7話 勇者の弟子と岩猪
魔物を探して森の中を進んでいると何かが動く気配がした。
「魔物がいるよ!向こうの茂み!」
私はみんなに声をかけた。
「ありがとう!ララ!」
ルナがレンに指示をする
「レン、防御魔法お願い!わたしは攻撃魔法を準備する!」
「わかった」
ルナは攻撃魔法の魔法陣を描き始めた。
同時にレンも防御障壁の魔法陣を描き始める。
防御系の魔法陣は攻撃系よりシンプルなのでそれほど時間はかからない。
「『シールド!』」
自分たちを中心に障壁を作る。
魔法士は魔法陣を描いている間、その場所から動けなくなるので先に防御障壁を作っておくのがセオリーだ。
「ララ君!俺達で魔物をおびき出すぞ!」
「はい!」
教官と私は囮となって魔物をルナの射程内におびき出す。
ルナはその間に攻撃魔法の魔法陣を描いている。
これが剣士と魔法士のパーティーの基本的な戦い方だ。
私が茂みをレイピアで切り裂くと中から魔物が飛び出してきた!
下級の魔物『岩猪』だ。
猪に似ているが、全身が岩のような硬い殻で覆われている。
『岩猪』は私を目標にして追いかけてきた。
反射的に倒してしまいそうになるのをこらえて逃げまわる。
(倒した方が楽なんだけどルナたちの経験にならないからな)
『岩猪』の殻は硬くて普通の剣では弾かれてしまうが、私のレイピアは『切断強化』が附加されているので硬い殻でも容易に切り裂く事ができる。
「ララ!いいよ!」
ルナの方も見ると魔法陣が描きあがっている!
私は追ってくる『岩猪』を教官の方に誘導する。
「お願いします!」
「ああ、まかせろ!」
私が教官の脇をすり抜けると、教官は『岩猪』を盾で受け止めた。
身体強化を使っているので、びくともしない。
「『アクアスラッシュ!』」
ルナの魔法が発動した。
水を刃のようにして飛ばす中級魔法だ。
『岩猪』は首が切断されて、ぼとりと地面に落ちた。
「お見事!討伐完了だな」
『岩猪』の魔結晶は頭部にあるので首を切断すれば再生しなくなる。
「ルナ!すごいね。見事なコントロール」
スラッシュ系の攻撃魔法は発射後に術者がある程度軌道をコントロールできる。
「ララのおかげだよ!丁度いいタイミングで誘導してくれて」
「やったな!ルナ!いつの間に魔法陣の描画そんなに速くなったんだよ?」
「ありがと!レン!ララを目標にずっと練習してたんだ!」
「さすがルナだな」
「それにしても・・・」
私は『岩猪』の亡骸を見ながらつぶやいた。
「普通の猪だったらおいしい料理が作れたのになぁ・・・」