2話 勇者の弟子と脱出方法
出発の支度を整えた私たちは、神様の追手が来る前にこの大陸から脱出する事にした。
もう少し調べたい事もあったけど、『強欲の魔女』と互角の力を持っている神様はちょっと面倒だ。
魔動馬車で宿を出発したが、城門は閉ざされている可能性があるので、このまま空へ上昇してしまおうと思ったのだが、魔動馬車が浮かび上がらない。
・・・これはどうした事だろう?
「どうした?ララ」
ジオ様が、私に尋ねた。
あどけない顔で私の顔を覗き込んできた美少女に、一瞬ドキッとした。
まだちょっと慣れないな、美少女のジオ様に。
「これは・・・神様の結界のせいで私の魔力が制限されています。そのせいで魔動馬車を浮かせる事が出来ません」
「それはつまり、この国から出られないという事か?」
「おそらく結界はこの神都の中のみです。神都の外に出れば大丈夫だと思います」
「そうか、それなら町を出よう」
「そうですね、とりあえず城門まで行ってみましょう」
魔動馬車を普通に地面の上を走らせる程度なら問題無かったので。街中を疾走し城門までたどり着いた。
しかしそこには屈強な兵士たちが待ち構えていたのだ。
例の羽の生えた騎士たちだ。
でも、前にあった人達よりもガタイが良く、重厚な鎧を装備していた。
「神様の命によりお前達を通すわけにはいかぬ」
数十人の重騎士たちが行く手を阻む。
おそらく私たちの強さを見越して神様が用意した特別製の鎧だろう。
・・・でも重そうだから有翼人でも飛べなくなるんじゃないかな?
「ここは俺に任せろ」
ジオ様がロングソードを持って飛び出して行った。
サイズが合う装備が無かったので、町で買った普段着のミニスカート姿のままだった。
ちなみに私の装備を貸そうかと提案したがそれは却下された。
・・・ピンクの装備を付けたジオ様を見たかったんだけど・・・残念!
「小娘が、無防備で我々の相手をするなど怪我をするぞ、下がっていろ」
相手の重騎士がジオ様に気を使ってくれたが、ジオ様はお構いなしで切り込んでいった。
一人目の重騎士がジオ様のロングソードを更に一回り大きい大剣で受け止めた。
見るからにジオ様が押し負けそうだが、皆の予想に反して、重騎士の方が受けた剣ごと勢いよく飛ばされ壁に激突した。
あっけに取られている他の重騎士に、ジオ様はすかさず次の攻撃を仕掛ける。
二人目の重騎士も同様に飛ばされて壁にめり込んでいた。
「ばかな!神様より賜ったこの重神鎧は本来の腕力を何倍にも高めているのだぞ!装備無しの華奢な小娘がなぜ打ち返せるのだ!」
そう言っている間にもジオ様は三人目を吹き飛ばしていた。
あの鎧はやっぱり『附加装備』と同じ様な性能を持った鎧みたいだね。
「ええい!同時にかかって取り押さえろ!」
重騎士が四方から同時にジオ様に襲い掛かった。
ジオ様は正面の相手を剣で打ち返しつつ、後方の敵に後ろ回し蹴りを炸裂させた!
後方の重騎士を蹴り飛ばすと、その足を戻して、横にいた重騎士の腹に膝蹴りを叩きこむ。
そのまま、体を回転させ、次の重騎士を剣で打ち返しながら、さっきと逆の足を後ろ回し蹴りで後方に来た次の重騎士に叩き込む。
そんな感じで、周りに群がってくる重騎士たちを剣と両足をフルに使って次々と蹴散らしている。
「ジオ君すごい!」
「まさに鬼神ですね」
「うん、ジオ様が本気を出したらこんなものじゃないよ」
今のジオ様は体格は私とそれほど変わらないけど、腕力は勇者の力をフルに使えている。
私と違って、腕力に物を言わせた力技も使えるので、それを最大限に生かしているのだ。
元々ジオ様は足技が得意だったのだが、赤ちゃんの時は足が短くてそれが活かせなかったのだ。
でも今の体なら、かなり有効な攻撃になる。
・・・でも、ミニスカートでハイキックや膝蹴りを連打しているので、さっきから太腿や下着が丸見えなのだ。
年頃の美少女の太腿や下着を惜しげもなく見せつけられて・・・今は同性の私でもちょっとどきどきしてしまっているのだ。
ちなみにミラはさっきからガン見して鼻血を吹き出しそうに興奮していた。
・・・ほんとにこの場に男性がいなくて良かったよ。
そして、ジオ様は瞬く間に全ての重騎士を倒してしまった!
「今のうちに神都を出るぞ!」
「でも門が閉まっています!」
「打ち破る」
ジオ様はそう言って城門に向かって駆けて行き、門扉に向かって飛び蹴りをしたのだ!
あまりのスピードのため、ジオ様のミニスカートはおへその上まで完全にめくれかえって、下着が丸見えになってしまっていた。
ジオ様はそんな事はお構いなしで、巨大な門扉を蹴り飛ばしてしまった。
「今のうちに門を通過しろ!」
門扉ごと城門をつうかしていたジオ様が私たちを呼んだ。
「ジオ様・・・その前にスカートを直して下さい・・・丸見えです」
ジオ様はミニスカートが完全に裏返しになったままで、しかも下着が思いっきり食い込んでいて、かなりの悩殺スタイルになってしまっていたのだ!
「・・・ああ、すまない」
自分の格好に気が付いたジオ様は、さすがに恥ずかしかったらしく、慌てて下着を整えてスカートを戻した。
その姿があまりにも初々しくて、思わずキュンっとしてしまったよ。
・・・隣でミラは鼻血をたらしていたけどね・・・
・・・うん、ジオ様の服装はもう少し考えてあげよう。
これはこれで眼福なんだけどね。
破壊した門から魔動馬車で外に出た私たちは、最初にこの浮遊大陸に着地した場所を目指した。
とりあえず、この浮遊大陸の端まで行くとしたら、知っている場所に行くのが確実だ。他の方角に行っても、どれくらいの距離を走れば大陸の端に着くのわからないからね。
どうやらこの浮遊大陸はかなり大きいらしいしね。
しかし、神都の外に出て、だいぶ距離も離れたというのに、私の魔力の弱体化が回復する様子が無い。
・・・少し嫌な予感がする。
やがて、最初にこの大陸に着地した場所に到達した。
「ようやくこれでこの大陸から脱出できるな」
「だめだよ、まだ魔力が回復していない。このまま浮遊大陸から出たら地面に落下するよ」
「どういう事だ?」
「神様を甘く見てたよ。神様はこの大陸全体に魔法式を刻んで魔法をかけてあったんだ。それを利用して、大陸全体に私の魔法を弱体化させる効果を発生させたみたいだね」
「つまりそれを解除しないとこの大陸から出らないという事か?」
「うん、やっぱり神様と決着を付ける必要がありそうだね」




