2話 勇者の弟子と謁見
「今度の休日だが、国王に謁見する事になった」
「そうなんですか?勇者様って色々大変ですね」
(国王陛下に謁見だなんて礼儀とか難しそう)
「お前がだ」
「・・・はぁ!?何でですか?」
「勇者の後継者として正式に国王に面通しする事になった」
「えー!私なんてまだまだ見習いじゃないですか?」
「それに先日の上級の魔物討伐の顕彰もあるそうだ。以前から早くお前を連れて来いと上層部からうるさく言われていたんだ」
(なんだろう?怒られるのかな?)
「それと謁見には『附加装備』で来るようにとの事だ」
その日から、国王陛下の謁見に向けて礼儀作法のトレーニングも始まった。
そして謁見当日、私たち4人は王城の控室にいた。
「久しぶりララちゃん!」
「元気だったか?嬢ちゃん」
「お久しぶりです。セナ様、ゼト様」
それぞれ正装に身を包んでいた。
ゼト様の正式な肩書は近衛騎士団団長になるので、近衛騎士団の式典用の礼服を着ている。
先日の冒険者風のワイルド身なりとはうって変わって凛々しい装いだ。
団長がしょっちゅう勇者と魔物討伐に行ってて大丈夫なのかと聞いたら、自分は肩書だけで騎士団は実質的に副団長が仕切ってるから問題ないそうだ。
セナ様は『魔法士』の最上位である『上級魔法師』の正式なローブと杖を装備している。
セナ様も正式な肩書は『魔法庁長官』だそうだ。
こちらも組織管理ほとんど副長にまかせっきりで好き勝手やってるみたいだ。
ジオ様は勇者の正装で、私と同じ『附加装備』だ。デザインのテイストが私の装備と似ていて、並んでいるとペアルック風に見えてちょっとうれしはずかしい!
私の装備がピンク系なのに対してジオ様の装備は青系である。
「そういえばララちゃんの事、巷でうわさになってたね!」
「すまねえな嬢ちゃん!現地の騎士団には口止めしておいたんだが、あっという間に広まっちまったな」
「なんでみんなすぐに私と結び付けたがるんでしょうね?」
「まぁ『剣精様』は既に有名人だからね」
「学院のみんなには一応違うって言っておきましたけど・・・」
「時間がたてば噂も収まるだろう」
「結局今日はどういう趣旨の謁見なんですか?」
ジオ様に尋ねた。
「ララはこれまで俺が選んだ勇者の後継者候補という位置づけで、国が認めた正式な後継者ではなかった」
「・・・そうなんですね?」
「だが、先日の討伐の実績が認められて、正式に国家公認の勇者の後継者として任命される事になった」
「・・・えぇっと、どう変わるんですか?」
「国をあげてララちゃんが勇者になる事を支援するって事だね!」
セナ様が続きを話してくれる。
「まぁ国の上層部としてはとっくに内定は出してたんだけど、大儀名分ができたんでさっさと決めちゃおうって事さ。先に膨大な予算使っちゃったんで、辻妻合わせだね」
(あっ、この装備のお金ですね?)
「『勇者』というのはこの世界に同時に一人しか存在しないのは知ってるな?」
「はい」
「『勇者』が死んだとき、別の人間が『勇者』として覚醒する。誰が次の『勇者』となるのかは覚醒するまでわからない」
「えっ?では後継者というのは?」
誰が勇者になるのかわからないのに後継者を決めるのはどういう事だろう?
「『勇者』が死んだあと、必ずしもふさわしい人物が次の勇者になるという保証はない。実際に過去に極悪人が『勇者』になったという例もある」
「『勇者』が極悪人だとどうなってしまうのですか?」
「表向きはその時の『勇者』は『魔王』という名前で記録に残されている」
「昔話に出てくる『魔王』ですか?」
「『勇者』が『魔王』となった時代は暗黒の時代となる。数多くの国が滅び、世界の人口が半減したことさえあった」
「でも物語では『魔王』は『勇者』に倒されてますよね?」
「『魔王』と『勇者』は同時に存在しない。『魔王』が自殺したか、『終焉の魔物』と遭遇して共倒れになったという説が有力だ」
『終焉の魔物』とは数十年に一度現れる『上級の魔物』のさらに上位種だ。歴代の『勇者』は『終焉の魔物』の討伐時に相打ちで命を落とす事が多い。
「これまでの『魔王』は世界を滅ぼす前に倒れたが、次もそうとは限らない。そんな事態を避けるため、特定の人物に勇者を継承させる秘術が編み出された」
「ああ、やっぱり方法があるんですね?」
「国家公認の後継者になれば秘術の施行が許可される」
そして謁見の間へと案内された。