7話 勇者の弟子と魔物探索
平原を移動し始めて3日が過ぎた。
その間、何度か魔物と遭遇した。
中級の魔物にも遭遇したが、パーティーメンバー全員が単独で討伐できる実力を持っているため、ジオ様が動く事もなく対応していた。
「そろそろ目撃情報のあった地点だ」
「勇者様、お願いがあるのですがよろしいでしょうか?」
ルイさんがジオ様にお願いって何だろう?
「今回の上級の魔物はできるだけ勇者様抜きで討伐に挑戦したいと思います」
「挑戦するのは構わないが、誰かが危険になったらすぐに参戦する」
「はい!それで構いません」
上級の魔物は『上級剣士』と『上級魔法士』の大構成パーティーでようやく討伐可能となる。
それでも何人か死者が出る場合もある。
勇者抜きで『上級の魔物』の討伐を行なうというのはそれだけのリスクがある。
勇者抜きの4人で討伐など普通は正気の沙汰ではない。
「まぁ、何とかなるんじゃないの」
「今回ジオは見学だな」
セナ様とゼト様は何か軽いんですけど。
先行し過ぎて行き違いにならない様に目標地点の少し手前でキャンプする事になった。
他に誰もいない平原で5人集まっていれば魔物の方からここにやってくる可能性が高い。
私は食事の用意を始めた。
この付近は根菜が多かったので根菜料理にした。
芋などを掘り起こしていると、丁度上空を渡り鳥が通りかかったので何羽か射落として材料にする。
獲物を狩りに行く手間が省けた。
鶏肉と根菜が揃ったのでシチューを作る事にした。
魔物が現れるまで気長に待たなければいけないのでじっくり煮込む時間はあるだろう。
大鍋などのかさばる調理器具はいつもゼト様が荷物とまとめて運んでくれる。
荷物持ちをさせるなど申し訳なかったが、旨い飯が食えるなら喜んで運ぶと言ってくれた。
大鍋は防御特性と耐久特性を附加してあり、盾としても使える優れものだ。
実際ゼト様が盾として使う時もある。
ちなみに温度をあげる魔法で調理時間を短縮できないかと思って、友達に手伝ってもらって実験したことがある。
結果は、確かに短時間で十分素材に火が通ったのだが、風味が飛んでしまって素材の味がしない料理になってしまった。
料理は魔法で作るより、ちゃんと手間と時間をかけて作った方がおいしくなるのだ。
「出来上がるまで時間がありますので、皆さん休んでてください」
「では俺達は少し離れた場所で待機している」
「どうしてですか?ジオ様」
「ここに魔物が現れたら困るだろう?」
「わかりました。準備が出来たら呼びに行きますね」
魔物は人数が多い場所を目指す習性があるのだ。
みんなとお話しできないのはさみしいけど、料理ができるまでのんびり待つことにした。
男性陣の方を見ると、4人で楽しそうに話しているの見えた。
ルイさんが赤くなっているところを見ると大人3人でからかってるんだろうな?
(いいなぁ楽しそうで)
私がいたら出来ない話でもしてるんだろうか?
(やっぱり女性がいないとエッチな話とかで盛り上がるのかな?)
ジオ様もわずかだけどずっと微笑んでいる。
ジオ様が他の人との会話でも楽しめるようになったのを見て、ちょっと嬉しい気分になった。
すると突然みんなの様子が変わった。
周囲にはまだ魔物の気配はない。
私は鍋の火を消してみんなの方へ走った。