1話 勇者の弟子と中級剣士
「今日の料理もおいしかった」
ジオ様は夕食を食べ終えて満足げに言った。
「ありがとうございます!」
「ララの料理は回を追うごとに旨くなるな」
「えへへ、これからも頑張ります」
学院に入学してからもうすぐ1年になる。
あれから何回か勇者のパーティーの一員として魔物の討伐に行った。
上級の魔物はあれ以来、出現していないが、中級の魔物の集団発生には数回遭遇した。
『附加装備』の扱いもだいぶ慣れてきて、装備を付けていれば中級の魔物は一人でも余裕で倒せるようになっていた。
あれからは体形と顔がわからない様にフード付きのマントを羽織って討伐に参加している。
騎士団の情報規制も徹底したので変な噂が立つ事も少なくなってきた。
一度変装のために胸に大きめのパッドを入れてレィア様ぐらいのボリュームにしてみたら、ジオ様に思いっきり変な顔で「やめろ」と言われた。
ジオ様の変顔が見れて新鮮だったけど、ジオ様もしかして小さい胸の方が好みなのかな!?
討伐では弓矢を活用している。
むしろ下級の魔物はほどんど弓矢で倒すスタイルだ。
ギムさんに相談して、貫通力よりも破壊力を重視した矢を作ってもらったので、小鬼なんかは遠距離から一撃で粉砕できるようになった。
見た目はかなりグロいが・・・
ついでにギムさんが折りたたみ式の携帯用の弓も作ってくれた。
もちろんこれも最高性能の『附加装備』だった。
代金を支払おうとしたら、国から出るからいいと断られてしまった。
森の中で弓矢とレイピアで戦うスタイルのせいで、勇者パーティーの女性メンバ-は『エルフ』っていう説がかなり定着しつつある。
学院の方でも弓術の認定試験に合格して『下級弓士』の資格を取得した。
これで狩猟ギルドへの登録もできて、狩りをする時の獲物の情報を入手したりなど色々優遇措置が受けられる。
弓術の講座はこれで終了となった。
薬学や調理士の方も単位はほとんど取得して後は認定試験を受けるだけになっている。
剣術はもうすぐ王国主催の剣術大会がある。今回は下級剣士部門で出場するので、上位に入って中級剣士になるため修行をつづけている。
・・・のだが、
「ララの中級剣士昇格が決まった」
「え? 中級の認定試験はまだ受けてませんよ?」
「以前の実習の討伐記録やその他の実績から、実力的に『下級剣士』では無く『中級剣士』である方がふさわしいという事になって、審査委員全員一致でララの『中級剣士』特例合格が承認された」
「そんなことできるんですね?」
「次の大会では中級剣士部門で出場する事になる」
「あれっ?そうなるのか?」
「大会前に中級剣士になるのだから当然だろう」
(いきなり中級の人たちと試合かぁ)
「それでだ、中級剣士になった祝いをしたいんだが、何かして欲しい事あるか?」
「して欲しい事? ですか?」
「今まで祝いというとなぜかお前が自分で料理を作っていたが、たまには違う事をしてもいいだろう?」
「うーん? 私はジオ様に料理を食べてもらうのが一番うれしいんだけど・・・わりと最近は毎日やってるし・・・・・はっ!」
(そうだ!これだ!)
「でっ! デっ! デートっ! いえっ! いっ! 一緒にお出かけしてもらって良いですかっ!?」
「お出かけ?」
「はい!今度のお休みの日に一緒に一日お買い物とか付き合ってもらって良いですか?」
「別に構わんが・・・そんな事でいいのか?」
「はいっ!それがいいんです!」
(やったぁ!ジオ様と初デートだぁ!)