2話 勇者の弟子と幼なじみ
「ひさしぶりね、ララ」
「もしかしてルナ?」
「あら?ララさんとルナさんはお知り合いだったんですか?」
「ええ、同じ町の出身です。そういえばルナは中級魔法士になるために学院に行くって言ってたもんね」
ルナは私が住んでいた町の領主の娘で、ヘーゼルの髪に薄紫の瞳の美少女だ。
同じ学校に通っていたがルナはいつも取り巻きに囲まれていたのであまり話す機会が無かった。
講座の後の休み時間にルナが話しかけてきた。
「ララはすっかり雲の上の人になってしまったからなかなか話しかけるきっかけが無くて、同じ講座になってよかったわ」
「そんな事ないよ、町の学校ではルナの方が雲の上の人だったし」
私は慌てて否定した。
「ふふっ、中身は変わってなさそうで安心したわ。今更だけど改めてお礼を言わせて」
「何の話?」
「町の人たちを助けてくれてありがとう」
「ええっ!あの町を助けてくれたのは勇者様だよ。私は何もできなかったし私も勇者様に助けてもらわなかったら死んでたよ」
「後処理に来た騎士団の人たちとお父様が話しているのを聞いたのよ。勇者様が魔物を倒すまでの間、ララが魔物を引き付けて町の人たちから魔物を遠ざけてくれたおかげで、被害が少なくて済んだって」
「あの時は町の人たちを守らなきゃって、それだけを考えてて夢中で」
「ふふっ、ララって昔から何でも夢中になってたよね。それともう一つあるんだ」
「他にもあるの?」
「ララは学校の魔法の授業の時にずっと魔法陣描いてたじゃない」
「うん、魔法が使えなかったから他にやる事ないし、魔法陣を描くのが楽しかったから」
「ララの魔法陣、上手だなぁっていつも感心して見てたんだよ。学校の教本の魔法陣って本が古くてところどころかすれてわかりにくかったんだけど、ララが描いた魔法陣はきれいに清書されてたから、ララの魔法陣をお手本にして練習してたんだよ」
「ええ!そうだったの?私の魔法陣なんかお手本にして大丈夫だった?」
「うん、ちゃんと魔法が発動したよ。おかげでこの講座でトップの成績が取れたし、入学して1年で『中級魔法士』の認定試験にも合格できたんだ。だからララはわたしにとって魔法陣の先生だったんだよ」
「そうだったんだ!恥ずかしい」
「ふふふっ、あらためまして、ありがとうございました。ララ先生」
「もう!やめてよぉ」
「だからララがこの講座に講師で来てくれて本当にうれしいよ」
「私なんか役に立てるかな?」
「うん!ララに相談したい事がいっぱいあったんだ」
ルナは本当にうれしそうに微笑んだ。