3話 勇者の弟子と獣人の町
ニニと話しながら歩いていくと、やがて目の前に石でできた強固な城壁が現れた。
「ここが私たちの都です」
「へえー!思ったより立派な城壁だね」
「はい、優れた石職人がいますので」
獣人たちの技術レベルは意外と高いみたいだね。
ニニが門番と交渉して、私達は都に入る事が許可された。
門を通過する際に、門番からくれぐれも人前でマスクを外す事が無いようにと念押しされた。
・・・まあ、ここでは人前で下着を脱ぐような行為だからね。
さすがにそれはしない様に気を付けよう。
一応ルルの顔にも薄いガーゼを巻いて顔を隠してある。
城門をくぐって中に入ると、近代的な街並みが広がっていた。
石造りの建物と木造の建物が混在しているが、いずれも比較的高い技術レベルの建築物だった。
「なんか、先入観で獣人たちって、もっと自然に近い生活をしてるものだと思い込んでたんだけど、結構文化的な生活をしてるんだね?」
町を歩いていくと、店頭に並ぶ服や小物類なども、私たちの国と同じレベルか、物によってはそれ以上の品質のものが置いてある事もあった。
「そうですね、魔法が使えない分、ものづくりや工芸の方に力を入れて、生活を豊かにするようにしてきたからなのかもしれません」
そして、町の中には様々な動物の頭の人たちが歩いていた。
比較的犬系と猫系の動物が多くみられるがそれ以外の種類の動物や、見た事も無い動物の頭をした人もいた。
ほどんどの獣人が普通に服を着ているが、時々何も着ていない獣人も見かける。
そして顔に布を巻いた女性もしばしば見かける。
「あの、顔に布を巻いた女性たちは既婚者っていう事かな?」
私は小声でニニに尋ねた。
「そうですね、新婚の女性や、子供を作る予定の女性は顔の毛を剃りますので、外出する時は顔を隠します」
・・・でもそれって、自分は今エッチしてます!って言って回ってるようなものだよね?
「・・・もしかして私達もそういう風に見られてるって事?」
「・・・知らない人はそう思うでしょうね」
うーん、シィラ以外の三人は間違ってはいない様な気もするんだけど・・・そういう目で見られてるのって、なんかやだな・・・
「レダもそう見られてるって事だよね?」
「はい、レダさんの年齢での結婚は認められていないので・・・あの年で顔の毛を剃っていると、少し問題があるかもしれません」
・・・やっぱりそうだよね?とりあえずレダの年齢を聞かれたらはごまかしておいた方がいいかな?
一応、本当に既婚者なんだけどね。
「服を着ていない人もいるけどあれはいいの?」
「はい、首から下は人前で隠さなければいけないという決まりはありません・・・ただ、皆さんの様に全く毛が生えていない場合は、どうなのでしょう?・・・体の毛を剃るという習慣はありませんので」
・・・うーん、一部分だけ生えてる場所もあるんだけど・・・
私の場合は薄くてほとんど生えていないみたいに見えるし、レダに至ってはまだ生えてないからね!
って言っても人前で見せる気は無いから関係ないんだけどね!
「とにかく、まずはミラに会わせてもらえないかな?」
「先に捕らえたという方ですね?おそらく憲兵が留置所に連れて行ったと思いますのでそちらに行ってみましょう」
私たちはニニに案内されて留置所に向かった。
ニニが確認するとやはりミラはここに連れて来られていたので、すぐにミラが捕らえられている檻に案内してもらった。
「ミラ!無事だったのね!・・・でもその恰好は!」
「ララ!・・・無事じゃないです!・・・恥ずかしいので何とかして下さい!」
ミラは檻の中で全裸にされて、動けない様に手足を縛り付けられていた。
顔だけは布を巻かれて隠されていたのだが・・・首から下は胸や局部が全てが丸見えという、ある意味、かえって煽情的な格好にさせられていたのだ。
「どうしてミラがこんな姿に?」
私はニニに尋ねた。
「罪人は基本、身に付けている物を全て没収して拘留するものなのですが・・・手足を縛っているのはなぜですか?」
ニニが看守に尋ねた。
「はい、この女、顔の毛を剃っていたので顔だけは布を巻いて檻に入れたのですが、その後、勝手に顔から布を外して胸や腰に巻き直しちまうんです。こんな欲情的な顔を丸出しで見せつけられちゃあ、俺ら興奮して仕事にならねえんで、仕方なく、顔の布を外せない様に手足を縛ってたんでさあ」
・・・体は裸でもそれほど興奮しないんだね?
今のミラの姿って、人間の男性が見たら欲情して大変な事になってしまうと思うんだけど・・・
「ニニ!とにかくすぐにミラを解放してあげて!」
「この方は罪人ではありません。すぐに釈放しなさい」
ニニの命令でミラは拘束を解かれ檻から出された。
「ララ!」
ミラは全裸で私に抱きついてきた!
「捕まってからこの恰好で町の中を連れて来られたんです」
うわー、全裸で町中はきついな。
ここの獣人たちは何とも思わないのかもしれないけど。
「ララ以外に裸を見せるつもりは無かったのに、大勢の人に見られてしまいました・・・」
・・・いや、シンにも見せてるよね?っていうかエッチもしてるよね?
「シィラ、ミラに何か羽織る物を」
「はい、かしこまりました」
シィラが、赤ちゃん用の予備のショールを取り出してミラに掛けた。
「それでしたら、没収した服と装備をすぐに持って来させます」
ニニが看守に指示をしていた。
しばらくして、ミラの装備一式が届けられた。
ミラは装備を付け直してやっと落ち着いた。
「ううっ、恥ずかしかったです」
何はともあれ、ようやくこれで全員が揃ったのだった。




