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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第6章 勇者と王子
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10話 勇者の弟子と舞踏会

 私は王室主催の舞踏会に出席する事になった。

 第7階位の貴族となった私は参加が可能となったからだ。



「ジオ様、おかしくないですか?」


「どこから見ても立派なレディだよ」


 ジオ様は勇者ではなく私の後見人であり、第3階位の貴族『ジオ』として出席している。

 例のメガネスタイルだ。


「もうすぐ会場に着く。作法は練習通りにしていれば大丈夫だ」


「はい!頑張ります!」




 会場に入ると全員の視線が一斉に私に集まってきた。


「おお!なんと美しい!どこの令嬢だ?」

「ここまで美しいご令嬢は今まで見た事が無い」

「あの髪の色と瞳の色は王家のご親族ではないかしら?」

「確かに、物腰といい、気品といい、高貴な生まれに違いない」

「どこかでお目にかかったような?このように美しいご令嬢であれば一度会えば忘れる事は無いはずだが・・・」


 会場のざわめきが収まらない。




「ジオさま・・・みんなが私に注目してるんですけど?」

「ララがこの中で一番きれいだからな、仕方ない」


(ジオ様!! なにさらっと断言してるんですか!?)


「いやいや!そんな事はありませんよ!ほらっ!私よりきれいなご婦人もたくさんいますよ?」

「そうか? 俺にはララ以外はそうは見えん」


「じっ、ジオ様!?」


(何言いだすんですか?)


 あせって危うく地が出ると事だった!


 顔はちょっと赤くなってしまったが・・・





「ようこそいらっしゃいました。『剣精様』」


 ルイ殿下が声をかけてきた


「殿下におきましてはご機嫌麗しゅう存じます」


 私はドレスの裾をつまみ貴族の作法で挨拶した。


「そんな堅苦しい挨拶はいいよ、ララ」

「恐れ入ります」


「ははは、前にもやったよね?このやりとり」




「おお!なんと!『剣精殿』であったか?」

「どおりで見覚えがあったはずだ!」

「戦う姿も美しかったが、これはまた!貴婦人としても誰にも引けをとらないではないか」

「しかし、この様な華奢で可憐なご令嬢が『上級剣士』とは、とても信じられん!」

「確かに、これほど美しいご令嬢を戦場に出すなどもったいない!男どもは何をしておるのか?」



 『上級剣士』はこの国を守護する最強の猛者集団だ。

 レィア様とて、容姿は美しいが常に強烈な強者のオーラを放っている。

 私のような小娘が『上級剣士』といってもピンとこないだろう。



「はは、すごい人気だね?ララ」

「みなさん私に幻想を抱きすぎです」

「ご謙遜を、だれが見ても今日この会場で一番美しいのはあなたですよ」

「もう!殿下まで」


 すると会場に音楽が流れ始めた。


「ララ殿、どうか一曲、私と踊って頂けませんか?」


 殿下が私をダンスに誘った。

 ジオ様の方を見ると微笑んでいた。

 

「踊ってくるといい」

「後でジオ様も踊ってくださいね」

「ああ、わかった」



「ルイ殿下、僭越ながらお受けいたします」


 私はルイ殿下と踊り始めた。

 お屋敷で猛特訓を受けていたので、一通りのステップは踏める。


 ルイ殿下のエスコートは絶妙で常に私が動きやすいようにサポートしてくれる。

 一緒に戦った時に殿下の呼吸は覚えたので、次の動きやタイミングは手に取るようにわかる。

 殿下に誘導されるままに踊ると面白いようにステップがつながっていく。


 慣れてきたら、殿下は時々変わったステップを織り込んできた。

(そうきますか?それならこれで!)

 私も負けじとそれに対抗する。 

 なんだか剣の打ち合いみたいな気分になって、途中からちょっと楽しくなってしまった。


 一曲踊り終わるころには剣術の試合の後のような気分になっていた。


(あれ?私もしかしてやらかした?)


 途中からダンスをしているって事を忘れていた。



「「「「「パチパチパチパチ」」」」」

会場中が盛大な拍手であふれていた。


「すばらしい!このようなダンスは初めて見た」

「『剣精様』にかかると社交ダンスがこれほどすばらしいものになるのか?」

「惜しげもない高度なテクニックの連続で一瞬も目を離せなかった」

「いつもの「剣精様」の剣術が舞のように美しいから、ダンスを踊ると当然こうなるか?」



「ルイ殿下、すみません。途中からダンスだって事を忘れてしまって!」

「いや、すばらしいかったよ。僕も楽しませてもらった」


「見事だったぞ、ララ」


 ジオ様も褒めてくれた。


 その後何人もの男性に誘われて何回踊ったか覚えていない。


「次で最後の曲ね」

「ララ、約束だったな」

「ジオ様!」


 ジオ様の方から誘ってくれた。ちゃんと約束覚えていてくれたんだ!


「お手をどうぞ」

「はい」


 ジオ様とのダンスが始まった。

 お屋敷でいつも練習相手をしてくれていたけど、こういった会場でおめかしして踊るのは初めてだ。


 ジオ様は流れるようにやさしくエスコートしてくれる。


(私が連続で踊っていて疲れていたのわかってるんだ!)


 ダンスは激しくなく、ゆったりとしたステップで、ジオ様が私を気遣ってくれているのがわかる。


(ジオ様のこういうさりげない気遣いが嬉しい)



「ほぅ、これはこれは!」

「先ほどのルイ殿下とのスピーディなダンスも素晴らしかったが、スローなダンスもまた優雅な!」

「ゆったりした動きの中にもしっかりメリハリがある。これは高度なテクニックだ」


 あれっ?ジオ様に任せてゆったり踊ってるだけなのにギャラリーが勝手に熱くなってるんですけど?

 まぁいいや、ほっといてジオ様とのダンスを楽しもう!




 私はジオ様との夢のような時間を最後まで楽しんだ。


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