕の疑問をスゴい勢いで無視し、カウンターの中で、ヤタラ大袈裟にアタマをヒネるメイド長w


全力で怪しいw


「テリィ様、不思議ですね。ストリッパーが何処であんな大金をゲットしたのでしょうか?」

「質屋かな?」

「姉様。被害者デレク・ブルクは、トマト銀行に口座を持っていますが、預金額は常に数万円で、2ケタ万の預金があった試しはなかったようです」


テキパキ答えるマリレ。僕に報告スル時とは、エラい違いだ。一応、僕は君達の会社のCEOナンだが!


では、社員教育だ。


「じゃトマト銀行に口座を持つ被害者の車に、何でランパ銀行の入金伝票があったのかな?」


僕が本部のホワイトボードから拝借した入金伝票のコピーをヒラヒラ示すとメイド長から指示が飛ぶ。


「マリレ、事件当日にランパ銀行で880万円の引き出しがなかったか、スピアにハッキングしてもらって調べて」

「はい、姉様」

「次はこーゆーの見逃しちゃダメょ」


時間(タイム)ナヂス"は頭ポリポリ。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


カウンターで脚をブラブラさせて、しばらくPCをカタカタやっていたスピアが、ボソリとつぶやく。


「デレクがグリムにお金を渡した日の午前中、ジェシ・マダレって名義でピッタリ880万円の引き出しがあったわ」

「ジェシ・マダレ?確かデレクの家に、同じ名前の名刺があったな」

「そのマダレさんが金欠ストリッパーのデレクに880万円を貸したのね」


そーゆーコトだ。そして…


「デレクは、結局返済出来なくて、そのマダレさんに…殺されちゃった?」

「ミユリ姉様。トマト銀行の防犯カメラのアーカイブならハッキングは簡単だけど?もしかしたら、噂のマダレさんの姿が拝めるカモ」

「助かるわ、スピア」


全員でスピアのPCを囲む。


「コレ?」


アッサリ見つかる。窓口のテラーと話すジェシ・マダレ。動画のテロップは"11時53分15秒am"だ。


「高そうなスーツを着てる。お金貸しは儲かるのね。スピア、後ろ姿で白髪なのは良くわかったけど、お顔は見れる?」

「ちょっと待って、姉様…はい、切り替えたわ」

「あら」


別カメラに切り替わった画面を指差すミユリさん。


「コレは…白髪に染めたデレクだわ。テリィ様、ジェシ・マダレとデレク・ブルクは同一人物です」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ほとんどノーガードの防犯カメラの画像と違って、口座取引情報のハッキングには少し時間がかかる。


「姉様、お待たせ。ジェシ・マダレ?デレク・ブルク?どっちでもOKだけど、彼が880万円を引き落としてた口座は"有限会社アテネ"名義ね。上海の自由貿易試験区に開設されてるオフショア口座」

「サインはマダレの名前?」

「サインは電子情報化されてナイからワカラナイ。でも、口座にはマダレの名前しかナイわ」


一斉に頭をヒネる僕達。


「実際には存在しない男につながる上海のオフショア口座か。思い切り怪しいな」

「テリィ様。デレクが白髪に染めて、金欠なのに高いスーツを着てたのは、誰かの信頼を得るためではナイでしょうか。彼の部屋には、大量の経済書があったのでしょ?ソレは役作りのため、誰かのためにジェシ・マダレを演じるためだと思うのです」

「なるほど。でも、なぜ男性ストリッパーがビジネスマンの役を演じるのかな?」


ミユリさんは微笑み、ゆっくりと語る。


「昔、私のミュージカル仲間が、中国の企業に雇われて、重役の演技をさせられました。割と良いバイトだったそうです。実は、そーゆーの良くアルんです。全部、他の投資家の信頼を得るためです。あるいは、アキバ工科大学(AIT)の院生が事業を立ち上げる時にも、同じようなコトをしました。年配の投資家役をサクラとして雇い紛れ込ませる」


