5話 勇者の弟子と装備職人
「じゃあ次はその『附加装備』を作った工房を案内するね」
セナ様に連れられて来たのは、たくさんの工房が並んでいる区画だった。
その中の一番大きな工房に入っていった。
「おお!よく来たな、『剣精様」」
「ララちゃん、この人がここの工房長のギム」
「ギムさん、はじめまして、ララです! よろしくお願いします!」
「おお!元気がいいな! ギムだ。『剣精様』の『附加装備』を作らせてもらった」
「そうなんですね!ありがとうございます!とても使いやすくて素晴らしい装備です!」
「こっちこそ、普段使えない高価な材料をふんだんに使わせてもらえて、ひさしぶりにいい仕事させてもらったよ」
(ははは、やっぱりお金かかってるんだ)
「サイズもぴったりで、とても着心地が良いです」
「サイズに関しては、おたくのメイドのシーラちゃんだったかな?ちょくちょくここに来ては細かくチェックして指示してくれたよ。デザインについても、お嬢ちゃんの魅力を引き出すためには、ここのラインはこうした方がいいとか、ここの色はこうとか細かく指導が入ってな、しまいにゃ自分でデザイン画描き始めたよ」
「ははは、シーラさんそんなことやってたんですね」
「まぁ、座ってゆっくり茶でも飲んでいってくれ」
「はい、遠慮なくいただきます」
お弟子さんが持って来てくれた紅茶を口にした。
「わぁ!おいしい紅茶ですね、カップもかわいくておしゃれです!」
「ところでお嬢ちゃん、装備を使ってて何か不都合は無かったかい?」
「いえ、性能が良すぎて全く不満はないです」
「ほう?力加減を誤ったり速度が出すぎて何かに激突したりしなかったのかい?」
「ええと『倍増型』でしたっけ?そのおかげで普段と同じようにできたので最初は自分の能力が上がってるって気が付かないくらい自然でしたけど?」
「あっはっはっ! そりゃすげえな!」
ギムさんは豪快に笑い始めた。
「『倍増型』の能力附加は『加算型』と違って繊細な制御が可能だが、可能ってだけで誰でもできるって意味じゃねえ!」
「考えてもみろ、単純に力がいつもの何倍にもなるんだ、同じように持ったらそのティーカップなんか割れちまうだろ?お嬢ちゃんはそれに合わせて普段より更に繊細な制御が無意識に出来てるって事だ。『倍増型』の『附加装備』を装着したままで、普通に茶を飲んでる奴なんて、お嬢ちゃんと勇者様ぐらいしか見た事がねえよ」
隣を見たらジオ様も自然にお茶を飲んでいた。
ジオ様の場合は『勇者の能力』×『附加装備』で更にすごい事になっているのでは?
「ああ!すみません!お茶を頂く前に装備を外しておくべきでした!」
「そこじゃねえよ!」
「そんだけ高性能な装備は作っても使いこなせる奴がいねえから、今まで勇者様ぐらいしか需要が無かったんだ。今回は半信半疑で作ってみたがここまで使いこなしてくれるたぁ、職人冥利に尽きるってもんだ」
「ララは魔法や身体強化が使えない分、人よりも鍛錬を続けていたからな。その成果が出たという事だ」
ジオ様が頭をぽんぽんとしてくれた。
「えへへ、そういってもらえると嬉しいです!」
「その装備の能力は装備者の能力に比例する。お嬢ちゃんが鍛錬を重ねればもっともっと強くなるぜ!」
「わかりました!頑張ります!」
「それでこそララだな」
「ああっ!そうだ! このライトメイルだけ、まだ一度も攻撃を受けた事が無いから性能がわからないです。今度試してみないと!」
「ダメだ!そんな必要は無い!ララは今後も一切敵から攻撃を受ける事を禁止する!」
「ジオ様、言ってることがめちゃくちゃです」
「勇者様、それじゃ装備を作った意味がねえですよ」
珍しくむきなってるジオ様が面白かった。




