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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第13章 時の魔女
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9話 勇者の弟子と残された時間

「テンちゃん、あの一番近い浮遊島に着地して!」


(了解です)


 テンちゃんは浮遊島に近づくにつれてさらに減速していった。

 そして島の全容がわかる距離まで近づいてきた。


(島に人影があります!)


 そこでテンちゃんが驚きの報告をしてきた。


「確かに人影が見えるぞ」


 ジオ様もそれを見つけたらしい。


「ほんとに?前に落ちたっていう人たちかな?」


 ジオ様が指さす方を見ると、確かに人影が見える・・・・・って、あれっ?




「ミラ!レダ!」




 浮遊島に見える人影はミラとレダだった。




 ・・・・・どういう事?




 テンちゃんは、ミラたちの近くに静かに降り立った。



「ララ!どうしたの?下に降りていったのに何で上から現れたの?」


「どうやって上空にあがったのですか」


 上から降りてきた私たちを見て、ミラとレダが驚いていた。


「それはこっちのセリフだよ。下に向かってとんでもない距離を降下したっていうのに、その先の島にどうしてミラとレダがいるの?」


 これはどういう事だろう?

 でもよくよく見たら、この浮遊島は確かに第二階層から出てきた最初の浮遊島だった。


「つまりこれって、第三階層は上と下が繋がってるって事?」


「そうみたいだな」


 空間が捻じ曲げられて、上と下が繋がっていたのだろう。

 確かに第三階層の空は上に上昇しようと思っても一定の高度以上には上昇する事が出来なかったのだ。

 おそらく、あの一方通行の空域で空間がループしているのだろう。


「なんだぁ・・・帰って来れたのは良かったけど、結局第三階層はとんでもなく広いってだけで閉鎖空間って事には変わりは無いって事か」


 もしかしたら無数にあった浮遊島のどれかに別のゲートがあるのかもしれないけど、数が多すぎて一つ一つ探すにしても何年かかるかわからない。


「仕方ない、助かっただけでも良かったって事で、第三階層の調査は一旦諦めるよ」


「その方が良さそうだな」


「それよりも早く帰って子供達に会いたいよ!」


 もう会えないかもしれないって思ってたから、すぐに会って抱きしめたい気分になっていた。





「ただいま!ラル!ジル!」


 別荘に帰った私は早速ラルとジルをまとめて抱きしめた。


「おかえりなさい。お母様。一体どうしたのですか?」


「二人にすごく会いたかっただけだよ!」


 二人の抱き心地を存分に堪能した私は、二人をジオ様に渡した。

 ジオ様が二人をまとめて抱きしめる。


「ルルも会いたかったよ!」


 私は次にルルを抱き上げた。


「どうなさったんですか?ララ様」


 シィラが首を傾げて私の挙動を見ていた。


「子供達との時間を大事にしようと思っただけだよ」


 そう、ラルたちと離れ離れにならない方法を探す事を諦めた訳じゃないけど、今は一緒にいる時間を大事にするべきだ。

 その中で出来る範囲で方法を捜していこう。



 

 翌日から私とジオ様は一日中出来るだけラルとジルと共に過ごす様にした。


 ジオ様とジルは相変わらず剣の練習をしていた。

 二人はすっかり剣で語り合える関係になったみたいだね。

 言葉を交わすよりも剣を交えていた方がお互いの気持ちがわかり合えるみたいだった。

 ジルは普段無表情だけど、ジオ様と剣を交えている時は、少しだけ嬉しそうな表情に変るんだよね。

 これは普段からジオ様の表情を読み取る事にたけている私だからこそわかる事なんだけどね!


 そして、私とラルは料理の実習だ。

 ラルは飲み込みが早くて、毎日いくつものレシピを覚えていった。

 しかもただ覚えるだけでなくて、必ずそこからアレンジを加えていくのだ。

 まだ体や手が小さくておぼつかないところはあるけれど、5歳とは思えない腕前に達してきているよ。


 それに剣と弓矢もそれなりに上達してきている。


 ラルとジルの模擬戦は既に大人顔負けのレベルにまで上達していた。

 まあ、ジオ様と私がそれぞれの技を直伝しているわけだから、当然と言えば当然だよね。


 そして私とラルの最大の違いである魔法の練習も始めていた。


 そう・・・ラルは魔女ではないため、普通に魔法が使えるのだ。

 逆にそれがラルが魔女でない事の証明でもあった。


 素質的には上級魔法士レベルの魔力量を持っている。

 つまり私も魔女で無かったら上級魔法士だったかもしれないって事だよね?


 まず最初は下級魔法の魔法陣を教えると、数日で主だった下級魔法をマスターしてしまった。

 下級魔法は制御も簡単なので、それなりに使いこなせる様になっている。


 そこで次に中級魔法も教える事にした。

 中級魔法は基本的な魔法だけを教えて、後は、魔法制御の訓練に時間を費やした。

 発動後の魔法の制御技術の習得は練習を重ねるしかないのだが、ラルはそれも、すぐに上達していった。

 魔力量が多いからインターバルを空けずに連続で魔法を発動できるので、密度の高い練習ができたというのも理由の一つだが、それ以上に、やはり物覚えと勘が抜群に良いのだ。


 幼いころ魔法が使えなかった私は、そんなラルを少しだけ羨ましいと思った。


 でも、そんな事よりも、自分の子供が成長していく様を見ている方が何倍も嬉しいよね。

 新しい事をマスターする度に嬉しそうな顔をするラルは本当に可愛いよ!


 私って傍から見たらこんなにかわいかったんだな。

 周りの人達がやたらと私に構ってくる理由が改めて理解できたよ。




 そうして私とジオ様は、残された時間をできるだけ子供達と一緒に過ごしていったのだった。


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