13話 勇者様と共闘
北側の城門の上に触手のたくさん生えたタコの様な巨大な魔物がとりついていた。
「上級の魔物だ」
「うん、形も目撃情報と一致してるね」
「とにかく町の中に入れるわけにはいかない」
私たちは城門の近くまで移動した。
町の住民はすでに町の南側に避難している。
魔物の周りは騎士団が取り囲んでいた。
この地域では最も大きな町であるため、領主の率いる騎士団が駐屯している。
幾人もの騎士や魔法士で応戦し、魔物の進行を抑えているが決め手が無く、少しずつ進行を許してしまっているようだ。
騎士団の団長らしき人に話をして参戦する事になった。
「まずはあの触手を何とかしないと本体に近づけない。ゼト、ララ、騎士団と協力して触手を切り落としてくれ」
ジオ様が指示を出す。
「セナは触手がすぐに再生しない様に切り口を焼いてくれ」
「了解!」
「その間に俺が本体に近づく」
「ララ!」
「はいっ!」
「無理はするなよ、危なくなったら下がれ」
「わかりました」
「嬢ちゃん気を付けろよ!」
各自が魔物に向かっていった。
近くに行くと魔物の大きさを実感する事となった。
高さ20mの城門の上にある本体は20m以上あるだろうか?
タコの様に見えたが、実際には本体は硬そうな甲羅で覆われており甲羅のすきまから無数の触手が生えていた。
触手は太さが大人の胴体ぐらいあり、城壁の上にいる本体から城壁を伝って地面まで届き、さらにこちらに向かってきている。
一本一本が意志を持っているかのようにうごめいてこちらを威嚇している。
「ゼト様、行きます」
「おう!そっちは任せた」
私とゼト様は騎士たちの前に出て、私は城門の右側、ゼト様は左側に分かれ触手に切りかかった。
触手は私をからめとろうと巻き付いて来たが、体をひねってそれをかわしつつ切断する。
何とかレイピアの刃渡りでも一太刀で切り落とす事が出来そうだ。
触手の先端を切り落としながら奥に踏み込み、さらに付け根側を切り落とす。
それを繰り返していると、後ろから別の触手が迫っていた。
振り向きざまに後ろの触手を切り落とし、そのまま回転して再び前側の触手も切り落とす。
気が付くと私の周りには4~5本の触手が集まってきていた。
触手の動きはそれなりに速いが、今の私なら対処できないほどではない。
迫ってくる触手を次々切り落としながら城門に向かってに走って行く。
私の通ったあとには無数の触手の輪切りが転がっていた。
「すげえな、あの女の子」
「ああ、何者なんだ?」
触手を食い止めるので精いっぱいだった騎士団員たちがあっけにとられていた。
逆サイドを見るとゼト様はもっと派手にやっていた。
すでに城壁の上に登って本体近くまで踏み込み、根元から次々と切り落としていた。
「さすがですね!じゃあ私も!」
城門の脇にある階段に駆け込み、一気に駆け上がる。
階段出口で待ち構えていた触手を切り落とし、本体の近くに入り込み触手を根元から切断した。
続けて、2本目、3本目と切り落としていくと、背後から10本以上の触手に囲まれていた。
(あれっ?踏み込みすぎた?)
これはまずいかな?と思った瞬間、半分以上の触手がばらばらに切り刻まれていた。
同時に残りの触手には炎の槍が突き刺さった。
「ばか!突っ込みすぎだ!」
ジオ様が風魔法で触手を切断してくれたらしい。
セナ様も火炎魔法で援護してくれた。
「すみません」
残った触手をさばきつつ謝った
「だがおかげで突破口ができた」
私とゼト様が左右の触手を引き付けたため中央が手薄になってジオ様が魔物の懐に入れた。
今本体の前には触手がほとんどいなくなっている。
ジオ様は本体の真正面で剣を構えた。
次の瞬間、魔物の硬そうな甲羅はバラバラになって飛び散っていた。
触手がジオ様の方に戻ろうとし始めたので、私は追いかけて切り落とす。
触手の目標がジオ様になったのでさっきよりさばきやすくなった。
(ジオ様の方には一本も行かせない!)
私は次々と触手を切り落とす。
触手の切り口にはセナ様が放った炎の槍が次々と突き刺さって、断面を焼いていく。
切りっぱなしの触手はすぐに再生するが、焼いた触手はすぐには再生できないようだ。
ジオ様は魔物の本体に十字の深い傷をつけた。
続けて魔物の肉を次々とそぎ落とす。
魔物は後退し始めたが、ジオ様は追いかけながら魔物をそぎ落としていった。
やがて傷の奥に大きな魔結晶が見えた。
魔物は城門の端まで下がり城門の向こうに落下した。
ジオ様はすかさず落下する魔物の傷口に飛び込み、魔結晶をつかんで引きちぎった。