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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第13章 時の魔女
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12話 勇者の弟子と密航者

 魔動馬車の浴室にいた三人の赤ちゃんなんだけど・・・




 どう見てもラルとジルとシィラちゃんだよね?




「三人とも!どうして魔動馬車に乗ってるの?」


 問いかけたけど、当然ながら泣くだけで返事は無かった。


「とにかく急いで浮遊大陸に戻ろう!このままだと三人が消滅しちゃうよ!ミラ!お願い!」


「了解しました!すぐに引き返します!」


 御者台にいたミラが魔動馬車を操って向きを変えた。


「きっとラルの提案でこっそり忍び込んでいたに違いないよ!」


 この三人の中でそんな事を言い出すとしたらラルに決まってる!


「それにしてもどうしてシィラまで一緒に忍び込んでいたのかしら。浮遊大陸に残る事は納得していたはずなのに」


「シィラちゃんも本心ではお母さんと離れたくなかったんだよ!」


「そんな・・・・・でも、この年頃なら確かにそうかもしれませんね」


「とにかく急いで戻らないと、大変な事になっちゃうよ!」


「ララ!大変だよ!浮遊大陸が霞んできてる!」


「どういう事?レダ」


「本当です。浮遊大陸が透きとおり始めて、いくら速度を上げても近づいていかないのです」


「ええっ!なんで!」


「時間のずれが大きくなり始めているんじゃないのか?」


「それじゃあ、ラルたちが・・・・」


 ラルたちの方を振り返ると・・・そこには三人の大人の女性が立っていたのだった。


 三人は年のころは20台半ばくらいの成熟した美女で・・・当然全裸だった。




「これって、ラルとジルと・・・シィラちゃん?」




 一人は完全にシィラそのものだよ!

 あとの二人は成長した私と女性版ジオ様なんだけど・・・




 ・・・胸でかっ!




 ジルはレィア様に迫る勢いで大きくなってるし、ラルもジルほどではないにしろ、今の私と比べものにならない程の大きさに成長してるよ!


 つまり私って、魔女に覚醒せずに成長を続けていたらここまで大きくなってたってこと!?


 しまった!失敗した!やっぱりもう少し待ってから魔女に覚醒すればよかったよ!




 って!今はそんな事考えてる場合じゃないよ!


 さっきまでと時間のずれ方が変わってしまったんだ!




「ラル!これはどういう事?説明して!」


 私がラルを問いつめると、ラルは顔を真っ赤にしてぽろぽろと大粒の涙を流し始めてしまった。


「ごめんなさい・・・お母様!・・・私、やっぱりお母様と離れたくなかったの・・・」


「だからってこんな無茶を」


「無茶な事だってわかってたんだけど・・・お母様ならきっとなんとかできるんじゃないかって・・・」




「すまない、止めようとしたんだが・・・俺も父さんと離れたくなかった・・・」


 ジルも俯きながら、そう答えた。




「・・・シィラ、あなたもそうなの?」


 シィラがシィラちゃんにそう訊ねた。


「・・・はい、母様と離れたくありませんでした・・・」


 シィラに問い詰められたシィラちゃんもそう答えた。


 それにしてもこの二人、見た目が完全に同じなんで、なんか不思議な光景だ。




 私たち三人はそれぞれの子供を抱きしめた。


 私とジオ様は、今は子供の方が大きんだけどね。


「ごめんね、ラルたちはまだ生まれたばかりなのにこんな辛い思いをさせて」


「いいえ、どうしようもない事はわかっていたんです。でも・・・」




「ララ!やっぱりだめだよ!浮遊大陸がどんどん消えてっちゃう!」


 レダの声でふと気が付くとラルたちの年齢が更に上がっていた。

 三人とも、既に三十代ぐらいの妖艶な熟女に成長していたのだ。


 大変だ!早く戻らないと三人が死んでしまう。


「私が魔動馬車に魔力を追加するから、急いで浮遊大陸に戻って!」


 私は魔動馬車に思いっきり魔力を送り込んでブーストをかけた。


「ララ!浮遊大陸に近づき始めました!」


「ミラ!そのまま急いで戻って!」


 力技で、何とか浮遊大陸に戻れそうだよ。




「ララ様!魔動馬車を止めて下さい!ルル様が消えてしまいます!」


「今度は何?」


 シィラが叫んだ方を見ると・・・ルルが生まれたての新生児に戻っていたのだ!


「そうか!浮遊大陸の時間だと、今度は私たちが若返っちゃうんだ!」


「あたしもなんだか小さくなったみたい」


 確かにレダも背が縮んだ気がする。



 ・・・どうしよう、このままだとラルたちは年をとっていくし、私たちは若返っちゃうし、

 とにかくこれ以上戻ったらルルが消えちゃう!


 ルルは既に出産前の胎児の大きさに戻り始めていた。

 このまま浮遊大陸に戻ったら、ルルが消滅して、私たちも消えてしまうかもしれない。




「どうすれば、みんなを助けられるの!」


 迷ってる時間は無いのに、いい考えが浮かんでこない。


 ルルが消えない様に浮遊大陸に近づくのをやめたら、今度は三人の年齢が更に上がり始めて、老人の姿になり始めていた。


「このままだと三人が死んじゃう!」


「俺が何とかしてみよう」


 ジオ様が三人を抱きしめた。


 すると、三人の老化が止まったのだ。


「ジオ様?何をしたんですか?」


「新しく覚醒した能力の応用で自分の周囲の時間を制御できないかと思ったんだが、どうやら少しなら何とかなりそうだ。だが長くは持たん」


 ジオ様、自分の年齢を変化させる神様の魔法を勇者の能力に取り込んだ影響で時間も操作できる能力が身に付いたみたいだ。


 でも、早く次の手を考えないと、時間のずれが更に大きくなったらジオ様の能力でも抑えきれないだろう。




「そうだ!テンちゃん!ラルたちを乗せて浮遊大陸に戻れる?」


 そう、テンちゃんと魔動馬車で二手に分かれればいいのだ!


「はい、やってみますが今から戻れるかどうか?」


「とにかくやってみよう!私も力を貸すから!」




 テンちゃんは魔動馬車の外に出て元の姿に戻った。


 ラルたち三人がジオ様と一緒にテンちゃんに乗り移った。

 三人ともかろうじて老人の姿を保っているけど、これってジオ様が離れたら死んでしまうって事だよね?


「俺も一緒に付いて行こう」


「大丈夫なんですか?ジオ様?」


「ああ、どうやらこの姿の時は時間の影響を受けないらしい」


 ジオ様の今の姿は、姿を変える魔法だけでなく時間を操る魔法も併用している。

 どうやらその効果みたいだね。


「わかった、じゃあ、私とジオ様で三人を送り届けてくるよ!みんなは先に帰って待ってて!」




「母様!」


 シィラちゃんが老人のしわがれた声でシィラに呼びかけた。


「シィラ、・・・また会いましょう」


「はい、母様」


 シィラちゃんは、その言葉で別れを受け入れる事が出来たみたいだ。




「時間が無いからもう行くよ!テンちゃん!お願い!」




 テンちゃんは、魔動馬車から離れ、浮遊大陸を目指して大きく羽ばたいたのだった。


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