12話 勇者様と魔王の目的
次の『終焉の魔物』の出現が半年後
つまりそれはジオ様の寿命があと半年という事を意味する。
「そんな・・・あと半年だなんて・・・」
「・・・そこで相談だが・・・お前たちにとっても悪い話ではない」
「勇者への頼み事・・・ですか?」
「そうだ。先ほども言ったように今から半年後に『終焉の魔物』が出現する。 だが、『終焉の魔物』が現れても討伐しないでくれないか?」
「それは!どういう事ですか?」
「『終焉の魔物』は世界中の人間を殺し尽くす。それはこの世界から人間がいなくなるまで終わらない。だが、お前たち二人なら、『終焉の魔物』から逃げ続ける事が出来るのではないか?」
「戦わずに逃げ続けると・・・どうなるというのですか?」
「『終焉の魔物』は殺した人間の魔力を吸収して活動を続けるが、世界中の人間を殺し尽くしてしまえば魔力が補充できなくなりやがて消滅する。お前たち二人はそれまで逃げ続ければいい」
「あなたも、そうするのですか?」
「そうだ!この世界にはくだらない人間が増え過ぎた!下等な人間どもを一掃し、我々だけの世界を作るのだ。ララ、お前と勇者は新しい世界にふさわしい人間だ。共に新世界を作ろうではないか!」
「ふざけないでください!」
「この世界に死んでもいい人間なんて一人もいません。全ての人に生きる権利があるんです。あなたの考えは傲慢です」
「ふふっ、確かにそうかもしれん。だが本当にそれでいいのか?」
「お前は、『勇者』と『世界』のどちらかを選べと言われたら『勇者』を切り捨てると言うのだな?」
「っ! それは・・・」
私は・・・どうしたいんだろう?
「お前の母親はなりふり構わず『勇者』だけを求めたぞ? 『世界』も、娘であるお前の事も切り捨ててな。 もっとも、それでも失敗したがな」
私だって!一番大切なのはジオ様だ!それは間違いない!
でも、だからと言って他の人たちも切り捨てられない。
「私は・・・両方救います!『勇者様』も、『世界中の人々』も全てを助ける方法を見つけだします!」
「はっはっはっ! 強欲だなお前は? そんな事が本当に可能だと思うのか?」
「どんなに不可能に思える事でも、絶対に解決策はあるはずです!私は最後まであきらめません!」
「交渉は決裂だな。まあいい、今回は諦めるとしよう」
「待って下さい! あなたは、あなたたちは、お母さんは何者なんですか?」
「交渉が決裂した以上、答える義務はない」
その言葉を最後に、『魔王』の姿はすぅっと透き通り、消えてしまった。