5話 勇者の弟子と剣術大会
年に2回開催される王国主催の剣術大会は、剣士の昇級を判断するための大会でもある。
大会は4つの部門に分かれて各部門の剣士の中で最強の剣士を決める
部門は、上級剣士部門、中級剣士部門、下級剣士部門、一般部門
私は前回の大会で一般部門で優勝し、下級剣士認定試験にも合格して下級剣士になった。
今回は下級剣士部門に出場する予定だったのだが、直前に特例として中級剣士に昇格してしまったので、急遽中級剣士部門で出場する事になってしまった。
「嬢ちゃんを特例で昇級させたのはこの大会のためってのもあったんだ」
闘技場の控室でゼト様が説明してくれた。
「大会のため?ですか?」
「ああ、この前の実習で嬢ちゃんの腕前が中級剣士以上ってのが実証されちまった。嬢ちゃんが下級剣士部門で出場したら優勝して当たり前って誰もが思ってる」
「そうでしょうか?最後は皆さんに助けてもらいましたし」
「あの場にいた教官たちは下級剣士の上位者か中級剣士だ。彼ら全員が思ったそうだ。嬢ちゃんの実力は自分らより上で中級剣士部門でも優勝が狙えるんじゃねえかってな」
「いくら何でも買いかぶりすぎですよ。『身体強化』が使えない私が中級部門で優勝なんて」
「はっはっはっ!それも含めていい勝負になるんじゃねえかって俺も期待してんだ!何せ『身体強化』無しで戦ったら上級剣士1位のこの俺が互角だったんだ。嬢ちゃんが『身体強化』使ったら剣豪にだってなれちまう」
「とにかく、嬢ちゃんが中級部門で出場しないと大会が盛り上がらねえんだよ。今回の大会の目玉なんだからよぉ」
「はぁ、出るからにはやれるところまでは頑張りますが・・・」
「ララ、期待してるぞ」
ジオ様が優しく微笑んで声をかけてくれた!
先日のデート以降、ジオ様との関係が少し進展した気がする。
私に対する態度に以前よりも感情が入っているのを感じる。
「ジオ様!私、頑張ります!中級で優勝して見せます!」
「・・・現金だな、嬢ちゃん」
「上級剣士部門ではゼト様とレィア様も出場するんですよね?」
「もちろん出場するぜ!」
「団長、今度こそあなたを倒します」
レィア様がゼト様に宣戦布告した。
「おぅ!返り討ちにしてくれる!」
ゼト様とレィア様は上級剣士部門で前回優勝と準優勝だ。ここ数年の大会はずっと同じ順位だそうだ。
「団長を負かしたらわたくしの言う事をなんでも聞くという約束、忘れてませんよね?」
「ああ、何でも聞いてやるぜ!」
「レィア様、勝ったらゼト様に何をお願いするんですか?」
ちょっと気になったので聞いてみた。
「それは・・・秘密です」
いつもはっきり物を言うレィア様にしては歯切れが悪い。
「ジオ様は出場できなくて残念です」
「俺が出場すると大会が成立しなくなる」
「おぅ、さすがにジオが本気出したら俺でもどうしようもねぇ」
「それに勇者の正体は公開していないから公式な試合に出場資格がない」
「ジオ様のカッコいい所みんなにも見せて自慢したかったのにな」
「また今度討伐に行ったらララは見られるだろう?」
「そうですね、私だけの特権って事で!」
「ああ、ララが見ていてくれるだけで俺は十分だ」
私は顔から火が出た!
(ジオ様の攻撃力が前よりもパワーアップしてる!?)




