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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第15章 愛の形
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5話 勇者の弟子と枯れたオアシス

 女の子の赤ちゃんを保護しているという情報を元に、私とジオ様それにテンちゃんとシィラの4人は帝都の西方にある村を目指した。


 その村は小さなオアシスの周辺にできた孤立した村だそうだ。

 魔道馬車で急げば昼には到着できるはずだ。


「やはりわたくしが同行しないと、いざという時ルル様をお守りできません」


 本当にシィラの言う通りだった。

 無理を言って家族水いらずで外出したのが完全に裏目に出た。


「とにかく今は報告のあった情報がルルである事を祈るばかりだよ」




 魔道馬車は砂漠を走り続け、やがて小さなオアシスにたどり着いた。


 ・・・いや、正確にはオアシスのあった場所だ。


 オアシスがあったと思われる場所には、ただ単に干からびた窪地があるだけだったのだ。

 そしてその窪地の周囲には小さな村があった。




「ここって・・・オアシスが干上がってる?」


「その様だな。これでは村人たちが生活出来ないのではないか?」


「そうだよね?でも、とにかくルルを迎えに行かないと!」


 村の入り口で魔道馬車を降りた私達は、村長の家を目指した。


 家の数はそれほど多くないので、村長の家はすぐに見つかった。

 村長は私達を見ると快く迎え入れてくれた。




「これはこれは!あなたがあの赤子の母親ですね?」


 村長はジオ様を見るなりそう言った。


「ルルはここにいるのか?」


 ジオ様も説明に疲れたのか敢えて否定はしなくなっていた。


「やはりそうでしたか!ここまでよく似た親子も珍しいですな。一目見てわかりました」


 確かに誰が見ても親子に見えるんだね。


 ・・・でも、やっぱり、お母さんとしてはちょっと悲しい・・・・


「それで!ルルはどこにいるんですか!早く合わせて下さい!」


 私はジオ様と村長の間に割り込んで村長に尋ねた。


「あなたは?」


「私があの子の母親です!」


「いや、そうでしたか、それは失礼・・・そちらの女性の方が良く似ているので間違えてしまいました」


 村長は私とジオ様の顔を何度か見比べていた。


「それでルルは今どこにいるんですか?」


「それなんですが、昨日赤ん坊を預けに来た女性が、今朝再び現れて、親が見つかったから届けに行くと言って赤ん坊を連れて行ってしまったのです。途中でお会い出来なかったとしたらすれ違いになってしまったのかもしれませんな」


 ・・・それって『静慮の魔女』が再びここに来たって事?


「その女性はどんな顔をしていましたか?」


「・・・おや?そういえばどのような顔だったか・・・思い出せませんな」


「服装や身なりは?」


「・・・はて?それも全く記憶に残っていないとは?・・・この老いぼれ、もうろくしてしまったのかのう?」



 ・・・やっぱり!『静慮の魔女』だ!



「その女性はどちらに向かうと言っていましたか?」


「確か・・・ここよりさらに西側の村に親が見つかったと言っていた気がしますが、正確な場所は言っておりませんでしたな」


「ここから西ですか・・・」


 確かこの辺りは小さなオアシスが点在してそれぞれオアシスの傍に村があったはずだ。

 魔法で探索して見つかればいいのだけど、『静慮の魔女』と一緒にいると魔法で見つける事が出来ないのだ。

 既に探索魔法で周辺を調べているのだけど、移動した痕跡すら見つからない。


「どの村かわからないとなると・・・一つ一つ探すしかないないだろうな・・・」 

 

「すぐに次の村に出発しよう!・・・でもその前に、村長さん、この村のオアシスはどうして干上がっているんですか?」


「・・・それなんですが、以前から少しずつ水量が減って来てはいたのですが、数日前にはほとんど干上がってしまいまして、このままではこの村を捨てて他の場所に移り住むしか・・・」


「オアシスを見に行ってもいいですか?」


「ええ、構いませんが」




 私達は村長さんに案内されてオアシスのあった場所に行ってみた。

 底の方がわずかに湿ってはいるが、それもじきに乾燥してしまいそうだった。


 私はオアシスだった窪地の底に下りて行った。


 地面に手を当てて探索魔法で地中の様子を探ってみる。




「なるほど・・・地下水脈にほとんど水が流れて来ていないみたいだね」


 水脈の上流の方で何か異変があって水脈が枯れてしまったのかもしれない。


 


 私は窪地から出て村長さんに状況を説明した。


「取り合えず魔法でオアシスに水を貯めておきます」




 私は窪地に手をかざし、水魔法を発動して大量の水を作り出した。

 空間から湧き出てくる水がオアシスだった窪地に溜まっていく。

 そしてオアシスをなみなみと水で満たしたのだ。



 

「おお!これは!枯れたオアシスが昔の様に潤っておる!・・・もしかして、あなた様がお噂の大聖女様でしたか!」


「はい・・・一応、そうです」


 説明が面倒なのでそのまま肯定しておく。


「これは失礼いたしました。ありがとうございます!大聖女様」


 村長は深々と頭を下げた。


「それよりも、この水は一時的なものにすぎません。地下水脈が枯れた原因を突き止めないと、この一帯のオアシスが全て干上がってしまいます」




 ルルを探すついでに、他の村の様子も見て回った方が良さそうだね。




「じゃあ、村長さん。子供を探しに出発します。水脈の件も原因がわかったらお知らせします」


「ありがとうございます。大聖女様。大したおもてなしも出来ずに申し訳ありませんでした」


「いえ、お構いなく。では先を急ぎますので!」





 私達は魔道馬車で次のオアシスの村を目指したのだった。


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