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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第13章 時の魔女
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14話 勇者様と時の魔女

 私とジオ様とテンちゃんは、浮遊大陸の消えた後の空間をしばらく眺めていた。




「これで本当にお別れだね」


「そうだな、だがララは再会する事を諦めたりはしないのだろう?」


「もちろんだよ!」


 不可能だと思える事でも、絶対に何か方法は有るはずだからね!


「では、そろそろ、みんなのところに戻ろう」


「そうだね、テンちゃん、魔動馬車のところに戻って」


(はい、魔動馬車の方角は把握していますので、そちらへ向かいます)


 テンちゃんは六枚の羽を大きくゆっくりと羽ばたかせて方向を変えると降下しながら前進した。


 こっちの世界ではテンちゃんを竜の姿に戻さないつもりだったんだけど、いきなり姿を現しちゃったよ。


 まあ、この辺りは海しかないから人に見られる事は無いだろうけどね。




(ララ様、魔動馬車が見えてきました)


「テンちゃん、魔動馬車の真上に行ったら人間の姿に戻ってね」


(わかりました)


 そう、魔力が戻った今、私もジオ様も空を飛べるのだった。

 テンちゃんも人間の姿で空を飛べるので、やたらと目立つ竜の姿で飛んでいる必要は無かったのだ。


 テンちゃんが人間の姿に戻ると、私たち三人は空中をゆっくりと降下して、魔動馬車の上に降り立った。




「おかえりなさいませララ様。三人は無事に帰れましたか?」


「うん、大丈夫だよシィラ。神様が迎えに来てくれて三人を無事に保護してくれたよ」


「そうですか、それは良かったです」


 シィラは表情には出さなかったけどシィラちゃんが無事だとわかって安心したみたいだね。


「とにかくみんな助かって良かったね!」


「ええ、本当に、またいつか会えるといいですね」


 レダとミラも三人の事が心配だったみたいだね。


「それでララ様、これからどうなさいますか?このまま当初の予定の探索を続けますか?それとも一旦王国に帰りますか?」


 そうだった、こっちの世界では獣の国を出てから大して時間が経っていないんだった。


「うーん、予定ではもう少し先まで探索してから帰るつもりだったんだけど、一度帰ろうかな?みんなもそれでいい?」


「うん!ずいぶん長い間旅をしていた気がするからそろそろ帰りたいかな?」


「そうですね、さすがに少し疲れました」


 レダとミラも帰る方に賛成みたいだね。


「じゃあ、まずは帝国に戻るね!」


 王国に帰る前に一度帝国に寄ってミラとレダを送り届けないとね。




 ・・・それに私にはもう一つ、帝国に寄る目的が出来たのだ。




 日が暮れるとみんな疲れていたのかすぐに寝付いてしまった。


 魔動馬車の御者台には私とジオ様の二人だけとなった。

 高度を下げずに上空を飛び続けているため、夜空には満天の星空が広がっていた。


 ジオ様は相変わらず少女の姿のままだ。


「大丈夫か?ララ」


「はい、色々あり過ぎて大変でしたけど、だいぶ落ち着きました」


「そうか、辛かったら言ってくれ」

 

「じゃあ、少しだけお言葉に甘えて」


 私はジオ様の胸に顔をうずめた。

 ジオ様はそんな私をそっと抱きしめてくれた。


 こうしていると、何だかすごく安心できる。


 実はジオ様の胸に顔をうずめるのって結構好きなんだよね。

 女の子の体だとこういう事が出来るからいいよね。

 もちろん、逞しい男性の体で抱きしめて貰いたいってのもあるけど。


「そういえばジオ様は、元の赤ちゃんの姿には戻らないのですか?」


 確かに赤ちゃんよりは女性の姿の方が活動しやすいけど・・・でも王国に帰る時には赤ちゃんの姿に戻ってないと話がややこしくなるからね。


「それなんだが・・・元に戻る事が出来なくなってしまったらしい」


「えっ?どういう事ですか?」


「時間を操る能力を無理やり引き出した後遺症なのかもしれないが、この姿が定着してしまって、姿を変える事が出来なくなってしまったのだ」


 姿が定着ってどういう事だろう?


「私が魔法で戻してみましょうか?」


 魔法でジオ様にかけていた年齢増加と性別変更の魔法を解除しようと試みた。


 だけど魔法がジオ様を素通りしていくかの様に、何も起こらずに魔力が霧散してしまったのだ。


「これって、どういう事?」




 今の感覚って・・・まるで、桁外れに強力な魔法耐性を持った相手に魔法をかけようとした時の感覚だった。


 魔法の種類や強さを変えて何度か試してみたけど、やはり同じ結果だった。

 どうやらジオ様にはかなり強力な魔法耐性がついてしまっていた。


 元々勇者なので、普通の人よりは強い魔法耐性は持っていたのだが、それでも魔女の魔法であればある程度通用していたのだ。


 それが今や、強欲の魔女の魔力を持ってしても弾かれるほど、強力な耐性を持っているのだ。




「ジオ様、時間を操る魔法って何か使う事が出来ますか?」


「ああ、さっき習得したのだが、自分の周囲の時間の進み方を僅かに変化させる事が出来る」


 ジオ様がそう言うと同時に、突然私の目の前から姿を消した。


「こっちだ、ララ」


 背後から声がするので振り返ると、私の後ろ側に移動していたのだ。


「今のって、瞬間移動ですか?」


「瞬間移動ではなくて、自分以外の時間を数秒間だけ止めて、その間に移動した」


「ええっ!そんな事が!」


 時間を操る魔法は、私の知る限りこれまでまともに成功したという例がない。

 何かしらの制約や副作用などのリスクを伴うのだ。


「時間魔法なんて使って大丈夫なんですか?」


「ああ、今の程度なら何の問題もない」


「すごいです!ジオ様!・・・でも問題ないっていうのは、なんでわかるんですか?」


「時間を操る魔法の使い方やその効果や特性が自然と頭の中に浮かんできたのだ。時間を止める魔法が、何秒までなら安全に使えるかという事も把握できている」


「それって、例えばジオ様と一緒に私の時間も止めずに、周りの時間を止めたりする事も出来るんですか?」


「ああ、それは可能だ」


「ちょっとやって見て貰っていいですか?」


「かまわないぞ」


 そう言ってジオ様は私の手を取った。


「では行くぞ」


 ジオ様がそう言うと、高速で移動していた魔動馬車の周りの風の音が止まった。

 下を見ると海面に反射する月光のきらめきも止まっている。


「すごい!これって時間が止まってるんですね?」


「ああ、そうだ。だが、最大でも10秒程度が限界だ」



 そう言った、ジオ様の顔を見た時、違和感を感じた。


 ・・・そう、瞳が黒に変っていたのだ。


 私は思わず言葉を失っていた。



「もう限界だ。戻すぞ」


 再び景色が流れ始めると、ジオ様の瞳も元の金色に戻っていった。


「・・・どうした?ララ」


 無言でジオ様を見つめている私を不思議に思ったらしい。


「ジオ様・・・瞳が黒に変っていました」


「そうなのか?」


「髪は元から黒だけど・・・これって、まさか!」




 ・・・ジオ様は魔女になってしまったって事なの!?


第二部 第13章 完結です。

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