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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第6章 勇者と王子
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5話 勇者の弟子とおもてなし

 私たちは平原をゆっくり移動している。


 以前の討伐で、魔物と行き違いになった事があったからだ。


 魔物の特性で、人間の気配を感じるとそれを目指して進行する習性がある。

 近くに人間の多い村や町があるとその方向を目指し、なければ少人数でも人間のいる方に行く。


 この平原には町や村は無いはずなので、自分たちが近づけば向こうからやってくるはずだ。


 セナ様が広範囲索敵魔法を展開しているので、範囲内に魔物が入れば発見できる。




 移動しながら私は獲物を見つけては弓矢で射止めて、食材の確保をしていた。


「ララは弓矢の腕前も一流だね」


 ルイさんが話しかけてきた。


「弓術は『中級弓士』ですので。今度上級の認定試験を受ける予定です」 

「いや、すでに上級の腕前じゃないかな?認定試験は楽勝だと思うよ」

「ありがとうございます」


「ところでその獲物はどうするんだい?」

「もちろん食べますよ? 今日の私たちの昼食です」

「ララちゃんの料理は絶品だよ!もはや宮廷料理人にも引けをとらないんじゃないかな?」

「そうなんだ!それは楽しみだね」

「ははは、セナさんさすがに話盛りすぎです。ルイさんのお口に合うかどうかわかりませんが?」


 私は途中で果物や野草、薬草なども採取する。




 昼時になったので私は昼食の支度を始める。


 ジオ様は周囲を警戒し、ゼト様とセナ様は昼寝をしている。


 ルイさんは物珍しそうに料理をする私を見ていた。


「ほんとに手際が良いね?」

「料理は大好きなので小さいころからやってたんです」


 私は短剣で獲物の鳥を捌いていく。


 お父さんの形見の短剣はすっかり野営の時の包丁代わりになってしまった。

 なまじ普通の包丁より切れ味が良いので作業がはかどるのだ。

(飾っておくより使った方がお父さんも喜ぶよね?)

 

「あれ?その短剣?」

「これが何か?」

「その柄の部分の紋様、どこかで見た気がするんだけど・・・それって『遺跡装備』だよね?」

「えっ?そうなんですか?『遺跡装備』って古代遺跡から発掘された『附加装備』みたいなものですよね?」

「どちらかというと逆かな?『遺跡装備』を再現しようとして作られたのが『附加装備』だ」


 私は短剣をまじまじと見た。


 物心ついた時からあったのでそういう物だと思ってあまり意識してこなかったが、確かに現在の剣や装飾品と比べると何か雰囲気が違う。


「ちょっと見せてもらって良いかな?」

「はい、少しなら」


 私は短剣の血をぬぐってルイさんに渡した。


 ルイさんは短剣を見て考え込んでいる。


「だめだ、やっぱり思い出せない。でも『遺跡装備』である事は間違いなさそうだね。この短剣はどうしたの?」

「それはお父さんが持っていたんです。形見です」

「そうか?・・・『遺跡装備』は特性が封印されている場合があるから一度調べてみるといいかもしれないね」


 ルイさんは短剣を私に返した。 


「そうですね、今度ギムさんに相談してみます」


 短剣を受け取った私は料理を続けた。




「みなさん!食事の用意が出来ましたよ」


 テーブルが無いので地面に布を広げてキャンプ用の簡易皿を並べただけだが、今日はルイさんのために少し品数を多くしてみた。


「へぇ!これは豪華だね?盛り付けもとてもきれいだ!」

「はい!いつもより少し品数を増やしてみました。盛り付けもちょっと凝ってみました」


 調理士講座に入って良かったのが、料理の盛り付けのテクニックを学べた事だ。

 宮廷料理人を目指す生徒もいるので、高級レストランや宮廷料理の盛り付けの指導も受けられるのだ。


 王族の方に食べて頂く料理があまり雑な見た目だとアレなので、ちょっと高級感のある盛り付けにしてみた。


「味の方も期待ていいと思うよ!早く食べようよ」


 セナ様がおなかをすかして急かしてきた。


「「「「「いただきます!」」」」」


「ほんとだ!これはおいしい!」

「ありがとうございます!ルイさん」

「これならすぐにでも宮廷料理人として採用できると思うよ」

「あはは!『上級調理士』の試験に受かったらですね?」


「おやっ?ララちゃん、このソースアートの模様って魔法陣だよね?」

「セナ様、わかりました? 宮廷料理の飾りつけを私なりにアレンジしてみたんです」


「すごいね君は?芸術家の才能もあるんじゃないのかい?」


「ララは何でも一生懸命やるからな、自慢の弟子だ!」


 ジオ様が優しい笑顔で私を見て、頭にぽんっと手を乗せた。


「ジオ様・・・」


 私はちょっと赤くなってジオ様を見つめた。



 ルイさんは微笑ましそうな顔でそんな私たちを眺めていた。


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