4話 勇者の弟子と獣人の宴
その日の夜はニニのはからいで、私たちの歓迎の宴を開いてもらえる事になった。
ニニが、事情を説明したら皆理解してくれた様だ。
彼らからしたら、いきなり恥部を露出したよそ者が現れたのだ。
危ない連中だと思うのは当然だった。
私たちだって、いきなり下半身丸出しの外国人がやってきたら、不審者だと思って警戒すると思うもの。
習慣の違いという事が、お互いに理解できれば対立する必要はなかったのだった。
宴の会場には50人程度の獣人が集まっていたが、やはり圧倒的に犬系と猫系が多い。
他には馬っぽいのや牛っぽいの、兎などの小動物系と、やはり見た事も無い様な動物もいる。
「ねえ、ニニ。色々な種族の動物の人がいるけど、やっぱり同じ種族同士で無いと子供は作れないのかな?」
私は素朴な疑問をニニに投げかけた。
「そうですね、私達猫族は猫族同士で子供を作りますし、犬族は犬族同士で子供を作ります。他の少数種族もそうですね」
「違う種族同士で恋に落ちる事って無いのかな?」
「あまり聞いた事はありませんね。友好関係は結べますが恋愛や結婚に至る事は無いと思います」
「やっぱりそうだよね。動物も同じ種族同士じゃないと子供は作れないもんね」
「ただ、おそらく、どの種族の獣人も人間との間でしたら子供を作る事が出来ると思います」
「えっ!私たちとなら子供が出来ちゃうって事?」
「はい、おそらくですが、わたしたちは普段、違う種族の異性に性欲を感じる事は無いのですが、ララ達に対してはどの種族の男性も性欲を感じてしまうみたいなのです」
「それってどういう事なんだろ?ここの獣人たちってやっぱり元は人間だったって事?」
「この島の獣人たちはかなり昔からここに住んでいた様です。その発祥については何も記録が残っていません。ただ、私の過去の記憶では、向こうの大陸で何度か獣人に遭遇しています。おそらくこの島から出てきた獣人だったのではないかと思います」
「それは私も何度か会った事があるよ。でも、ここの獣人たちの様に全身が毛に覆われているタイプの他に、耳と尻尾が付いているだけでほとんど人間と同じ見た目のタイプの獣人もいた気がするけど?」
「おそらくそれは獣人と人間とのハーフなのではないかと思います」
「ああ、そうか!獣人の特徴が薄れて来るとああなるのか!」
何だか納得できる気がする。
私たちがいた大陸では、耳と尻尾だけの獣人の方が比較的多く見かけていたのだ。
この島の獣人の様に、全身が毛に覆われて動物の体質に近い獣人の方が珍しかったのだ。
そして、耳と尻尾だけの獣人は、それらで集まって集落を作って暮らしていたのだ。
確か猫耳の集落とか犬耳の集落とかあった気がする。
彼らは人目を忍んで生活する事が多かったので、一般の人間はそれほど遭遇する機会が無かったかもしれないけど、私やニニは魔女だったために特別な事情で彼らに会う機会があったのだ。
「ララ!猫さんとすっかり仲良しだね!」
ニニと話し込んでいたらレダが私に飛びついてきた。
「この、顔の布してると暑いよ!取っちゃだめかな?」
「それはここでは下着みたいなものだから人前で外したらだめなんだよ」
「あたしは知り合いの前だったら下着を脱いでも恥ずかしくないよ?ここのみんなとはもう仲良くなったし、ダメかな?」
・・・それはそれで問題だった。
「ふふふっ、ここでは首から下は隠さなくてもいいのですけど、毛の生えていない顔だけは、人前に晒してはいけない掟があるんですよ」
ニニがレダに説明してくれた。
「なんだ!首から下は脱いでもいいんだ!それじゃぁ!」
レダは、パパっと服を全て脱ぎ捨ててしまった!
