3話 勇者の弟子と王子様
「ひさしぶりですね、『剣精様』」
この国の第1王子ルイ殿下と再会した。
「殿下におきましてはご機嫌麗しゅう・・・」
「そんな堅苦しい挨拶はいいよ、ララ嬢」
「恐れ入ります」
「だからいいって。今回は王子ではなく同じパーティーの仲間として接して欲しいんだ」
「そうは申しましても・・・」
「ララちゃん、殿下が望んでるんだからそれでいいんじゃないかな?」
セナ様が助言してくれた
「遠征の間は僕の事は『殿下』ではなく『ルイ』と呼んで欲しいな?」
「わかりました。ルイ・・・さん」
「よろしくね!ララ」
「こっ!こちらこそよろしくお願いします!」
(いきなり呼び捨て!って向こうは王子様だからおかしくはないのか?)
「あの・・・ルイさん、先日の試験の試合・・・知らなかった事とはいえ、勝ってしまってすみません!」
そうなのだ。上級剣士の認定試験の対戦相手は審査委員会がコーディネートするので、試験当日まで、相手がだれかわからないのだ。
しかも試験開始前に誰も教えてくれなかったので、ルイさんが王子だと私が知ったのは勝利した後だった。
当然知っていると思ってあえて誰も言わなかったそうだ。
お王子相手でも全く物怖じしない試合っぷりが好印象で、試合後試験官たちに賞賛された。
このへんの世情に疎い私のせいだった。
「ははは、おかしな事を言うね。僕の方が弱いから負けた。ただそれだけの事だよ」
「ルイさんは弱くはなかったです!」
「試合自体は僅差だったかもしれないけど、ララは『身体強化』を使っていなかったからね。『身体強化』を使っても勝てなかった僕の完敗だ」
「それから君に興味が湧いてね。悪いけど調べさせてもらった。まさか勇者の後継者だったとは思わなかったよ。僕が勝てないわけだ」
「その上でその美貌だ。僕の知る限り貴族の令嬢や他国の王女でも君より美し人はいないよ。僕の妃にしたいくらいだ」
「でっ!殿下!そんなお戯れを!」
(殿下ってば突然何言いだすんだ!)
「ルイ殿下、これから命がけの戦闘になります。そのような浮ついたお気持ちでは困ります」
ジオ様が殿下を注意した。ほんのちょっと機嫌悪そうに見えるが、これって実はかなり怒ってる。
「勇者殿!これは申し訳ない。冗談が過ぎました」
(ほんとにびっくりした! 殿下の冗談、心臓に悪いよ!)
「それにしても二人が並んでるとまるで兄妹みたいだよね!」
「おう、俺もそう思ってたぜ」
「セナ様、ゼト様、そう見えますか?」
ルイ殿下と私は同じ金髪碧眼、しかも色味もかなり近い。
そして二人とも顔が整っているので必然的に印象が似てしまう。
「実は僕もそう思っていた。僕というよりは妹のアンによく似ている」
ルイ殿下の妹のアン殿下は私の2歳下の12歳だ。
「この国では割とポピュラーな色だからね。もしかしたら遠い親戚かもしれないよ」
(親戚だとしたらきっとお父さんの方だよね?)
そういえばお父さんの素性については何も聞かされていなかった。
お母さんに至っては素性どころか容姿すらわからない。
「アンも君の大ファンでね、今度会いたいと言っていたよ」
「はい、機会があればぜひ」
(私にそっくりな王女様か、お会いするのが楽しみだな)




