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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第14章 大河の女王
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4話 勇者様と大河の旅

 砂漠の帝都から、大河の国へ行くには、普通の移動方法ではどんなに急いでも5日程度はかかってしまう。


 そこで兵団に先んじて、私とジオ様とシンは魔動馬車で現地に急行する事にしたのだ。


 魔動馬車であれば大河の国には1日で到達できる。


 テンちゃんに乗ってい行けばあっという間なのだけれど、大勢の人の見ている前でテンちゃんを竜の姿に戻すわけにはいかない。

 一刻を争う時ではあるのだが、竜の存在を世間に知られるわけにはいかないのだ。

 こんな事なら、前に大河の国を訪問した時に転移魔法陣を設置しておけばよかったよ。


 ・・・まあ、あまり行きたくなかったんだけど・・・まさかこんなにすぐに再び訪問する事になるなんてね・・・




 兵団の指揮は申し訳ないけれどレダにお願いする事になった。

 ミラは帝国の内政があるので今回は留守番だ。


 ルルはシィラと一緒に後宮でお留守番してもらう事にした。




 シンはレダとミラに必要最小限の指示を出すと、私たちの待つ魔動馬車に乗り込んだ。


「では頼む」


「はい!最速で大河の国に向かいます!」


 私は魔動馬車を走り出させた。





 砂漠を疾走する魔動馬車の中で、シンから魔物の出現状況を聞いた。


「魔物は大河の中から現れ、その後も途切れることなく次々と上陸しているそうだ」


「大河の国はそれで持ちこたえられているのですか?」


「ああ、それなんだが、魔物の侵攻が始まる数日前に魔物の目撃情報があったのだ」


「それって、正体不明の女性からの情報では?」


「そうだ、情報提供者は大河の下流で魔物の群れが河を上流に向かって移動しているのを目撃したと告げて姿を消したそうだ」


 ・・・やっぱり静慮の魔女だ。


「ララが探している魔物の目撃情報の提供者の話は聞いていたからな、その手の報告は出来るだけ信用する様に指示を出してあったのだ。おかげで事前に対策が間に合った」


「そうでしたか・・・それは良かったです」




 ・・・でも、魔物の出現ルートが以前の予想とずれている。


 本来なら、獣人の島の先の海域に次の魔物の大量発生のポイントがあったはずだ。

 何か、ルートが変ってしまう様な事態が発生したのだろうか?


 いや、元々がこれまでの魔物の出現傾向から推測した出現予想ポイントなのだ。

 まだ、私たちの知らない条件があるのかもしれない。


 ・・・そして、『静慮の魔女』はそれを把握していて、正確に予言を残していったのだ。

 やはり、私たちより確実な情報源を持っている。




「ところで、この馬車ならいつ頃大河の国に到着できる?」


「この速度なら明日の朝には到着します」


「ではすまないがそれまで寝かせて貰おう。着いたらすぐに戦闘だ。君たちもそれまで休んでくれ」


「ええ、公務でお疲れでしょうから、今夜はゆっくりと休んでください」


「すまない、ではお言葉に甘えて先に休ませてもらう」


 シンはそう言って御者台から降りていった。




「ふう・・・覚悟を決めてきたのにそれどころじゃなくなっちゃいました」


「そうだな、この件が片付いてから、落ち着いて切り出せばいい」


「そうですね、まずは魔物から人々を守る事が先決です」


「ララも疲れが溜まっているだろう?到着までの間休むといい」


「はい、そうさせて頂きます」


 私はジオ様に寄りかかって仮眠をとる事にした。


「ジオ様も休んでくださいね」


「ああ、そうさせてもらう」


 魔動馬車は行先を指定すれば、後は魔動馬たちが判断して目的地まで連れて行ってくれる。


 私とジオ様は、おやすみのキスをした後、御者台で寄り添い合って朝まで仮眠をとった。




「ララ、大河が見えてきたぞ」


 ジオ様に起こされて眼を開けると、砂漠の向こうに広大な水面が広がっていた。

 この大陸で最大の流域面積を誇る大河だ。


 砂漠の中にこれだけの水量の河が流れている光景は何度見ても不思議だ。


 朝焼けの中にきらめく水面が幻想的な美しさだ。


「この河沿いに下っていけば、大河の国の王都があります。目的地までもうすぐです!」


 私は魔動馬車で大河に乗り入れた。


 砂漠よりも水上の方が平坦なので更に速度があげられるのだ。


「このまま一気に王都に向かいます!」


 大河の水面の上を魔動馬車が高速で疾走していく。


 河は下流に下るにつれて更に川幅が増して、まるで湖の様だ。


 そして、朝日と共に大河の国の王都の街並みが見えてきた。


 しかし同時に、王都に侵攻しようとしている魔物達も姿を現したのだ。


「進路が魔物で塞がれていますね」


「俺が行って駆逐する」


 ジオ様がそう言って魔動馬車から飛び出した。


 魔動馬車の上から大きく跳躍すると、一体目の魔物の頭上に降り立ち、首を切り落としながら、次の魔物に飛び移った。

 水棲の魔物は比較的大柄なので、下級の魔物でも、今の華奢なジオ様であれば足場としては十分なのだ。


 ジオ様は魔物から魔物へと飛び移りながら次々と倒していった。

 魔動馬車は速度を落とすことなくその後を疾走していく。

 とりあえず水上に顔を出している魔物さえ排除できれば、その隙に魔動馬車が通過できるので、今は水中の魔物は放置して先に進んだ。


 そして、その先では王都に上陸しようとしている魔物と、それを食い止めようとしている兵士たちの防衛線が、まさに激突している最中だった。




 その先頭では、女王自らが先陣を切って魔物と対峙していた。


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