13話 勇者様と選択
魔王が消えた後、部屋には私とジオ様だけが残された。
この部屋には扉も窓もない。どこから出ればいいのだろう?
ジオ様が魔法で壁を壊せないか試してみたが、魔法は全て跳ね返されてしまった。
文字通り跳ね返ってくるのだ。これはかなり危ない。
上級魔法は万が一跳ね返された場合間違いなく死ぬので試すわけにはいかない。
剣で切り付けても傷一つ付かない。
一旦落ち着いて方法を考える事にした。
「ララ、さっきの話だが・・・俺は半年後に・・・」
「ジオ様!二人で逃げましょう!『終焉の魔物』が消滅するまで一緒に逃げ切りましょう!」
私は両手でジオ様の二の腕を掴んで言葉を遮った。
「・・・・・」
「・・・ララ・・・それは出来ない」
「ですよね。ですから私たちに残された選択肢は一つです」
「『ジオ様が犠牲にならずに『終焉の魔物』を倒す方法を見つける』」
「これしかないんです!」
私は人差し指を立てて力説した。
「はは、ララが言うと本当にそんな方法が見つかりそうな気がしてくるな」
ジオ様、笑ってるけど、まだほんの少し悲しそうだ。
「気がするだけじゃダメです!絶対に見つけましょう!」
ドオォォォォォォォン!
その時、轟音と共に壁に穴が空いた。
「ララ!いるか?」
「ココさん!?」
「おお!いたいた!ジオもいるな?」
「ココさんどうやって?どうしてここに?」
「あたいも『魔王』の調査依頼を受けてたんだ。この城に着いたら、セナとゼトが城に入れなくておろおろしててな! あたいは入れたんでララ達を探しに来た!」
「いずれにしても助かりました。でもよくこの壁壊せましたね?」
「殴ったら壊れた」
「殴って・・・って? ジオ様でも壊せなかったのに?」
「あたいの身体強化は特別なんだ」
・・・特別って、どんだけパワーアップしてるんだろう?
「そうだ!ミアさんもどこかにいるんです!」
「ミアなら途中で見つけたぞ!」
「ララさん、ジオ様、無事ですか?」
ココの後ろからミアが現れた。
「ミアさん大丈夫でしたか?」
「はい、わたくしは何もない部屋に閉じ込められていました」
「魔王にも魔物にも会わなかったんですか?」
「はい、ココさんが壁を壊してくれるまで、何もできずにいました」
「そうなんですね、でもみんな無事でよかったです」
「ココ、助かった。礼を言う」
ジオ様がココさんにお礼を言った。
その後ココさんが出てきた穴に戻ると中は通路で、行き止まりの壁をココさんが壊したら。城の地下室に通じていた。
城の外に出ると、セナ様とゼト様が待っていた。
「ララちゃん、ジオ君、無事だったかい?」
「はい!みんな無事です!ココさんのおかげで助かりました!」
「で、魔王には会えたのか?」
「会えるには会えたが・・・ララ、説明してやってくれ」
「はい、ジオ様」
私は、『魔王』を名乗っていた人物の目的が勇者を誘き出して、勇者に終焉の魔物を討伐せずに放置する様に交渉するためだったという事を伝えた。
そして、次の『終焉の魔物』の出現が半年後だという事を告げた。
お母さんの事は伏せておいた。
「全人類の滅亡を企んでいたなんて、まさに『魔王』だな」
ゼト様がつぶやいた。
「それにしても『終焉の魔物』の出現が半年後なんて。前回も周期が短かったけど今回も短いんだね」
「セナ様、それは・・・」
「で? ジオ君とララちゃんはどうするの?」
「どうって?」
「『魔王』いう通り、二人だけなら逃げ切れるんじゃない?まあその時は僕もご一緒させてもらうけど?」
「確かにそれも考えました。私たちの身近な人達だけなら一緒に逃げ切れるんじゃないかって。でも・・・」
私はジオ様の方を見た。
「俺は『勇者』だ。そんな事は出来ない」
ジオ様は断言した。
「わたくしは立場上、この件を上に報告せねばなりません。ジオ様が我が国を見捨てる事は無いと信じてよろしいのですよね?」
ミア様がジオ様に問いかけた。
「ああ、それで問題ない」
そうだ。ジオ様は全人類の命を背負ってるんだ。そんな軽率な事できる訳がない。
私たちはふもとの町まで戻ってきた。
「ララ!今度こそお別れだ!でもすぐにララの国にいく!」
「はい!楽しみに待ってます。ごちそういっぱい作りますよ!」
ココさんはこの前よりも元気に去っていった。
「ではわたくしもこちらで失礼します」
ミアさんともここで別れた。
「俺達も帰るぞ、ララ」
「はい!ジオ様」
私は、ジオ様とこれからの半年をどうやって使うか考えていた。
第7章完結です。明日から第8章【終焉の始まり】開始します。




