11話 勇者の弟子と油断
『小鬼』はルナとレンに任せて、私は他の中級の魔物の対応に向かった。
『木馬』の後ろには熊のような魔物がいた。
頭の三つある『三頭熊』だ、
私は崖の上から飛び降り、気が付かれる前に頭の一つを切り落とす。
背中を蹴って反対側の崖へ跳び、法面を蹴って折り返す。
『三頭熊』は、ようやく私に気が付いたが、その時には反対側の頭も切り落としていた。
『三頭熊』は、頭が一つのただの『熊』になっていた。
もっとも大きさは通常の熊の二倍以上あるが。
「2回とも外した?」
『三頭熊』は三つの頭のどれか一つに魔結晶がある。
個体によって魔結晶のある頭の位置は異なるのだ。
「結局全部切るしかないか!」
私はふたたび反対側の崖の法面を蹴って折り返した。
さすがに今度は手を振りかざして私を叩き落とそうとしてきた。
体をひねってそれをかわし、腕を切り落とす。
その流れで続けて最後の首を切り落とした。
全ての首を失った『三頭熊』は活動を停止し、ゆっくりと倒れ始めた。
その向こうからは、鋭い爪が私めがけて迫ってきた。
『鱗猿』だ!
パキッキッキッキッキィィィィィィン!
私は『鱗猿』の右手の爪を5本まとめて叩き切った。
そのまま右腕を駆け上がり頭を切り飛ばす。
そして間髪入れずにレイピアを上段から振り下ろし胴体を中心から真っ二つにした。
『鱗猿』は左右に分かれて倒れていった。
「すげえ、ララのやつ、中級の魔物を次々と倒していく」
「わたしたちも負けてられないよ!だいぶ数が減ったから後はわたしに任せて、レンは城門に防御魔法をかけてきて!」
「わかった!気を付けろよ!ルナ!」
(二人には完全に見られてるよね?)
でも今はそんな事気にしてられない!
『鱗猿』の後ろには再び『三頭熊』がいた。
私は崖を使って三角跳びをして、『三頭熊』の頭の高さまで飛び上がり右の頭を切り飛ばした。
今度は一つめが正解だった。
『三頭熊』はゆっくりと倒れていった。
地形のおかげで中級の魔物が一体づつしか通れず、思うように動けない状態で、一方、私の方は左右の法面を利用して立体的に攻撃ができる好条件だ。
私は効率的に次々と中級の魔物を倒していった。
「『木馬』からだいぶ離れたわね?」
中級の魔物を倒しながら前に進んでいたため、後ろを振り返るとだいぶ距離が開いていた。
バッキィィィィィィン!!!
その時、枝の折れる大きな音と共に、谷間につかえていた『木馬』が、崖の間から抜け出してしまった。
少しづつ前進していた『木馬』が城門の前の少し開けた場所に出て自由になってしまったのだ。
「まずい!」
私は急いで城門の方に駆け出した。
しかし木馬もすでに城門に向かって走り出していた。
そして、城門手前で大きく跳躍した。
レンが城門に防御魔法をかけて強化していたが、城門の上空まではガードしていない。
私が追いつく前に、『木馬』は城門を飛び越えようとしていた。




