1話 勇者の弟子と三角関係
シス女王とアヌに贈り物を残して私たちは大河の国を後にした。
二人にはそれとなくプレゼントを残した事は伝えてあるから、しばらく経ってアヌの妊娠が発覚した時にはその事だと気が付くだろう。
それにしてもシス女王はアヌの事をあれだけ激しく愛しながら、私の方にも同時にあんなに攻めてくるなんて!どれだけタフなんだろう?
普段は一晩に数人の妃の相手をしてるって言ってたけど、あながち嘘じゃなかったみたいだ。
前回見せなかった新し技も続々と出てくるし、どれだけ手数をもってるんだろう?
というか女性同士で愛を確かめ合う行為にこれほどのバリエーションがあるって事に驚きだよ!
全部をジオ様で試そうと思ったら、いつまでたってもジオ様を男性に戻せなくなっちゃうじゃない!
でも、昨晩も三人で激しく愛し合った後は、シス女王はアヌと二人で静かに寄り添って眠りについていたので、あの二人がお互いにかけがえのない存在である事は確かだった。
なので、私も負けじと部屋に戻ってからジオ様と抱き合ったまま深い眠りについたのだった。
さすがに今晩はジオ様に新しく覚えた技を試すだけの体力が残ってなかったよ。
そしてその翌日、私とジオ様それにテンちゃんとシンの4人は魔道馬車で、帝都に向かっている。
行きと違って帰りは急ぐ必要もない、優雅な旅だった。
「こうして美女三人と旅をするというのもいいものだな?」
ははは、一人は男性で、一人は正体が竜の幼女だけどね。
「ララの言っていた大事な話というのはまだ聞かなくていいのか?」
「帝都にもどってから落ち着いて話します」
今この狭い魔道馬車の中で話しても、帝都に着くまでの間が何だか気まずくなりそうだからね。
今回は帝都に戻った後も少しはゆっくりできそうだし・・・その間に事を済ませてしまう決心を固めようとしているところなのだ!
まあ、それで必ずしも子供を授かると決まった訳じゃないけどね。
もっとも、強欲の魔女の魔法を使えば確実に妊娠する事も出来なくはないし、なんだったら今回のシス女王とアヌの様に、女性の体のジオ様の子供を身ごもるという事も出来なくはない。
でも、ジオ様の子供も、シンの子供も折角だったら自然の摂理に任せて産みたいというのが私のこだわりだったりするのだ。
シス女王とアヌの場合は、あれほど愛し合っていても、あのままでは決して報われる事がない運命だったから、私がほんの少し手助けをしてあげたのだ。
でも、私が手を貸したといっても、二人の子供はあくまでも二人の愛によって生を受けた子供である事に変わりはないからね!
これまでの旅で、色々な愛の形を見てきて、私がシンと結ばれる事への迷いは、殆ど無くなってきている。
そのきっかけの一つとなったのが、ジオ様とシンの距離感だ。
ジオ様が女性の体になってから二人の親密度が、明らかに上がっている様に見える。
以前から二人が男同士の強い友情で結ばれている事は知っていたが、その距離感がどう見てもただの友情以上のものに見えてしまって仕方なかったところに、今度は体が男と女になってしまったのだ!
そして、その事によって二人の関係は気まずくなるどころか、さらに親密になってしまったのだ。
そのため、このままだと本当に二人は結ばれてしまうのでないかという疑念がどうしても拭えなかったのだ。
・・・でも一方で、私はこれからジオ様という最愛の旦那様がいながら別の愛する男性と結ばれようしているのに、その私に二人の関係を阻止する権利があるのだろうか?
ジオ様が私とシンの関係を認めてくれるのなら、私もジオ様とシンの関係を認めてあげるべきなのかもしれない。
そうすれば、ある意味、この三角関係は全員が幸せな関係になるのではないだろうか?
そうだ!私は何にこだわっていたのだろう。
シス女王とアヌは本気で愛し合っていたし、私も女性の体のジオ様の事も本気で愛している。
愛の形に決まりなんてないのだ!
最初はジオ様とシンが男どうして関係が深まる事に抵抗があったのだけど、今となってはそれは無い。
それに、ジオ様とシンのそれぞれに嫉妬を感じていたのだけど、私がシンと結ばれたら、私にはもうそれを言う権利は無い。
私は二人を愛しているし、二人もそれぞれ他の二人を本気で愛しているなら、これはもう完璧な三角関係のハッピーエンドなのかもしれない。
うん!そうだ!
私がシンと結ばれるだけでなく、ジオ様とシンと結ばれればいいんだ!
いっその事、この前みたいに、私とジオ様が同時にシンの子供を身ごもってしまえば何の後腐れもなくなって、晴れ晴れした気持ちで二人の赤ちゃんに恵まれる事が出来るんじゃないかな?
そうだ、なんで今までこんな簡単な事に気が付かなかったんだろう?
変な先入観や常識が邪魔をして、一番大切な事を見落とすところだったよ。
みんなが幸せになれるんだったら、過去のしきたりや常識なんか変えてしまえばいい。
何よりこの大陸では既にそれが法的に認められてるんだから!
うん、帝都に帰ったら、この方針でシンに全てを話そう!
きっとシンも同意してくれるに違いない。
ジオ様にもシンへの秘めた気持ちを表にさらけ出して貰おう!
ジオ様の事だから、私に気を使ってシンへの気持ちを封じ込めようとしていたに違いないから、私の公認の上で、堂々とシンと愛し合ってもらえばいいんだ。
三人が三人とも、それぞれ他の二人の事を真剣に愛しているのだったらこれって浮気じゃないよね?
考えの整理がついた私は、帝都に着くのが待ち遠しくて仕方なくなっていたのだった。




