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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第15章 愛の形
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6話 勇者の弟子と地下水脈

二つ目の村でも、やはりオアシスが枯れて住人たちが困っていた。


村の住人に話を聞いたところ、やはり前に村と同じ時期からオアシスの水が枯れ始めたそうだ。




「この村に赤ん坊を連れた女性が訪ねてきませんでしたか?」


 ルルの事についても聞いてみた。


「ああ、それなら少し前に子連れの女が村にやって来たよ。だが、村が水が無くて困ってると言ったら、他の村に行くと言ってすぐに村を出て行っちまったよ」


「そうですか、ありがとうございます」


 『静慮の魔女』とルルは既にこの村にはいなかった。

 でもここを通過したのは間違いない。



「ジオ様、すぐに次の村に向かいましょう!でもその前に」


 私はオアシスのあった場所に立ち寄って、オアシスを魔法を使って水で満たしておいた。




「これで良し!じゃあ次の村へ向かうよ!」




 それから、いくつかの村を回ったが、いずれの村でもオアシスや井戸が枯れて住人が困っていたのだ。


 赤ん坊を連れた女性が通過した村もあればそうでもない村もあった。

 それらの村のオアシスや井戸に水を満たしながら、虱潰しに村を回って探し回ったところ、ある傾向が見えてきたのだ。



「『静慮の魔女』の現れた村をつないでいくと、彼女の目的地が大体見えて来たね」


 地図の上に『静慮の魔女』が訪問した村をプロットしたところ、一見ランダムな様に見えて、実は規則的な動きをしている事がわかったのだ。


「最後に彼女が現れるのは・・・ここだね!」




 そこはオアシスの村が点在する地域の最も西の外れにある町だった。




「ここに先回りして待ち伏せするよ!」


 いくつかの村を素通りする事になるが、この町で待っていれば、間違いなく『静慮の魔女』はルルを連れてやって来るはずだ!


 そう読んだ私は、魔道馬車をとばして目的の町に直行した。




 そこは、結構大きなオアシスのある町だった。

 そして、ここのオアシスは水量も十分で全然枯れていなかったのだ。


「ここは水が枯れていないのだな?」


「そうですね、おそらくこのオアシスが周囲の村の小さなオアシスの水源になってるみたいです」


「そうすると、このオアシスから他のオアシスにつながる地下水脈に問題があるという事か・・・」


「おそらくそうなります」




 町の東側の門の前でジオ様とそんな話をしていると、いつの間にか門に向かって一人の女性が歩いて来ていたのだ!

 そして、その女性は胸に子供を抱いていた。


「ルル!」


 私はその女性の方に走り寄って行った。


 私が近づくとその女性は無言のまま抱いていた赤ん坊を私の方に差し出した。


 やっぱりルルだ!


「ルル!無事だったんだね!」


 私は女性からルルを受け取るとしっかりと抱きしめた。


「無事でよかったよ!ルル!」


 ルルはいつもの様にすやすやと寝ていたが、私の腕の中で目を開け、私を見つけるとにこにこと笑いだしたのだった。


 かわいい!


 やっぱりルルは最高にかわいいよ!


 私はルルの頬に自分の頬を寄せてぎゅうっと抱きしめた。


 とにかくルルが無事に戻って良かったよ。



 ・・・さて、次は・・・




「ええと・・・あなたは、『静慮の魔女』?」


 私とジオ様、それにテンちゃんとシィラの4人で『静慮の魔女』を取り囲んでいる。



 女性の顔は見えているのに、『静慮の魔女』かどうか、顔を見ても判断が出来ない。


 顔は見えているはずなのに、その顔の認識が出来ないのだ。

 これは間違いなく、『静慮の魔女』の認識阻害魔法だ。




「・・・目的は達した・・・」




 女性がそう言葉を発すると、次第に女性の顔が認識できる様になってきたのだ。


「あれっ?ネネじゃない?別の人?」


 認識が出来るようになった女性の顔は、私の知っているネネの顔ではなかった。




「・・・わたしは・・・どうしてここに?」


 女性はそう呟いた。

 どうやら、その女性は自分が今までどうしていたのか分からない様だ。


「ええと、あなたは?」


「わたしはこの町の者です。仕事で帝都に出かけていて、ここには帰ってくる予定でしたが・・・いつの間にここに?」




 ・・・どうやら今まで静慮の魔女に操られていたらしい。



「あなたは私の赤ちゃんを連れてオアシスの村を転々と渡り歩いていたんですよ?」


「ええっ!そうなのですか?・・・なにも・・・覚えていません」




 どうやらこれ以上、この人に聞いても無駄みたいだね。




「ごめんなさい。驚かせてしまって、もう大丈夫です。とりあえず町まで送ります」


「申し訳ありません。何も覚えていなくて・・・・」




 この女性は『静慮の魔女』に操られていただけみたいだった。


 私たちは女性を町に連れ帰り、役人に事情を話して保護してもらった。




「結局、またしても『静慮の魔女』に会えなかったな」


「彼女が自分から行動を起こした時はやっぱり簡単には会わせてくれないみたいだね。でも伝えたい事はわかったよ」




 周囲の村のオアシスが枯れた原因がこの町にある。

 『静慮の魔女』それを私に解決させたかったのだろう。




 ・・・それにしてもこんな手の込んだ事をしなくても、普通に教えてくれたらいいのに・・・




 「じゃあ、オアシスが枯れた原因の調査を始めるよ!」




 今夜は大事な夜なんだから!さっさと周辺のオアシスが枯れた原因を解決して、帝都に帰らないとね!

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