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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第10章 神の国
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1話 勇者の弟子と空の旅

第二部 第10章 開始です。

 魔動馬車は月明かりに照らされて夜空を駆けていく。


 蹄の音が、夜空に軽やかに響き渡る。


 魔動馬は元々僅かに地面から浮いているので、フェイクで蹄の音を鳴らす様にしていたため、海の上だけでなく、空でも蹄の音をたてて走るのだ。




 獣人の島を後にした私達は、魔法の使える高度まで魔動馬車を上昇させて島の上空を通過した。


 島は既に、はるか後方に見えなくなっていた。


 そろそろ高度を下げても大丈夫かと思うんだけど・・・


 折角だからこのまま空の上を進んでもいいかな?


 


 最初は私が魔法で魔動馬車を空の上に持ち上げたんだけど、この際だから、魔動馬と魔動馬車に空を駆ける機能を追加しちゃったんだよね。


 これで、私が魔法を使わなくても、御者の指示で空の上も走る事ができる様になったよ!


 さすがに動力源となる魔結晶の魔力の消費は激しくなるけど、有り余るくらいの魔結晶を搭載してるし、私の魔力も無尽蔵に近いから、全ての魔結晶に魔力を充填しておけば何日空を飛び続けても大丈夫だよ。





「月が大きくてすっごく明るいよ!」


 レダの言う通り、普段見る月より、大きくて明るい気がする。


 高度が上がって月に近づいたせいなのかな?

 それにしても、こんなに大きくなるものだろうか?


 でも、こんな特別な月が出てると、なんだか不思議な気持ちになるよね?

 獣人たちが発情期になるのもわかる気がするよ。


 ・・・いや、別に私が発情してるってわけじゃないけどね。


「それにしてもほんとにきれいな月ですね」


 ミラがそう言いながら私に寄り添ってきた。


 ・・・ミラ、月を見て変な気分になってるんじゃないよね?




 ところが、南の空に見える大きな月をみんなで眺めていると・・・その月が、突然消えたのだ!


「あれ?どうしたんだろ?」


「雲が出たのでしょうか?」


「そんな感じの消え方じゃなかったけど?」




(ララ!前方に壁があるぞ!回避しないと激突する!)


 ジオ様が念話で大声で叫んだ!




「えっ!何で空に壁があるの?」


 魔力で感知したら、確かに前方に巨大な物体が存在していた。


 ・・・まずい!このままだと衝突する!



 既に壁は目前に迫っていた。

 普通に減速してたら間に合わない!


 私は魔動馬の進路を上に向けた。


 魔動馬車の車体自体も上に向ける。


 そして進路を上向きに変えつつ、魔動馬と魔動馬車を壁面に着地させたのだ。


 


 魔動馬の蹄と魔動馬車の車輪は、地面に対して反力が発生する様になっている。


 これを利用して壁面への激突を回避したのだ!



 衝突による大惨事は免れたけど、みんな床に向かってべしゃッと押し付けられたけどね。


 そして魔動馬車が真上を向いて壁面を駆けあがっているので、今度はみんな後方に押しやられていた。

 御者席に座っていた私は背もたれに寝そべっている体勢だ。



「シィラ!ルルは大丈夫?」


 私は、シィラにルルの安否の確認を呼び掛けた。


「はい!ルル様は浮遊ゆりかごに入っていたので、問題有りません」


 特製のゆりかごは常に宙に浮いているので、馬車の姿勢が変わっても水平を保っていた様だ。


「他のみんなは怪我してない?」


「あたしは大丈夫だよ!スリルがあって楽しかったよ!」


 レダは今の状況を楽しんでいた。


「わたくしも問題ありません」


 ・・・ミラはどさくさに紛れて私にしがみ付いてたからね。




 それにしてもこの壁はどこまで続くんだろう?


 魔動馬車は、垂直に切り立った壁をひたすら駆け上り続けてるんだけど、中々終わりが来ない。


 こんなに高い山とか、聞いた事が無いんだけど?


 そもそも、この壁が山なのか何なのかもわからない。




(ララ!壁が無くなるぞ)



 ジオ様が教えてくれた。


 確かに前方を見ると、今駆け上っている垂直に立ち上がった壁がこの先で無くなっている。


「大変!落っこちちゃう!・・・って、違うよ、崖の上にたどり着いたんだ!」




 壁面を駆け上っていた魔動馬車が、崖の上に飛び出した!


 私は魔動馬車を水平に戻していった。




 目の前には・・・月明かりに照らされて、どこまでも続く草原が広がっていた。


 その先には森や、湖、その向こうには山も見えた。


 そう、これだけ空高く上って来たというのに、そこには地上と同じ風景が広がっていたのだ。




 私は魔動馬車を草原の真ん中に着地させた。



「ここは、何でしょうか?」


 馬車から降りたミラが私に尋ねた。


「私もこんな場所は聞いた事ないよ」




「わあ!なんだか体が軽いよ!」


 御者台から飛び降りたレダが、遠くの方まで跳んで行ってしまった。


「あれ?そう言えば何か変かも?」


 私もその場で軽くジャンプしてみた。


「わぁ!どうなってるの?これ」


 私は思いのほか、高いところまで飛び上がってしまった。


 遥か下方に魔動馬車が小さく見える。


 そしてゆっくりと落下していった。


「どうやらここでは体が軽くなるみたいですね?」


 ミラも軽く地面を蹴ったら、ふわりと身長の数倍の高さまで浮き上がったのだ。




(ここでは全ての物が軽くなる様だな)




 ジオ様が魔動馬車を軽々と持ち上げていた。


 ・・・いや、ジオ様は元々本気を出せば魔動馬車ぐらい持ち上げられるんだけど・・・




(普段より弱い力で物が持ち上げられる)


「どうなってるんでしょうね?この場所は」


(調べてみた方がいいが、夜は危険だ。朝になってから調査した方がいいだろう)


「そうですね、近くに外敵はいないみたいですし、一旦ここで夜をあかしましょう」




 私達は魔動馬車で夜が明けるまで寝る事にした。




 空が明るくなってきた頃、魔動馬車にカン、カン、カン、と何かがぶつかった音がして目が覚めた。


 何かと思って外に出ると、足元に数本の矢が撃ち込まれた。




「お前達!ここで何をしている!」




 上から声がしたので見上げると・・・




 そこには羽の生えた兵士たちが弓矢を構えて浮いていたのだった。


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