1話 勇者の弟子と上級剣士
学院生活は2年目の後半に入った。
教室に入るとエルとリィナ、そしてレンが話しかけてきた。
「ララ!やったね!ついに上級剣士だね」
「おめでとう!ララ」
「ありがとう! エル!リィナ!」
「さすがだね、ララ。おめでとう」
「レンもありがとう」
「ふっふっふっ! あたしの予想通りになったわね?」
エルが不敵な笑いを浮かべてる。
「ララなら必ずやると思ったのよ!」
「何でエルがどやっとするのよ?」
私は上級剣士認定試験に合格し、はれて『上級剣士』となった。
私が『上級剣士』となって、この国の『上級剣士』は現在、私を含めて37名となった。
私の肩書は『上級剣士37位』となるそうだ。
順位は剣術大会の成績で入れ替わる。
そして『上級剣士』には『第7階位』の貴族の位が与えられる。
私は『勇者の後継者』となった時点ですでに『第7階位』を賜っていたが今までは公にできなかった。
今回は公式に『上級剣士』となったので、私が『第7階位』の貴族になった事が一般に公表された。
上級剣士の認定試験は、現役の上級剣士と試合を行い、2人からそれぞれ一勝すれば合格となる。
上級剣士は人数も少なく、皆が多忙なため試合の予定も立てにくい。
その上で更に勝利を得るのは生半可な事ではないので、合格までには時間がかかる。
そして合格できないまま次の剣術大会を迎え、そこで上位に入らないと受験資格を喪失する。
そのため受験資格を得ても認定試験に合格する者は少ない。
新たな上級剣士が誕生するのは年に一人といったところだ。
私は学院の公式記録では学院史上最年少の上級剣士合格者だそうだ。
もちろん合格祝いにはジオ様にデートしてもらった!
学院の講座は新たに魔技術と医術の講座に参加する事にした。
魔技術は魔道具や附加装備を製作する仕事につくために必要な学問だ。
ギムさんと附加装備の改良の話をしている内に興味が出て勉強を始めた。
医術は習得した薬学の知識をより有効に利用するために、受講する事にした。
人体の仕組みや病気についての知識を深く勉強し、より効果的な薬の調合を研究したり、治癒魔法を習得するための知識を学ぶ講座にもなっている。
治癒魔法の魔法陣を習得しておけば、私自身が魔法を使えなくても、魔法士と一緒の時に治癒魔法が使えるようになる。
治癒魔法陣は構成が複雑なため治癒魔法を使える魔法士が少ないからだ。
魔法士実習の一件以降、レンとも教室でよく話すようになった。
最初は私とレンが親しく話していると他の男子が文句を言いに来た。
するとレンは
「僕は他に付き合ってる子がいるから気にしないで」
と、さらっと言ったのだ。
「えっ!レン彼女いたの?」
驚いた私はレンに尋ねた。
「いたのって、ルナだけど・・・あれっ?ララ気が付いてなかったの?」
「気が付かないよ!だって、レンとルナ普通に話してたじゃない?」
「うん、付き合ってるから普通に話もするよ。僕らは別に付き合ってるの隠してもいないし」
「えぇー!全然わかんないよー」
(二人が親しいとは思ってたけど自然体すぎて)
「まぁ、ララのとこみたいに人前でイチャイチャしたりはしてないからね」
「ななななっ!何の話よ! イチャイチャとかしてないしっ!」
(レンってば秘密にしてって言ったのに、今のはきわどいよー!)
「へぇ、あれでしてないとでも?」
「そっ、それは・・・」
(二人の前で思いっきりジオ様と抱き合ってしまっていた・・・)
「それに討伐実習のグループ分け、なんで他の男子が納得したと思う?」
「そっ!そういえば・・・誰も不平を言ってなかった」
「あの時、誰がララと同じグループになるかで、男子の間で壮絶な争いが起きてね、結局ララと仲のいいルナとその彼氏の僕がグループになる事でようやく落ち着いたんだよ」
「そんな事があったんだ・・・」
「そうでなきゃ、関係のない僕がララとルナのグループに入ってたら、男子全員から袋叩きにあってるよ」
(確かに!ルナだってかなりの美少女だし、ルナ狙いの男子だって大勢いたはずだ)
「納得した?」
「・・・しました」
そんなやりとりがあったのだった。