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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第8章 未踏の島
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12話 勇者の弟子と獣の魔女

 その大型動物は、二本足で立って歩き、人間と同じ様に服を着て道具を持っていた。


 というか、人間の頭が動物に置き換わっていると言った方が早いかもしれない。


 犬の様な頭の人や、馬のような頭の人もいる。

 他にも、様々な動物の頭をした人たちがいたのだ。




「ララ!あれは何?」


 レダが私に向かって叫んだ。


 その声に、遥か遠方の獣頭の人が気付いた。


 獣頭の一人がこっちを見たのだ。




 まずい!気付かれた。




「レダ!一旦離れるよ」


 私は小声でレダにそう伝えた。


「うん!わかった」



 私とレダとジオ様は、その場を離れた。


 獣頭の人達が追ってきていた様だが、何とか振り切る事が出来たみたいだ。




「ララ、さっきのは何だったの?」


「多分人間だとは思うんだよね」


「でも頭が動物だったよ?」


「獣人って奴じゃないかな?」




 実は『強欲の魔女』の過去の記憶の中で何度か遭遇した事はあるのだ。


 その種類も様々で、動物の耳と尻尾だけが付いた人から、頭だけが動物の人、それから全身が毛に覆われている人もいた。


 知能レベルも様々で、全く人間と変らない者から、動物の知能レベルそのままの者までいたのだ。




 さっきの獣人たちは服を着て道具を持っていた事から、人間に近い知能を持っている事は間違いない。


 もしかしたら話し合いが出来たかもしれない。




 だけど私が咄嗟に逃げる事を選んだのは・・・


 彼らから敵意を感じたからなのだ。


(ジオ様はどう思いました?)


(彼らからは強い殺気を感じた。おそらく最初から話し合いに応じる事は無いだろう)


 ジオ様も同じ意見だった。


「ミラたちが心配だよ。とりあえず砂浜に戻ろう」


「そうだねララ!」




 あの獣人たちがミラやルルたちを見つけたらまずい気がする。


 私たちは急いで砂浜に戻った。




 砂浜に着くと、そこにはすでに大勢の獣人たちが集まっていたのだった。


 その中心では、ルルを抱えたシィラが、まさに獣人に捕らえられそうになっていたのだった。




「シィラから離れなさい!」


 私はレイピアを抜いて獣人たちの中に切り込んでいった。


 私に気が付いた獣人が、剣を抜いて応戦する。


 そこそこ腕は立つみたいだが、私の敵ではない。

 適当にあしらって、次の獣人と対峙する。


 私が次々と獣人を叩き伏せていく隣では、ジオ様とレダも獣人たちを倒していた。


 獣人たちの数を減らして行き、シィラの近くまで来る事が出来た。




「シィラ!大丈夫?」


 シィラは狐頭の獣人に腕を掴まれていた。


「ララ様!」


「シィラ!いま助けるよ!」


 私はシィラとの距離を一気に詰めようとした。


 するとその時・・・獣人が言葉を話したのだ!


「おっと、おとなしくしねえとこいつがどうなっても・・・」


 


 ・・・しかし、最後まで言い終わる前に、ジオ様がその獣人を吹っ飛ばしてしまった。



 ・・・まあ、何を言おうとしたのかは、大体わかるから別にいいのだが・・・



「シィラ、大丈夫だった?ミラはどうしたの?」


「ミラ様は、わたくしとルル様が人質に取られてしまってしまったので、やむなく抵抗をやめて、あいつらに連れていかれてしまったのです」


 何てこと!ミラがつかまってしまったなんて!


 こうなっては仕方がない。


 私は残りの獣人たちを見回し、この集団のリーダーと思われる狼頭の獣人を見つけた。


「ジオ様!レダ!、こいつらのリーダーを人質にしてミラと交換に行くよ!」


(了解した)


「まかせて!ララ!」


 ジオ様とレダは、一気に残りの獣人たちを叩きのめしていった。



 そして最後に一人残った狼頭の獣人に私とレダが剣を突きつけた。



「どうなってんだ!何でメスとガキがこんなに強ええんだ!」



「そんな事よりミラをどこに連れて行ったの?案内しなさい!」


「あの女もそうだがお前らいったい何なんだ!堂々と恥部を人前に晒して、恥ずかしげもなく人に命令するんじゃねえ」



 ・・・はあ?恥部なんてどこも露出してないよね?


 私は自分の身なりを確認した。


 何言ってるんだろう?こいつ。




「ちょっと!何言ってるの!恥ずかしいとこなんて見えてないでしょ!」


 私は狼頭の目の前に顔を近づけて言い放った。


「わ!やめろ!そんなエロい物、間近で見せられたら、発情が抑えられなくなっちまうだろ!」


 見ると、狼頭の股間が大きく膨らんでいた。


 そして私の顔から目を背けようとしつつも目が逸らせない様な、おかしな挙動をしていた。



 ・・・これって、もしかして・・・



「あなた・・・私の顔を見て発情してるの?」


「当たり前だろう、毛を剃った素顔なんて、この世で一番エロい物を見せつけやがって!変態か!お前ら!よく恥かしくねえな!」




 ・・・どうやらここでは、毛の生えていない顔を人前に晒すというのは、下着を着けずにあそこを丸出しにしているのと同じ状態だったらしい・・・



「あの女の顔もかなりエロかったが、お前ほどのエロい顔はいままで見た事がねえぞ!とんでもないエロさだなお前は!」



 ・・・褒められてるんだか侮辱されてるんだかよくわからないんだけど・・・



「いいからミラのところに案内しなさい!ミラをどこに連れて行ったの?」


「あの女はわいせつ物を人目に晒した罪で長のところに連れて行った!もちろんお前らも同罪だがな!」




 ・・・うん、道徳観念が私たちとは異なる事が良くわかったよ・・・




 ・・・まあ、それはともかく・・・




「わかったわ!その長のところへ案内しなさい」



「ああ、元々お前らも捕らえて長の元へ連れて行くつもりだったからな。連れて行ってやるぜ」



「じゃあ、さっさと行きなさい!」




「それには及びません」




 その時、背後からきれいな女性の声がした。



 振り返ると・・・



 そこには猫の顔をした女性が立っていたのだ。




「長!なぜここに?」




「旧友が尋ねてきたのです。出迎えない訳にはいきません」

 



 猫の顔の女性は、その大きな目を細めて、わたしに向かって微笑みかけた。




「ひさしぶりですね?ララ」




 ・・・・・そう・・・猫の顔をしたその女性は・・・・・




 私の知っている魔女だったのだ。


第二部第8章 完結です。

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