13話 勇者様と残り火
浴場に取り残された私とジオ様の間にしばらく無言の時間が流れた。
・・・あれ?・・・私、またシンと出来なかったよ。
あれだけ悩んだ末に決心したというのに、どうもうまくいかない。
タイミングが悪かったと言えばそれだけなんだけど・・・
なんだかシンとはそういう運命なのかなぁって思ってしまう。
いや、ジオ様という最高の旦那様がいて贅沢な話なんだけど・・・そのジオ様は現在、究極の美少女で男性の姿に戻れる目途が立っていないのだ。
そんなジオ様はさっきから心配そうな表情で私の事を見ている。
美少女にそんな顔で見られると、きゅんとしちゃうよ!
私は無意識にジオ様の唇に自分の唇を重ねていた。
この女子同士のキスもすっかり慣れてしまって、これが当たり前の様に感じている。
そして自然と体を摺り寄せ合っていく。
ジオ様とはこうして毎日女の子同士の体を重ねて愛し合っている。
これはこれで、私にとっては最高に幸せな時間ではあるのだ。
ジオ様の柔らかくて滑らかな感触は本当に気持ちいいのだ!
大河の国の女王に教えてもらった技も、まだまだジオ様に試していないものがたくさんあり、今後の楽しみでもあるのだ。
ただ、やはり、ふっと男性の体を恋しく感じてしまう時があるのだ。
それは過去に男性のジオ様と過ごした時間を懐かしく思い出してしまうからなのかも知れない。
・・・いや、きれいに美化して誤魔化そうとしてるけど、単に私がエッチが大好きって事なんだけどね!
だって、ジオ様とのエッチは本当に最高に気持ちよかったんだもん!仕方ないじゃない!
それって単に体の性感帯が刺激されたからってだけではなくて、本当に愛し合う相手と体がつながる事による幸福感とリンクしてるんだよね。
私には経験がないけれど、政略結婚で好きでもない相手と関係を持ったり、あるいは強姦された時って、絶対にあの幸福感が得られる事は有り得ないと思うんだよね。
あの、心と体がどちらも密接につながって、何かが二人の間をぐるぐると循環しているような、全ての喜びと快楽が同時に最高値に達したような感覚は、心の底から本気で愛している相手と行為に及んだ時でないと得られない最高の瞬間だと思うんだよ。
ジオ様と女性の体で愛し合うのもそれなりに幸せなひと時なんだけど、最後のあと一歩が足りなくて、ほんの少しだけ不完全燃焼感が残ってしまうのだ。
女の子同士っていうのにも何の抵抗もないし、それはそれで大好きなんだけど・・・
やっぱり私は男女のエッチが大好きな、淫乱な魔女なんだよ!
・・・無意味に心の中で力説してしまった。
「ララ・・・すまない、男の体に戻れなくて」
・・・そしてなぜか心の声がジオ様に伝わっていた。
口には出していなかったはずなんだけど・・・
「ジオ様のせいではないです。女の子のジオ様も大好きです!」
私はジオ様の唇を唇で塞ぎ、その魅力的な体をまさぐりまわす。
「ああん!」
ジオ様から思わずかわいらしい声が漏れる。
その声聞いた私は、ジオ様をもっと攻め上げたい衝動に駆られ、つい手の動きが激しくなっていく。
「あん!あん!あああんっ!」
ジオ様が更にかわいらしい声を上げる。
本当は私がこうしてシンに体を捧げるはずだったのにな・・・
・・・でも、ジオ様をこうして攻めるのも悪くはない。
ただ、女性の私ではどうしてもジオ様に女性の体の最高の喜びを与えるには至らないのだ。
・・・いや、待てよ?
「ララ、聞いてほしい事がある」
私がある事を思いついたと同時に、ジオ様が話し始めた。
「どうしました?ジオ様、あらたまって」
「ああ、どうしてもララに話しておきたいことがある・・・実はララが寝てしまった後、俺とシンは火照った体を持て余してしまってな」
私が二人を思いっきり刺激してたからね・・・
「最初は眠ってしまったララにキスをするなどして紛らわそうかとしていたんだが、かえって興奮度が増してしまったのだ。かといって、意識のないララにそれ以上の事をして起こしてしまっては忍びないという話になって・・・どちらともいわず目の前にいたシンと体を求め合ってしまったのだ」
えええっ!やっぱり私が寝ている間に二人はそんな関係に!
「シンと体を合わせると、まるでララとの時の様な快感が走ったのだ。そして、俺たちはその快楽に抗えなくなっていった」
えええええ!ほんとに二人はしちゃったって事?
「それで!どうなったんですか!」
なぜか話を聞いている私の方が無性に興奮してしまった。
「そうして体をすり合わせているうちに・・・シンのあの部分が、俺のあの部分に一瞬触れたのだ」
「それから!それからどうなったんです?」
つい私の興奮度も増していく。
「触れた瞬間、全身に何とも言えぬ快感が電撃の様に走ったのだ・・・そう、以前男の体の時に先端どうしが触れた時と同じ感覚だ・・・だが、少し違ったのは、今回俺は、自分の体の中にシンを受け入れたいという衝動にかられたのだ」
やっぱり、精神の女性化が進行してるんだ!
「じゃあ、最後まで行っちゃったんですか?」
「・・・いや、そこでやめる事にした。俺もシンも、さすがにそれ以上はララに申し訳ない気がしたのだ」
それを聞いた私は、残念だったような、ほっとしたような・・・なんだか複雑な心境になっていた。
ジオ様は真剣な顔でそんな私を見つめた。
「そこでララ、一つ提案があるのだが・・・」
ジオ様は、一旦躊躇してから話を続けた。
「もしララが嫌でなかったら・・・ララが魔法で男性の体になるというのはどうだろうか?」




