13話 勇者の弟子と繁栄の魔女
私ってば夢中だったから大勢の兵士たちの前でずっと下半身丸出しのままだったよ!
周りには男性の兵士も大勢いたっていうのに、なんという大失態!
でも周りを見回すと、兵士たちは全員が私達に背を向けていた。
「ララ殿、安心しろ。ララ殿とジル殿のあられもない姿を一目でも見た者は我がその場で首を跳ねてくれる!」
どうやらシス女王が周りの男性兵士達に、後ろを向く様に威圧をかけていたらしい。
「あーん、私ってばなんて格好で!」
私は下半身に何も付けていない格好でアヌさんに跨り覆いかぶさって治療をしていたのだ!
・・・これって、後ろから見られたらかなり恥ずかしい体勢だよね!
とはいっても治療の途中でアヌさんから手を離す訳にもいかないし・・・
「ララ、大丈夫か?・・・緊急事態なのはわかるが隠すべきところは隠した方が良いぞ」
・・・同じく下半身丸出しのジオ様が私に何を言ってるの!
「ジオ様こそ!ちゃんと隠して下さい!」
「あっ、ああ、そうだったな」
ようやく自分の姿にも気が付いたジオ様は、近くにいた女性兵士が渡してくれた布を腰に巻き、私のお尻にも布をかけてくれた。
「ふふふ、我としては良いものが見られて役得ではあったがのう」
シス女王ってば、兵士たちには見るなって言っておきながら自分だけはしっかり見ていたらしい・・・
・・・今度から人魚モードを使う時はもう少し気を付けよう・・・
そうしているうちに、アヌの手足の再生がようやく完了した。
「もう大丈夫ですよ、アヌさん。何か痛みや違和感はありませんか?」
「・・・大丈夫です。特に異常はありません。ありがとうございます。ララ様」
「アヌ!無事で良かった。おぬしにもしもの事があったら我は・・・我は・・・」
シス女王がアヌを力いっぱい抱きしめていた。
「陛下・・・陛下もご無事で何よりです」
アヌもシス女王抱きしめ返し、二人は唇を重ね合っていた。
「そうだ!ジオ様!河の魔物の方は大丈夫なんですか?」
「それなら問題ない。水中の中級の魔物はあらかた片づけた。それに川下から上がってくる魔物が途絶えたからとシンの率いる部隊が上流に上がってきている。もうすぐここに到達するだろう」
丁度そこにシンの率いる部隊が帰ってきた。
「皆の者、無事か?残りの魔物はあと僅かだ。この岸から上がってくる下級の魔物を倒し切ればそれで作戦は終了だ」
シンが、兵たちに先んじて私達の元に駆けつけた。
「戻ったか?シン」
シンを出迎えようとジオ様が立ち上がった瞬間・・・
ジオ様が腰に巻いていた布がほどけて・・・はらりと落ちてしまったのだ!
「ジオ殿!」
「ダメ!」
そして慌ててジオ様をシンの視界から隠そうと立ち上がった私も・・・腰に巻いた布をしっかりと縛ってはいなかったため・・・同じく布がはらりと落ちてしまったのだ
「「「あっ」」」
奇しくもシンの目の前でジオ様と私は同時に下半身を晒す事態になってしまった!
「すまない!」
シンは慌てて後ろを向いたのだが・・・その直前にシンの目線は一瞬、私とジオ様のあの部分を彷徨っていたのだった。
・・・うーん、これではますますシンが女性バージョンのジオ様を意識してしまうかもしれない。
「はっはっは、サービス精神旺盛じゃな二人は!」
シス女王はアヌを抱きながら私たちの醜態をにやにやとした目つきで見ていたのだった。
とにかく、ハプニングは色々あったが、大河の国の魔物の襲撃は何とか乗り切る事が出来た。
テンちゃんの事は上級魔法の一種で、勇者パーティーの権限で発動したという事で何とかごまかした。
ちょっと無理があるかなと思ったのだけど、それ以上は深く追及されなかった。
その日の夜はシス女王が魔物を撃退した事を祝う宴を開催した。
宴の主役はもっぱらテンちゃんだった。
あのすごい威力の魔法は何なのかと散々聞かれたが、のらりくらりと受け流しておいた。
この大陸の人たちはあまり深く追求してこなくて、強いものは素直に強いと認める風習があるので何とかボロが出る事は無かった。
私とジオ様は相変わらずシス女王に結婚を迫られたが、丁重にお断りをするといういつもの茶番が繰り返されていた。
そして宴の後は、この国で最後の夜を迎える事になる。
実は私からの提案で、今夜はシス女王とアヌ、それに私の三人で熱い夜を過ごす事になったのだ。
私がその提案をすると、シス女王は大喜びで承諾してくれた。
一応、条件を提示してあって、今夜は私ではなくアヌをメインで愛してあげる事を約束してもらった。
シス女王は、アヌを失う事になるかもしれない一件があったためか、彼女の事をとても激しく愛してあげていた。
・・・まあ、結局その後で私の事もそれなりに激しく愛していたのだけどね・・・
そして私は強く愛し合う二人を包み込むように体を密接させて寄り添っていたのだ。
・・・実はこれには理由があるのだ。
私から二人に魔法の贈り物をしたかったからだ。
その魔法は、二人が強く愛し合っている瞬間に、私が出来るだけ近くにいた方が成功率が上がるのだ。
ベッドの傍らに立っているだけでも、それになりの成功率はあるのだけど、これだけ肌を触れ合って密着していれば、ほぼ確実に成功するはずだ。
・・・そう、私が使った魔法によって、アヌはめでたくシス女王の子供を身ごもる事が出来たのだった。
第二部 第14章 完結です。




