12話 勇者の弟子と中級決勝
ダイさん思った以上に強敵だ。
『身体強化』を『倍増型』的な使い方でかなり使いこなしている。
ゼトさんが言っていた。『身体強化』は基本『加算型』だが訓練次第で『倍増型』的な事もできる。
ダイさんはそのタイプだ。軽そうに見えるけど、私と同じで徹底的に鍛錬してるに違いない。
(きっと鍛錬も楽しくてしょうがないって感じなんだろうな)
『身体強化』を使っても動作が単調にならず、力も速さも技の切れも一緒に向上する。
(・・・だとしたら方針は単純だ!)
相手がジオ様だと思って挑めばいい!
「行きます!」
キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!
「あはは!すごいよ!これだよこれ!」
私の猛攻をダイさんは全てはじき返した。
毎日ジオ様とやってる特訓は、私が全力で攻撃し、ジオ様は私の少し上のレベルにコントロールして対応してくれている。
ジオ様相手なら手加減の必要が無い。
相手に怪我させるとか、殺してしまうとか余計な雑念を持たずに、自分の持てるあらゆる技と手段で攻撃を仕掛けることができる。
勇者様との打ち合いはとはそういう事だ。
「じゃあ今度はこっちから行くよ」
キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!
ダイさんの攻撃をカウンターで返し、ダイさんがさらにそれを返す。それがひたすら繰り返される。
「へぇー!君はやっぱり防御からのカウンターの方が更に技の切れがいいね!」
防御の訓練も同様だ。
ジオ様は私が対応できるレベルの少し上ぐらいで攻撃を仕掛け、私がそれを捌く訓練をしている。
今ので分かった。
『身体強化』したダイさんのレベルは、いつものジオ様との訓練とほぼ同じ、私のほんの少し上ぐらいのレベルだ。
・・・つまり私がこの試合で勝つためには・・・
「行きます!」
キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!
(試合中にその差をくつがえすだけ成長すればいい!)
キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!
「あはは!すごいよ君!技の切れがどんどん良くなっていくよ!」
キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!
「これは僕も負けてられないね!」
キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!
ダイさんも技の切れが向上してる!
私と同じだ! 実戦の最中に成長していくタイプだ!
これはもうどちらの成長速度が速いかで勝負が決まる。
キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!
「なんだこの試合、速すぎてもう何も見えないぞ」
「剣戟だけが響いてくるがそれだけで熾烈な戦いだってわかる」
「上級上位の試合がこんな感じだよな?」
キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!
「あはは! こんな楽しい試合は久しぶりだよ!」
キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!
(私は毎日ジオ様と楽しくやってるけどね!)
二人とも更に剣速が増してきた。
キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!
「そろそろ決めに行くよ!」
「望むところです!」
キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン! キィィィィィィィィィィン!
一本の剣が回転しながら天高く舞い上がった。
「どっちだ!」
「剣が回転してて見えん」
「ロングソードか?ミドルソードか?」
ザクッ!
ロングソードが地面に突き刺さった。
ダイさんは大の字であおむけになって倒れている。
私は今にも倒れそうなギリギリの状態でミドルソードを持ってかろうじて立っていた。
「中級部門決勝戦! 勝負あり! 勝者ララ!」
「「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」」」」」」
会場から大歓声が上がった。
「チクショー! あと一歩だったのに! さすがに魔力が続かなかったー」
「私もあと少しで体力の限界でした」
「でも楽しかったなぁ! 次は負けないよ!」
「はい!私も負けません!」
「あははははは!」
その後、上級部門は前回同様ゼト様が優勝、レィア様が準優勝だった。
悔し泣きしてたレィア様を前におろおろしてたゼト様が面白かった。
「優勝おめでとう。よくやったなララ」
「はい!ジオ様のおかげです!」
「いや、ララの実力だ」
「毎日のジオ様との訓練がなかったら勝てませんでした」
「それでも今日がんばったのはララだ」
ジオ様はいつものように頭に手をぽんぽんとのせた。
「ところでジオ様?」
「ん、なんだ?」
「中級優勝のご褒美をおねだりしてもいいですか?」
「構わないぞ」
「じゃあ、また、一緒にお出かけしてもらって良いですか?」
「ああ、いいぞ」
(やったー2回目のデートだぁ!)
第4章完結です。明日から第5章スタートします。
 