ミユリさんのミュージカル女優時代ってスゴいなw


「ミユリさん、ソレって結構…経済犯罪スレスレの危ないバイトだったね」

「すみません…とにかく!つまり、デレクを雇い"有限会社アテネ"の重役としてジェシ・マダレを雇い、上海のオフショア口座を開設した人がいます。その人にアプローチしないと」

「OK。最近"有限会社アテネ"に振り込まれたマネーを洗ってみよう。もしかしたら、デレクが殺された理由がワカルかも」


すると、ミユリさんはゆっくりと微笑む。


「テリィ様。どうぞココから先は、ラギィとお進めください。私から話しておきますから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のラギィにミユリさんからコール。


「ソッチはどーなの?ラギィ」

「ボチボチね。で、ミユリ。確証はアルの?」

「このオフショア口座が不動産詐欺の舞台になってたコトは間違いナイわ。恐らく、デレクは不動産詐欺から抜けようとして殺されたンだと思う」


僕は、捜査本部でラギィの耳元でささやく。


「僕は、今までミステリーSFで、色んな結末を描いて来たけど、コレは実にお見事だと思うょ」

「…わかった。口座に振り込んでる連中をしょっぱいてみるわ。ところで、ミユリ。よくぞココまでコッソリ捜査を進めてくれたわね。私は、確かにテリィたんの元カノだけど、本件捜査のテリィたんのパートナーは、あくまで私ナンだからね!」

「はいはい。だから、後はラギィとテリィ様でお願いスルわ。私、今回は"ムーンライトセレナーダー"に変身しないで済ませるから、許して」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)のラウンジ。示された写真を指差す女子。


「あ、マダレさんだわ!100%コレは白髪のマダレさんだわ!でも、何で?貴女も儲けたの?」

「いいえ。ところで、貴女は彼に100万円の小切手を切ってますょね。コレは何のお金ですか?」

「もぉ聞いて!最高の投資をしたのん!」


(ツルペタだけどw)胸を張る女子←


「何に投資したの?」

「魅力的な投資なのん。友達のサミィの彼氏のロニィの従兄弟のポリィが白髪のマダレさんから耳寄りな話を聞いたのん!」

「まぁ。どんなお話しかしら」


早くも投げ槍なラギィ。気づかズ自慢話は続く。


「今、神田リバー沿いで建設が進んでる"デザイナーズタワマン"なのん。知ってる?」

「いいえ。ソレで何だって?白髪のマダレさんは?」

「その場で100万円を払えば後日4000万円でタワマンが買えちゃうの。ね?コレってメッチャお得じゃない?」


両手で顔を覆うラギィ。既に半分以上呆れてる。


「神田リバー沿いだっけ?」

「YES。スゴくない?」

「(スゴくない↓)ある意味ビックリだょ」


呆れてね。こりゃ手のつけようがない。


「でしょ。こんな投資機会を逃すナンてアホょ。ドン臭いにもほどがアルって感じ」

「なるほど。で、その時一緒にマダレに小切手を切った人は他にもいたの?」

「みんなょ!私ナンか大学資金を使っちゃったからパパはムカッとしてたけど、ちゃんと筋を通したら良い買い物したって納得してくれたわ。ビジネスの才能はきっと親譲りなのん!」


パパは…泣いてるぞ。


「ソレで、契約書とかは、後日郵送されて来た?」


えっと目を見開く女子w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラギィと神田リバー沿いを歩く。"riverside loft KANDA"は、白いタワマンで既にホボ完成してる。


「素敵!ねぇねぇ、あっちがきっとショールームみたいょ!」

「コレが4000万円か。このデザイナーズマンション、2部屋買おうかな」

「テリィたん、コッチょ!」


まるで、ラギィは新居を下見に来た新婚妻みたい。彼女は前の職場では"新橋鮫"と恐れられてたがw


「何か御用ですか?」


完成したショールームの中で背広姿にヘルメットの男達が働いている。僕達を見てヘルメットを取る。


万世橋警察署(アキバP.D.)です。責任者はどなた?」

「私です。開発業者(デベロッパー)のクレマ」

「ジェシ・マダレを御存知ですか?」

 

途端に顔を曇らせる開発業者(デベロッパー)