顔だけ布で隠して首から下は素っ裸という、さっきのミラと同じで、ちょっと危ない姿になってしまった。
「レダ!そういう意味じゃないよ!」
「えっ?ちがうの?」
「いえ・・・違いませんけれど・・・」
ニニもどうしたものかと、苦笑いしながら少し困り顔だ。
「だって他にも服を着ていない人たちがいっぱいいるよ?」
レダの言う通り、獣人たちはいつの間にか半数以上が服を着ていなかった。
屋内だし、宴会で盛り上がって、暑くて脱いでしまったのだろう。
ただ、彼らは全身が毛に覆われているので、裸という感じはしないのだが・・・
「まあ、顔を見せなければ問題無いと思いますよ。本人がそれでいいのでしたら」
「やったあ!裸でもふもふに埋もれてみたかったんだ!」
レダは全裸のまま、すっかり仲良くなってしまった狼頭のところに行って思いっきり抱きついてしまった!
「わあ!やっぱり気持ちいいい!」
「おう!お嬢ちゃん、くすぐったいじゃねえか!」
「もふもふ気持ちいいよぅ!」
狼頭も服を脱いでいたので・・・これって全裸の男女が抱き合っている事になってしまうよね・・・
レダは一応皇帝の妃で既婚者なのに、全裸で他の男性に抱きついていいんだろうか?
確かに帝国では多夫多妻は認められてるけど・・・
レダにとっては獣人たちは動物扱いで、異性として見えていないのかもしれないね。
とは言っても、見た目が全然いやらしくないのはなぜなんだろう?
どう見てもお風呂上がりの女の子が、ペットの大型犬とじゃれ合っている様にしか見えないや。
・・・でも確かに気持ちよさそうだな・・・
私もちょっとだけやってみたくなってしまった。
・・・いやいや、旦那のいる前で裸で他の男性と抱き合うなんて絶対だめだった!
「レダだけずるいです。わたくしもそれやります!」
ミラまで服を脱ぎ始めてしまった!
・・・どうやらお酒を飲んで、かなり酔っているみたいだ。
「ちょっと!ミラ、さすがに成人女性は・・・」
私が止めるのも聞かず、あっという間に全裸になってしまった!
・・・さっきはあんなに恥ずかしがっていたのに・・・
そして、そばにいた犬系の女性に抱きついてしまったのだ!
あ、そっか、別に女性相手でも良かったんだ。
ミラは長毛の犬系の女性と気持ちよさそうに抱き合っていた。
どうやら相手の女性もまんざらでもない様だった。
レダもミラも気持ちよさそうだし・・・私もますますやってみたくなっちゃうじゃない!
あれっ?そういえばジオ様は?
ジオ様が近くにいなかったので探してみると・・・
なんと、ジオ様とルルは女性たちに抱きしめられてもみくちゃにされていた!
・・・前にもあったなこんな事。
(すまない、ララ。抵抗しきれなかった)
ジオ様もルルも裸の女性獣人たちのもふもふした胸に埋もれて気持ち良さそうだった。
・・・う、うん・・・ジオ様も楽しそうで何よりだよ。
こうなったら私ももふもふを満喫してやる!
「ニニ!私たちもしよっ!」
私は隣にいたニニの服をはぎ取った。
比較的ラフな格好のニニの服は簡単にはぎ取る事が出来てしまった。
「あっ!ララ、何をするのですか?」
そして私も思い切って服を脱ぎ捨てた!
「ニニ!もふもふさせて!」
私はそう言ってニニに抱きついた!
・・・これはっ!
長毛種猫のニニの体毛は予想以上にふわふわだったのだ。
「ニニ!すごい気持ちいいよ!」
「ララってば・・・いきなり何するんですか」
「ごめん、嫌だった?」
「・・・いやじゃ、ないですよ。ララの、すべすべの肌も気持ちいいです」
「ふふっ、ニニのふわふわも、とっても気持ちいいよ!」
しかしこれは癖になる気持ち良さだよ。
まさかここまで気持ちいいとは。
ふと周りを見ると他の獣人たちも、お互いに抱き合っていた。
どうやら獣人の宴のしめは、こういうものだったらしい。
・・・じゃあ、遠慮はいらないか?
私はニニのもふもふを全身で思いっきり堪能させてもらったのだった。




