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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第14章 大河の女王
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6話 勇者の弟子と歓迎の宴

 魔物の上陸は一旦落ち着いたので、私たちはシス女王と共に王城に向かう事になった。


 調査隊の報告では、下流から来るの次の魔物の大群が二日後にこの王都に到着する見込みらしい。

 それまでに体勢を整えて、再び掃討作戦を実施する事になった。


 女王のはからいで豪華な客室をあてがわれた私たちは、とりあえず一息つく事ができた。


 客室のリビングには、わたしとジオ様とテンちゃん、それにシンの四人だけになった。


「それにしても、君たち三人が揃うと向かうところ敵なしと言ったところだな」


 三人とも、剣の腕もさることながら、強力な攻撃魔法を無手順で発動できるのだ。

 本来それはこの世界で『勇者』ただ一人が成し得る事で、だからこそ勇者は魔物に対する人類の切り札なのだ。


 それが同時に三人も存在する事は誰も想像すらしていない事態なのだ。


 実際には私が『魔女』で、テンちゃんは『魔女』と同等の力が使える『竜』なのだが、どちらも現在の世の中では伝説の中にしか存在しない。


 今のところシンには、ジオ様が前任の『勇者』で私が現在の『勇者』だと伝えてある。

 ジオ様は私の機転で赤ちゃんの体で生き残ったので、イレギュラー的に二人の『勇者』が現存しているという説明をしてあるのだ。

 テンちゃんの事は話せない事情があると言ったらそのまま何も聞かずに受け入れてくれたのだ。


「ごめんなさい。テンちゃんの事は今は話せないんです」


「ああ、それはいつでも構わないよ。それに彼女が悪人でない事は俺にもわかる」


「恐れ入ります。陛下」


 テンちゃんはシンに頭を下げた。


「あはは、俺の事はシンでいい。公式の場以外では君も彼らと同じ、俺の友人だ」


「ありがとうございます。シン」


 テンちゃんはかわいらしくにっこりとほほ笑んだ。

 その笑顔に、私はふと、ラルとジルの事を思い出してしまった。


「どうかしたか?ララ」


 私のわずかな表情の変化は、シンは気付かれてしまった。


 これって・・・例の話を切り出すチャンスだよね?


「・・・実は・・・この前の旅でちょっと辛い別れがあって・・・」


「・・・別れ?・・・大事な人と別れたのか?でも君にとってジオ殿やルル以上に大事な存在なんてあるのかい?」


「それなんですが、実は・・・」




「皆様、宴の用意が出来ました。会場にご案内いたします」


 そこにシス女王の使いが入ってきた。


「宴とは?」


「救国の英雄達を称える宴です。皆様が来てくれなければこの国は今日で終焉を迎えていたと、シス女王陛下が用意されました」


 ・・・まあ、そんな気がしてたよ。


「折角のおもてなしだし、行きましょう?みんな!」


「いいのか?ララ、話の途中だったが?」


「はい、また後で時間がある時に落ち着いて話します」


 ・・・シンに話を切り出すチャンスだったけど・・・でもまあ、また機会はあるよね?




 会場に移動すると、大勢の観衆の喝采を浴びせられた。


「皆の者!鎮まれ!」


 シス女王の一喝で会場は静寂を取り戻した。


「皆にこの国を救った英雄たちを紹介する」


 ・・・いや、まだ救い終わってないんだけどね。


「『大聖女』ララ!」


 あっ、そういえばそんな肩書もあったっけ?


「そして『大聖女』の従者ジル。同じくテン」


 私たち三人が皆に紹介された。


「この者たちの活躍は皆も目にしたであろう?多くの者が命を救われたはずだ。二日後に来る次の大侵攻も彼女らがいれば勝利は間違いない。今宵は感謝を込めて前祝いといこう!」


 会場は大変な熱狂に包まれ、私たち三人は大勢の人びとに取り囲まれてしまった。




「ララ殿、今宵は存分に楽しんでくれ」


 少し落ち着いたところで、シス王女が私たちのところにやってきた。


「ララ殿に我が妃たちを紹介しよう」


 女王の後ろには総勢30人近くの美女たちが揃っていた。

 前に来た時も何人か顔を合わせたけど、こんなにいたんだ?

 レダのところのゴア国王より多いんじゃないの?


「あはは、皆さんおきれいな方ばかりで」


「まだ他にもおるのだが、身重の者もおるのでな」


「えっ?お子さんが?どうやって作ったんですか?」


「我の子ではない。我の他に他に夫や恋人を持っておる者もいる」


 ・・・そうだった、ここでは多夫多妻で、それは王族だろうと関係なかったんだよね。


「陛下は後継ぎはどうされるのですか?」


「これだけいれば誰か間違って我の子を宿すのではないかと思ったのだが、なかなか授からないものだな」


 ・・・うん、間違って授かる確率は相当低いんじゃないかな?


「ちなみにララ殿とジル殿は恋人同士であろう?あるいは既に婚姻関係にあるのではないのか?」


「えっ!何を言ってるんですか?」


「隠さずとも良い。二人の距離感を見ていればわかるわ!二人が我と同じ趣向の持ち主であれば話が早い」


 うーん、人前ではあまりイチャイチャしない様に気を付けてたつもりなんだけど、見る人が見ればわかっちゃうか?


「えーと・・・シス女王陛下、この事はあまり他言しないでいただけますか?」


「隠す必要もないであろうに?まあ良い、ところで、テン殿は見たところ、二人の特徴を合わせたような顔をしておるが・・・よもや二人の子供という訳ではあるまいな?」


「もっ、もちろんです!テンちゃんは親戚の子なんです。私たちの親戚同士の子で、たまたま顔が似ちゃったんです!」


「そうか・・・もしや女同士で子を作る方法があるのかと思ったのだが・・・それは残念だ」




 女王はそう言って少し悲しそうな顔をしたのだった。


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