「知ってるかって?また会ったらブン殴ってやりたいょ!アイツのせいでヒドい目に逢いました」

「彼に利用された?」

「そうですょ!アイツは、老舗の不動産業者と偽ってウチのタワマンを勝手に売ろうとした。経歴を偽って私を騙したのです」


小鼻を膨らまし全力で憤慨中w


「で、彼をタワマンに入れた?」

「YES。入居希望者を連れて見学会をヤルと言うから、正面ゲートの暗証番号を教えてしまったんです」

「(ソレが命取りねw)なぜソレがウソだとわかったのですか?」


両肩をスボめ天を仰ぐクレマ。


「マダレと契約したと何人もが怒鳴り込んできたからですょ!」

「…どうやらマダレには共犯がいたみたいです。誰か思い当たりませんか?」

「わかりません。ソレ以降は何の音沙汰もありませんし、他の開発業者も何人か奴の手口に引っかかってる。みんな同じ災難に合ってるみたいです」


ココで、突然お客モードのラギィ。


「あの、コチラの資料をいただけます?実は私、部屋を爆破されて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田リバー沿いの帰り道。もはや新居選びの新婚気分はナイがコレはコレで、恋人みたいに見えそうw


「ひと部屋100万円で詐欺(カモ)ると、かなり儲かるな」

「そんなに稼いでたのに、なぜデレクはストリッパーを続けてたのかしら?」

「だ・か・ら、稼いでたのはデレクじゃナイのさ。彼は投資家を信頼させるために雇われたサクラに過ぎない」


うなずくラギィ。


「あ、そっか。お金は全て共犯者に流れてたのね」

「一方、デレクはグリムの件で急にまとまった金が必要になった」

「ソレで勝手に880万円を引き出した。ソレに気づいた共犯がデレクを問い詰めると…」


妄想が妄想を呼ぶ"妄想エスカレーション"のスタートだ。一気に推理が進む。ココから先は任せろw


「デレクは"もう協力しない。俺は抜ける"と共犯者に訣別の挨拶だ。ところが…」


ココで僕のポケットの中のスマホが鳴動。惜しい。せっかく妄想がエスカレーションしかけたのにw


「…ROG。ありがと…ヲタッキーズが調べた結果(ホントはスピアがハッキングしただけだがw)、"有限会社アテネ"のオフショア口座のホントのオーナーがわかったょ」

「あら、どなた?」

「会社設立の定款にサインをしてたのは、お花大好き未亡人のレベカ・ダルトだ」


すると、ラギィは急に"新橋鮫"の顔になるw


「予想通りだわ。レベカの事件当日の行動は調べてアル。実はもう令状も取ってあるの。ヲタッキーズに行ってもらうわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


