4話 勇者様に告白
「お前を俺の弟子にする。いずれは勇者の力を継承して次の勇者になってもらう」
「・・・・・ はぁ?!」
何を言われたのか咄嗟に理解できなくて素っ頓狂な声をあげてしまった。
(私が勇者になるってどういう事?)
「・・・ あのー、私の夢は勇者になる事ではなくて、勇者のお嫁さんになる事なのですが?」
「俺は嫁をとる気はない」
「・・・」
あれ?なんだか告白して速攻で振られたような流れになってる。
直前まで舞い上がってた気持ちがみるみる冷めていった。
「いや、別にあなたのお嫁さんになりたいという意味じゃなくて・・・」
「当代の勇者は俺で次の勇者はお前だ」
なんか私が勇者になる事がすでに決定事項になってる?
「いきなりいわれても状況が良くわからないんですけど?・・・なんで私を勇者にしようと思ったんですか?・・・私、女ですけど?」
「過去にも女性の勇者はいた」
「魔物と戦ったのは今日が初めてなんですけど?」
「これから修行してもらう。実戦経験も積んでもらう」
「魔法が全く使えませんよ?」
「問題ない。勇者の力を継承すれば上級魔法以上の魔法が使えるようになる」
「「・・・・・」」
「身体強化が使えないようだが、それでも魔物と渡り合っていたな?」
今度は勇者様が問いかけてきた。
「身体強化無しで戦えるように訓練をしてましたので」
「そのようだな?抜群の戦闘センスを持っているようだが並大抵の訓練で身に着くものではない」
(物心ついたころからお父さんとずっと訓練をしてたからなぁ)
「魔物に恐怖は感じていたはずだが逃げ出さずに一人でも多くの住民を救おうとしていたな?」
「怖がっていても解決しませんから、大事な人たちをどうやって助けるか考えていました」
「人のために自分の恐怖心を克服して冷静に判断する事は容易ではない」
(私が必死に恐怖心を押さえつけてたの、わかってたんだ!)
「そして、あの絶望的な状況下で、お前は絶望していなかった。打開策が無いか思考を巡らせていたのだろう?」
(たしかに、あの時私はダメだと思いながらもまだ突破口を探してた)
「俺が見てきた中でお前以上に勇者にふさわしい人間はいない」
(・・・なんかだんだん嬉しくなってきた!)
初めて会ったのに私の事をちゃんと見て、正しく理解してくれてる。
認めてくれて、何気に褒めてくれてる。
ぶっきらぼうだけど悪い人ではないみたいだし、正直さっき助けてもらった時は少しときめいたし、顔はかなり好みだし?
よし!やっぱりこの人のお嫁さんを目指そう!
今は女性に興味なさそうだけど、まずは弟子になって懐に入ってそれから少しづつ気を引けばいい。
私もあと数年もすればそれなりに魅力的になるはず!自分で言うのもなんだけど一応町でも評判の美少女だし!
「わかりました。弟子になります」
「・・・急に素直になったな?どうした?」
「勇者の使命の重要性に気が付いたんです。自分にできるかどうかわかりませんが少しでも世界の役に立ちたいと思いました(棒読み)」
「・・・ちょと気持悪いが・・・まあいい」
「俺は一旦王都に戻るが準備が出来たらお前にも王都に来てもらう」
「お前ではなくて私の名前はララです」
「わかった。俺の名はジオだ」
「ところでお前は何歳だ?」
「ララです! 12歳です。今年町の学校を卒業します」
「そうか、ちょうどいいな。卒業後は王都の学院に通ってもらう。勇者には一般教養も必要になる」
「両親とも話がしたいのだが?」
「親は二人とも亡くなりました。今は一人暮らしです」
「・・・そうか、悪い事を聞いたな」
「いえ、大丈夫です」
「では、あとで使いをよこす」
そういって勇者ジオ様は去っていった。
(よしっ!夢に向かって一歩前進した!)