11話 勇者様と無人島探検
「お腹も膨れて落ち着いた事だし、まずは状況の確認をしよう」
私はみんなの食事が終わったところで提案した。
「まず私だけど、魔法と身体強化は使えなくなってる。それに装備も魔力による強化が無くなってるね」
そう、『附加装備』も魔力による能力増強が効かなくなっていた。
しかし、元々の素材として使われているレアメタルなどの成分による性能はそのままだ。
やはり『魔力』にかかわる事だけが無効になっている様だった。
「大丈夫なのですか?ララ」
ミラが心配してくれた。
「まあ、昔と同じ状態に戻っただけだから大した事は無いよ。身体能力やその他のスキルはそのままみたいだしね。それに普段から魔法や身体強化は極力使ってないからね」
「では次にわたくしですが、わたくしも身体強化は使えなくなっています。ですがわたくしも剣術において大きな支障はありません。魔法は元々大したものは使えませんでしたので、あまり影響はありません」
ミラも元々、剣士だし、最近の私との練習で、身体強化を使わない戦い方にシフトしていたところだったのだ。
「次はあたしだね!巨大化はやっぱりできないみたいだよ。でも最近は使ってなかったし、このままでも十分戦えるからね」
レダも元の体で強くなるための訓練をしてたからね。
それにレダの一族は、巨大化しなくても、元々普通の人より筋力が強いのだ。
「わたくしも特に普段と変化はございません」
シィラも魔法はほとんど使えなかったので、なんら影響はなかった。
・・・ジオ様も勇者の力はいつも通り使えるらしい。
勇者の力は元々魔力とは関係ない別物だからね。
でも魔力に依存した魔法はやはり使う事が出来なくなっているそうだ。
とは言ってもジオ様も普段はほとんど魔法を使わないからね。
「つまり、みんなほどんど大きな支障は無いって事だね?じゃあ、この後は島の探検に行こう!」
「ちょっと待って下さい、ララ様。ルル様もいらっしゃいますし、魔法が使えない状態で探検なんて危険なのでは?」
シィラの言う事も、もっともだった。
「でもせっかくの機会だし、ちょっとでも良いから探検したいな」
「ララ様、こんな時にわがまま言わないで下さい」
「それでしたら、わたくしがルルちゃんを見ていますから、皆さんで探検してきてはいかがでしょうか?」
ミラがルルと一緒に残る事を提案してくれた。
「いいの?ミラ」
「はい、かまいません」
「でしたらわたくしが残ります。ルル様のお世話はわたくしの仕事です」
シィラも残る事を申し出た。
「ええっ!ばらばらになるのはやだよ!みんな一緒がいいよ!」
レダはミラとシィラの申し出に反対した。
「そうだね、何が起こるかわからないし、レダの言う通り、みんなで一緒探検に行こう!」
確かに、これだけのメンバーが揃っていればルルを連れていても大丈夫だね。
「仕方ありませんね。でも探検は今日一日だけですよ。明日になったら魔動馬車を復活させてこの島から離れて下さい。いいですねララ様」
「わかったよ、シィラ。今日何も見つからなかったら一旦諦めるよ」
「そうと決まれば、早速出発だよ!」
「ほんとにララ様はじっとしていられない人ですね」
ルルは私がスリングに入れて運ぶ事にした。
私たちが到着した砂浜は、その先が森になっている。
とりあえず森を進むしかないので、私たちは森に踏み入っていった。
森は私にとってはあそび場みたいなものだ。
方角や通った経路など、迷う事は無い。
普段なら木から木へと飛び移っていくのだが、今はルルを抱えているし、シィラもいるので普通に地面を歩いて進んで行く。
生えている木の種類は、知っている物が多いが、一部見た事もない種類の木も生えていた。
食べられる木の実のなる木もあるかもしれないし、後で調べてみたいな。
この森は、木の密度がそれほど高くなかったので歩くのに支障は無かった。
比較的順調に距離を稼ぐ事が出来た。
うさぎの仲間や鳥も見かけたので、夕食は肉が食べられそうだ。
いずれも私たちの国で見るものと若干違うが食べられない事は無いだろう。
更に進んで行くと・・・今度は大型の動物の気配を感じた。
おそらく魔物では無いが、サイズ的には人間と同じくらいかそれ以上あるかもしれない。
もし凶暴な動物だったら危険だ。
「私とジオ様で見て来るからルルをお願い」
私はルルをシィラに預けた。
「行きましょうジオ様」
「ララ!あたしも行くよ」
「わかった!じゃあ、ミラはシィラとルルの護衛をお願い」
「わかりました」
私とジオ様、それにレダは、大型動物の気配を感じた方に接近した。
近づくと気配が複数ある事に気が付いた。
「狼系の肉食動物の群れかも知れない。みんな、気を付けて!」
まあ、普通の狼程度だったら何とでもなるんだけど・・・
やがてそれが目視できる距離まで違づく事が出来た。
私たちは距離を取って一旦止まり、それらの様子を窺った。
そして・・・それを見た私たちは驚きを隠せなかった。
一見、獣のように見えたそれらは・・・・
獣のような特徴を持った人間だったのだ。