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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第9章 獣の国
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10話 勇者様と海の魔物

「空から中級の魔物が降って来たぞ!」



 巨大な亀の甲羅は、沈黙していた。


 外傷は無いとはいえ、あれだけの衝撃を受けたのだ。

 中身はぐちゃぐちゃになっているに違いない。


 とは言っても魔結晶が残っていたら、いずれ活動を再開してしまうはずだ。


「動き出す前に倒しちまうぞ!」


 そう言って近くにいた獣人たちが甲羅に向かっていった。



 すると、甲羅の隙間から無数の触手が伸びてきたのだ!



 落下してきたのは、亀の甲羅からイソギンチャクの触手の様な物が生えた『亀巾着』だ。

 以前、人魚の里で戦った事がある。




「ついに中級の魔物まで降って来やがったか!」



 そう、これまで降って来たのは下級の魔物ばっかりだったので、数が多くても何とか対応出来た。


 しかし、これが中級の魔物ともなると話は別だ。


 中級の魔物は一体倒すのに屈強な戦士数人がかりでもかなりの時間を要する。

 これに対応していたら、他の下級の魔物の対応が間に合わなくなる。




 でも、今は私とジオ様がいるのだ。


「ここは私たちに任せて!」


 私とジオ様は、すでに『亀巾着』に向かって走っていた。



 先に『亀巾着』に挑みかかっていた獣人たちは皆、イソギンチャクの様な皆触手に絡めとられてしまった。


「みんな!いま助けるよ!」


 私とジオ様で、獣人たちを絡めとった触手を切り落としていく。

 その間にも別の触手が襲いかかって来るので、それ対処しながらだから休む暇もない。


「みんなは下級の魔物をお願い。こいつは私達が何とかするから!」


 触手に捕まっていた獣人たちは『亀巾着』から離れてもらった。

 再び捕まってしまったら助けるのに手間がかかるから仕方がない。


「私が触手を捌くのでジオ様は本体をお願いします」


(わかった。頼むぞララ)


 私はジオ様の周囲から襲い掛かって来る触手を片っ端から切り払っていく。


 その間にジオ様は甲羅の本体に接近する。


 ジオ様がロングソードを振りかざすと、硬い甲羅が細かく切り刻まれていく。

 そして甲羅の一部に穴をあける事が出来た。


(俺は中に入って魔結晶を切り離す。それまで援護を頼む)


「はい!お気を付けて!」


 ジオ様は甲羅の穴に入って、肉片を切り刻みながら奥へと進んで行った。


 甲羅の穴から魔物の肉片が次々放り出される光景は結構グロい。




 私はその間、体内のジオ様を排除しようと迫って来る触手をひたすら切り払い続ける。


 ・・・夫の仕事のサポートをするのって、何だかすごく妻っぽくていいよね!


 ジオ様と二人で戦う時は、私が前に出るよりも、やっぱりジオ様がメインで私がサポートに徹する方が嬉しくなってしまう。



 しかし、全ての触手が一斉にジオ様のいる穴の方に迫っていたので、とんでもない数の触手を相手しないといけない。

 夫婦気分に酔いしれている場合ではなくなってしまった。


 でも、一本たりともジオ様のところには行かせないよ!


 私が鬼神のごとくレイピアを振るって触手を切り払っている間、甲羅の穴からは次から次へと魔物の肉塊が放り出されて行く。


 体外に放り出された肉塊は白い蒸気を放って消滅していくのだが、消滅が追いつかずに次第に肉塊の山が出来ていた。


 一見、巨大なサイコロステーキを積み上げているみたいになってしまった。



 ・・・魔物じゃなかったら亀肉のシチューが作れるのにな・・・とか考えていると、やがて、甲羅の穴から肉塊ではなく魔結晶が飛びだした。


 ジオ様が魔結晶を見つけて切り取ったのだ!


 それと同時に、触手は一斉に停止しぼたぼたッと地面に落ちた。




 そして穴から全身血まみれのジオ様が出てきた。


 まあ、魔物の血だからすぐに蒸発するんだけどね。




「やりましたね!ジオ様」


(ああ、思ったより時間がかかったな)


 魔結晶を失った『亀巾着』は全身の甲羅の隙間から蒸気を噴き出して消滅し始めた。


(他はどうなっている)


「ついさっき二体目の中級の魔物が落下したみたいです、それは獅子の人が対応しています」




 近くで下級の魔物を対応していた人がそう言っていた。




(俺達も加勢に行こう)


「そうですね、すぐに向かいましょう」


 私とジオ様が、獅子頭が戦っている中級の魔物の場所へ移動しようとすると・・・


 私達の足元に大きな影が出来たのだった。


 上を見ると・・・


 大きな塊が真上から降ってくるところだったのだ。


「また、中級の魔物!」


 私とジオ様は、その落下地点から一瞬離れた。


 その直後に、巨大な塊が地面に激突したのだ!




 ・・・それは・・・ノコギリザメに手足の生えた中級の魔物だった。



 あの長いノコギリを振り回されたら、迂闊に近づけないし、かなり手ごわい相手だったよ。


 ・・・振り回せたらだけどね!




 ノコギリザメはノコギリが地面に突き刺さって、逆さまになったまま身動きがとれなくなっていたのだ。


 落下の衝撃から回復し、動ける様になったみたいだけど、手足をじたばたするだけで、地面に深々と突き刺さったノコギリは全く抜ける気配がしない。




 ・・・ちょっとかわいそうだけどこのまま倒させてもらおう。


 私はジオ様と二人で、地面に突き刺さった鮫の肉を三枚におろし、魔結晶を探すために肉を切り刻んでいった。


 刻んだ鮫肉がてんこ盛りになってしまったよ。


 鮫の肉って前に食べた事があるけど、肉自体は淡白であまり味がしないんだよね。

 味付け次第で食べられなくもないんだけど、折角だったらもっとおいしい魚を食べた方がいいよね?


 まあ、魔物だからやっぱり食べられないんだけど・・・




 やがてほとんど骨だけになった鮫のはらわたの中から魔結晶が出てきたのだ。




 地面に突き刺さった巨大な魚の骨のオブジェは蒸気を放ちながら次第に消滅していった。


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