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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第7章 勇者と魔王
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1話 勇者の弟子と新入生

 学院生活も3年目に入り、私は15歳になった。


 学院に生徒として在籍してはいるものの、ほとんど講師のような活動をしている。



 先日の一件からジオ様とは少し距離を置くようになってしまった。

 毎日の訓練や食事は一緒にしているが必要最小限の会話しかしていない。


 ルイ王子との婚約の件はずっと保留にしてもらっている。


 ジオ様はそんなにいやだったら婚約の件は断ってくると言ってくれた。

 でも、私がこだわっているのはそこではない。

 

 ジオ様はやっぱり私の事を恋愛の対象として見てなかったという現実から目をそらしたかった。


 

 お父さんの事もショックだった。

 お父さんが国王陛下のお兄さんで、元勇者で、一度死んでいた?

 情報量が多すぎて、かえって現実味が無くなっていた。


 ジオ様に相談したかったけど、込み入った話が出来る状況では無くなってしまった。


 お父さんは確かに生きていた。

 一緒に暮らした記憶に間違いはない。

 肌のぬくもりや優しい声も間違いなく生身の人間だった。


 勇者は『終焉の魔物』と戦って命を落とすという事実と、その後生きていたお父さんと、何をどう考えればいいのかわけがわからない。

 

 次の『終焉の魔物』が現れた時、ジオ様はどうなるのか?私はどうすればいいのか?

 これまで考えない様にしてきた事を考えざるを得ない状況になっていた。




「ララ先生、元気ないですよ」


 魔法士講座の控室にいたら、新入生のアン殿下が訊ねてきた。


 アン殿下は学院入学前に『上級魔法士』を取得しており、『上級魔術師』取得も目前だという。

 今年の新入生の主席だった。

 当然、学院のアイドルとして男子生徒のあこがれの存在である。

 まぁ、私と違って正真正銘の高根の花だが。


 元々は学院に入る予定ではなかったそうだが、見分を広めたいという事で入学を決めたらしい。


「殿下、心配かけてすみません」

「先生、ここでは生徒なんですからアンって呼んで下さい」

「私も生徒なんだけど・・・」



「勇者様の事ですよね?」

「・・・アンには隠し事出来ないもんね・・・私どうしたらいいんだろう?」

「ふふっ、さすがのララ先生でも、恋する乙女になっちゃうと弱気になるんですね?」

「そうだ!アンならジオ様の気持ち見えるよね?」

「ララ先生!カンニングはダメですよ! それにわたくしにも勇者様の思考は見えません」

「だめかぁ!」


「わたくしからアドバイスするとしたら、いつも通りにするのが一番だと思ます。今までもそれでうまく行っていたのではないですか?」


「うん・・・確かにそうだね」



「おっ!美人姉妹が揃ってる」

「ララ、アン殿下、ごきげんよう」


 レンとルナが控室にやってきた。


「こんにちは、レン様、ルナ様」

「レン!美人姉妹はやめてよ」

「大丈夫、わかってるって。本当の姉妹だけどララは身分を隠さなきゃならないんだろ?」

「だから、違うって!」




 そうなのだ。アン殿下が入学した際に、全校生徒が思ったそうだ。『剣精様』の妹君だと。


 これまでアン殿下はほとんど公の場に出た事が無く、貴族の子息や令嬢も姿を見た事が無かったそうだ。


 入学式でアン殿下が新入生代表として壇上に登り、この国の第1王女と紹介された時に、会場にいた全生徒の頭がバグっていた。


「『剣精様』の妹君が王女ってどういう事だ?」

「『剣精様』も王女って事だろう?」

「でも妹君が第1王女って言ってたぞ」

「ほらやっぱり王様の隠し子だったんだよ」

 

 ざわめきが収まらなくて、殿下が挨拶を始められずに困っていたので、私が壇上に駆けあがってみんなを鎮めたのだ。


「みなさん!静かにして下さい!殿下が困ってます!殿下と私は見た目が似てるだけの全くの他人です!」


 私の一喝で会場はシーンとなったが、殿下が「ありがとうございます。お姉さま!」って言って私に抱きついてしまったので、再び会場が騒然となってしまった。


 その後アン殿下が不安だからそばにいて欲しいというので、私は脇に立ってアン殿下の新入生代表挨拶の応援をしていたのだが、生徒から見たら妹を見守る優しいお姉さんという構図に見えていたらしい。


 という事があったのだった。




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