2話 勇者の弟子と迷宮攻略再開
赤ちゃん達が生まれて数日が過ぎた頃、神様が別荘にやって来た。
「ほう!これは予想通りかわいい赤子たちじゃのう」
神様は三人の赤ちゃんを見て満足げだ。
「この国に見目の良い国民が増えるのは良い事じゃ!」
赤ちゃん達を見て神様は満足げだ。
「約束の通り赤ちゃんを産んだのですから、私の魔法の抑制を解除してもらえますか?」
「それはまだできん。この子らを置いておぬしたちがこの国を去る時に戻してやるわ」
「そんな、約束が違います」
「何を言っておる。先に魔力を戻したら、力づくでこの子らを連れてこの国を出るつもりじゃろ?それくらい見え見えじゃ!」
・・・完全に考えを読まれていた。
「・・・わかりました。いずれにしても地下迷宮の魔物を退治するまではこの国に滞在しなければいけません。それまではこの子たちと一緒に暮らします」
「それはいつまで滞在していても構わん。ただ魔物討伐に何年もかかる様では困るがの」
「さすがにそんなにはかかりません。一月以内には終わらせます」
「期待しておるぞ」
そう言って神様は、赤ちゃん達のほっぺを一通りぷにぷにした後、別荘を去って行った。
「どうするんですか?ララ様?」
「シィラこそ、赤ちゃんと別れても平気なの?」
「初めからそのつもりでしたので」
・・・自分の産んだ赤ちゃんだよ?
そんなに簡単に割り切れるものかな?
「とにかく、赤ちゃん達の様子が落ち着いてきたら迷宮探索を再開しよう!」
実は、今のところ、どうやって赤ちゃんをここから連れ出すのか全くいいアイデアが無いのだ。
一旦この浮遊大陸から離れたふりをしてすぐに戻って来るとか、いくつか方法は考えてみたのだが、結局力押ししか思いつかなかった。
私と神様の力量は拮抗しているから、まともに正面からぶつかったらとんでもない事になりそうな気がするんだよね。
いいアイデアが思いつくまで時間稼ぎを出来なくもないんだけど、そろそろ、一旦王国に帰らないとさすがにまずいよね?
ミラとレダも砂漠の帝国に帰してあげないとさすがにシンが寂しがっているだろうしね?
私も・・・シンに会ってじっくりと話がしたいし・・・
実は今回二度目の出産を経験して、保留にしていたシンの子供の事を考える事が多くなったんだよね。
今回に限らずいろんな国を見て来て、結婚や出産って国によっていろんな考え方があるんだなって改めて知る事が出来た。
砂漠の帝国や獣の国では、複数のパートナーの子供を産むのは当たり前の事だったし、レダの国も割と自由だったよね?
この浮遊大陸では、パートナー不在で子供を産むのが普通で、実際に産んじゃったんだけどさ!
しかも旦那様と一緒に出産っていう、何だかよくわからない事態になっちゃったんだけど!
でも、いろんな国のいろんな文化があって、いろんな価値観があるんだなって知る事ができた。
ジオ様の事が大好きだし、ジオ様を生涯愛し続ける事には自信があるし、これはジオ様が赤ちゃんになっても女性になっても変わらないって事も確認できた。
むしろ今は女性のジオ様に対する愛情が抑えきれなくてやばいくらいの状況なんだけどね!
でも、人を愛する事の形に決まりはなくって、どんな形の愛もあるんだなって事で考えが広がったのは間違いない。
そんな中で、ジオ様以外の人の赤ちゃんを産むのってどうなんだろうってずっと迷っていたのだ。
今回、奇しくもジオ様の子供ではない子を妊娠して産んじゃったんだけど、ジオ様は当然の様にラルの事も自分の子供の様に思ってくれている。
もちろん私だって、ジルも自分の子供だって思ってる!
私がシンの子供を産む事については、ジオ様は前から了承してくれていて、後は私自身の気持ちの整理の問題だったんだけど・・・
何だかその決心ができそうな気がしてきてるんだよね。
まあ、その前にこの国の問題を解決するのが先だけどね。
とにかく、迷宮探索は再開して調査だけでも進めておこう。
出産から10日ほど過ぎた頃、地下迷宮の探索を開始する事になった。
赤ちゃん達はシィラが一人で面倒を見てくれる事になった。
一人で人で四人の赤ちゃんを見るのは大変じゃないかと思ったけど、ラル以外の三人はほとんど寝ているのでそれほど手がかからないから大丈夫との事だった。
・・・うーん、それってつまり、私だけが問題児って意味だよね?
ちょっと複雑な心境だけど、まあ、大丈夫って言うなら任せるしかない。
それに、神様が毎日様子を見に来ているのだ。
監視の意味もあるのだろうけど、孫の相手をするおばあちゃんみたいな感じで、手が足りない時には赤ちゃんのお世話も手伝ってくれるので、それは最大限利用させてもらう事にした。
地下迷宮には私とジオ様、それにミラとレダの4人のパーティーで挑む事になる。
地下迷宮への本格的な探索に向けて、ジオ様の装備を充実させようと思ったんだけど、ジオ様にはその必要は無いと言われてしまった。
元々勇者であるジオ様の身体的防御力は極めて高いので、裸だったとしても十分な防御力を有しているのだ。
ただ、脆弱な装備だと、ジオ様の本気の戦闘に耐えられずにすぐに壊れてしまうので、頑丈な附加装備を付けていたのだ。
今回ほとんど人目に触れる事も無いし、女性しかいない国なので、多少装備が破損しても問題無いという事だった。
でもそうなると・・・
元々、ミラとレダの装備は肌の露出の多めの装備なんだけど、ジオ様も太腿や二の腕の露出したスタイルで、四人並ぶと私一人だけが肌の露出の少ない暑苦しい装備に見えてしまうのだ。
そのため何だか同じパーティーのメンバーじゃない様に見えてしまって、ちょっとだけ仲間外れ感を感じていたのだ。
そこで今回は、私もインナースーツを着用せずに装備を装着する事にしたのだ!
装備の隙間から素肌が見えるので、雰囲気的には他の三人と共通感が出せるよね!
戦闘用のインナースーツは下着の役目も兼ねているから普段は下着を着けないんだけど、さすがに今回は装備の下に通常の下着を付けてる。
ただ、私のピンク色の装備って、インナースーツが無いと、ちょっとエッチな感じに見えてしまうのだけど、ここでは男性の目線に晒される事も無いし、まあいいかな?
「・・・ララ・・・素敵です!」
・・・・・うん、ミラがエッチな目線で見る事は知ってたよ。
「・・・ララ・・・少し目のやり場に困るのだが・・・」
なんとジオ様も意識してくれたよ!
・・・まあ、ジオ様の姿も大概なんだけど・・・
女性のジオ様にも意識してもらえたのが何だかすごく嬉しかった。




