9話 勇者の弟子と救助活動
女性は山の向こうの村から逃げてきたという。
「村が魔物に襲われています。助けて下さい」
女性は助けを求めて馬で山を越えてきたが、途中で馬が力尽き、そこから山の中を走ってここまでたどり着いたらしい。
「魔物は何体ぐらいですか?」
「中級の魔物が3~4体はいました。村には簡素な城壁がありますが長くはもちません」
「私が行ってきます。みんなは戻ってこの事をミト先生と騎士団に伝えて下さい」
「中級の魔物相手にララ一人でどうするのよ?」
「様子を見てくるだけだよ。危なくなったら逃げるから」
「ララは逃げるなんてできないよね? 襲われてる人がいたら」
「とにかく、一刻を争うから行くよ!」
「あ!待ってよ!ララ! えっ!もう見えない!?」
私は、女の人が教えてくれた方角に走りだした。
(中級の魔物4体程度なら一人で何とかなる)
今回は偽装した『附加装備』を付けている。
よほどの事が無ければ対処可能だ。
それよりも人命の方が大事だ。
附加装備のブーツの最大加速で森の中を駆け抜ける。
今の私は馬の速度よりもはるかに速い。
女の人が来た時間より速く着けるはずだ。
山の中を30分ぐらい走り、峠を越えて下りに入ると谷あいの村が見えてきた。
村の入り口では谷に作られた城門のところに魔物が集まっていた。
よく見るとまさに城門が破壊されるところだ。
「急がなきゃ!」
私は城門に向かって谷を一気に駆け下りた。
谷間の道は狭く、中級の魔物は一列に並んでひしめき合っていた。
先頭は『山羊頭』だ。
「『山羊頭』の魔結晶はうなじね!」
私は谷を駆け下りながら、弓矢を構える。
矢は破壊力強化型の対魔物用の矢だ。
ヒュン!
『山羊頭』の上からうなじを狙って矢を放つ。
矢はうなじに命中し、山羊頭のうなじは粉砕して魔結晶があらわになった。
「よし!命中!」
私はそのまま山羊頭の背中に飛び降りつつ、レイピアを抜いて『山羊頭』の魔結晶を切り落とした。
ズゥゥゥゥゥゥゥン!!!
魔結晶を失った山羊頭は轟音を立てて地面に倒れた。
「どうした!何が起きたんだ!」
城門を守っていた自警団の人たちが混乱している。
「応援に来ました!私が時間を稼ぎますから、今のうちに城門を補強して下さい!」
「応援ってお嬢ちゃん一人かい?」
「女の子が一人で中級を倒したってのか?そんな馬鹿な?なにものなんだあの子は?」
「いや、もしかして例の勇者パーティーの女剣士じゃないのか?」
「ばかいえ!噂の剣士は巨乳のエルフって話だぞ!」
「ああ、確かにそうだな、人違いか?」
「ああ!もぅ!そんな事はどうでもいいですから!早く城門をお願いします!」
(レィア様!噂がおかしな事になってるんですけど!)