6話 勇者の弟子と魔法剣士
平原を移動し始めて2日目に、中級の魔物と遭遇した。
巨大な蜥蜴のような形をした中級の魔物だ。
体の表面が全体的にねっとりした透明なものに覆われている。
「ここは僕一人に任せてもらって良いですか?」
ルイさんが名乗りをあげた。
「わかった。危なくなったら手を貸す」
「ありがとうございます」
「気を付けて下さいね」
「ありがとう、ララ」
ルイさんは魔物の少し手前まで行くと魔法陣を地面に描き始める。
『粘蜥蜴』がゆっくりこちらに近づいてきたがまだ距離がある。
地面の魔法陣が描きあがると魔力を注入して励起状態にした。
次に正面に『ファイヤーアロー』の魔法陣を描き始めた。
こちらはすぐに魔力を注入してすぐに発動した
「『ファイヤーアロー!』」
炎の矢は『粘蜥蜴』の頭に命中し、頭の粘液が蒸発した。
『粘蜥蜴』はルイさんの方に向かって駆け出した。
ルイさんは剣を構え、『粘蜥蜴』に切りかかる。
『粘蜥蜴』は顎と前足で攻撃を仕掛けてくるが、ルイさんは巧みに攻撃を躱し表面の粘液を切り飛ばす。
普通の剣であれば、粘液に絡まって抜けなくなるところだが『附加装備』の剣は切断力が強化されているので粘液さえも切り裂く。
しかし本体まで刃が届かないのでダメージにはならない。
切り飛ばした粘液はすぐに復活してしまう。
ルイさんは『粘蜥蜴』を巧みに操って、魔法陣の方に誘導した。
『粘蜥蜴』が魔法陣に差し掛かったところで、ルイさんは後方に大きく跳躍し呪文を唱えた。
「『ファイヤーエクスプロージョン!』」
『粘蜥蜴』は地面から沸き上がった炎の奔流に飲み込まれ、もがき苦しんでいる。
やがて炎が消えた時には、全身の粘液が焼失し表皮も焼きただれて動かなくなっていた。
しかしまだ倒せたわけではない。
ルイさんは焼けただれて動かなくなった『粘蜥蜴』の首を剣で付け根から切り落とした。
切り落とした首の断面には魔結晶が光っている。
ルイさんはそれを更に切り落とした。
魔結晶を失った『粘蜥蜴』の体は蒸気を吹き出しながら消滅し始めた。
「お待たせしました。討伐完了です」
「すごいです!ルイさん!こんな戦い方があるなんて!」
私は初めて見る戦い方に感動していた。
「いやいや、皆さんならもっとあっさり倒せたんでしょうが、僕の場合段取りを踏まないと一人では倒せませんでした」
「一人で倒しただけでも大したものだ」
「一人でっていうか一人二役だったよね?さすが魔法剣士だ。でも大変だったでしょう?」
そうなのだ。通常は剣士と魔術師のパーティーで行う段取りを一人でこなしていたのだ。
(私も魔法が使えたらあんな戦い方もできたんだな)