レベカ・ダルトの自宅を訪ねる。弁護士も一緒だw


「レベカさん。調べさせてもらったけど、御主人の死後、お金をかなり浪費してるわね」

「失礼。警部、なぜ私の依頼人にそんなコトを聞くのですか?」

「事件に関わるコトだからです」


やり取りを心配げに見守るレベカ。


「警部さん、お金が事件に関係してるの?」

「かなり深く関係しています」

「レベカさんは、服や宝石のビジネスを立ち上げ、その全てで失敗していますね?他にも色々と失敗していますが、挙げていったらキリがナイ」


困惑する元モデル。


「だから、私が犯人だと?」

「実際、預金が底をつくのは時間の問題だった。一方、デレクは魅力的で、演技も出来る人だ。投資家を説得スルにはぴったりの人材だ」

「ええっ?一体、何を言ってるの?」


呆然とする未亡人。頭を振る弁護士。


「警部。全て警察の憶測に過ぎないだろう?」

「デレクは、謎の口座から880万円を引き出してる」

「上海のペーパーカンパニー"有限会社アテネ"です。御存知ですか?」


ラギィは"有限会社アテネ"の登記簿謄本と口座の出納記録を示す。レベカは、ますます当惑スル。


「待って。何コレ?私はサインをしてないわ」

「レベカさん。もうコレ以上、何も言わないで。裁判で不利になるだけです」

「裁判?だって、マイケ。4月29日は私は海外にいたのょ?」


弁護士の制止を振り切り主張するレベカ。その自律的な主張が欲しかったのだ。一気にたたみかける。


「レベカさん、知ってます」

「その日は、台北でファッションウィークがあった。たしか最終日でしたね」

「アジアで活躍した元モデルの貴女なら、絶対に見逃せないイベントのハズ…実は、神田リバー水上空港の渡航記録も確認済みです」


後半を僕が引き継ぐ。


「貴女が西門町(シーメンティ)でシャンパンを飲んでる間、貴女の弁護士は、貴女の名前で詐欺を計画していた。そして、実行し、実際に、お金を盗んでいた。だから、貴女のビジネスは、いつも失敗していたのです。さらに、貴女に内緒でデレクにマダレ役を演じさせた。一方、デレクは、モーターサイクルギャングに脅され、大金が必要だった」

「マイケ。貴方、一体何をしたの?通訳に裏切られた大リーガーの気分ょ」

「デレクは、マイケが勝手に貴女の口座からお金を引き出したと知って、マイケに詰め寄った。そして、デレクは俺は抜けると訣別を告げた。マイケは犯行をバラされると思い、あの晩、デレクを尾行し殺した。そうでしょ?」


ラギィに追い詰められ、ニヤリと笑うマイケ。


「私は、もうコレ以上何も話さナイ」

「ソレが良さそうね」

「弁護士を呼ぶか?…ソレとも弁護士役の役者の方が役に立つかな?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「テリィ様。結局、事件はどうなりました?」

「弁護士の部屋から凶器が見つかった。彼は、司法取引に応じて全部自供したょ」

「…結局、デレクは、夢を追ってアキバに来て、犬の糞を踏んだのですね」


ミユリさん、名言だな。スピアが御帰宅。


「おかえり。オーデ(ィション)はどうだった?」

「ダメだったわ」

「ええっ」


カウンターの中と外で絶句スル僕達。


「スピア、残念だったわ。でも、コレは最高のチャンスなの。ミュージカル女優のキャリアに、挫折は必要不可欠なの。成功した女優と呼ばれる人達は、みんな挫折してる。ミュージカル女優って、挫折してナンボょ」

「ありがとう、ミユリ姉様…でも、何で"ムーンライトセレナーダー"に変身してるの?」

「スピア!オーデ(ィション)なんてRe:Japanと同じょ。"お次がアルさ"だわ」


ミユリさん、今宵はサエてるな。


「実はね…」

「なぁに?スピア」

「ライバルのケリィには、情熱があった。応援してくれたみんなには悪いけど、私にはソコまでの情熱はなかった」


ハグ。ドサクサ紛れにミユリさんの目の前にも関わらずスイカ級のバストをグリグリして来るスピアw


「そっか。スピアにはソコまでミュージカル女優の血が流れてなかったってコトか。でも、良く頑張ったな」

「ありがとう。でもね、結果オーライだったの。結局、舞台監督をやるコトになったわ。その方が私には合ってる」

「おぉ。転んでもタダでは起きない?なかなかやり手だ。じゃ落選おめでとう!」


ますます強くハグ。あはは、落選って楽しいな…今宵はダッジオーブンディナーだ。

ゴーグルをつけ、楽しそうに玉ねぎを微塵切りにしているミユリさんにソッと問う。


「ところで、ミユリさん。何で変身してるの?」

「え。だって、テリィ様はお好きでしょ?セパレートタイプのメイド服。ビキニみたいだから。るんるん」←

「ま、まぁね」


うーんヤッパリ気になるw


「ミユリさん?」

「はい。何でしょう、テリィ様」

「ミユーリって誰?」



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"バチェラー(バチェロレッテ)パーティのストリッパー"をテーマに、パーティの参加者達、呼ばれるストリッパー、ストリッパーの元カノ、ストリッパーのライバル、ニセ投資家、元モデル、陽気なモーターサイクルギャング達、実直なデベロッパー、狡猾な弁護士、殺人鬼を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。


さらに、ヒロインの覚醒前のミュージカルヲタク時代、もう1つの素顔などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、全世界の老若男女が渋谷のハチ公的な観光スポットとして訪れる秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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