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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第8章 未踏の島
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8話 勇者の弟子と未知の海

 レダの国を出発した私たちは途中で転移魔法を描いて魔動馬車を呼び寄せた。


 レダの屋敷の地下の魔法陣は二人にも秘密なので、魔動馬車はレダの国を出た後に、呼び寄せる事にしていたのだ。


 魔動馬車にはシィラとルルが乗っている。

 これでようやく全員が揃ったのだ。




「わあい!ルルちゃん久しぶり!」


 レダはルルをだっこして頬擦りしている。


「シィラ殿、久しぶりです」


「ミラ様、ご無沙汰しております」


 二人はお互い深々とお辞儀をして挨拶を交わしていた。


「そんなお堅い挨拶は無しだよ!みんな家族なんだから!」




 メンバーが揃ったところで、いよいよ新大陸への船出だ。


 船出と言っても、船じゃなくて魔動馬車だけどね!




 よく考えたら、人類未踏の新大陸への初の冒険だというのに、女子供だけのパーティーだった。


 しかも赤ちゃん連れという暢気さだった。


 まあ、その赤ちゃんというのが人類最強の「勇者」だし、かくいう私も『強欲の魔女』という構成だから、大抵の事は何とかなっちゃうけどね!


 それにいざとなればどこからでも転移魔法で家に帰れるからね!




 メンバーが揃った私たちは、魔動馬車で大陸の南の海岸にやって来た。


 先日の魔物の大襲撃の際に、ジオ様とシンで『上級の魔物』の上陸を食い止めた場所だ。

 あの時は海岸から際限なく魔物が押し寄せてきたが、今は静かな海岸だ。




「じゃあ、新大陸に向けて出発するよ!」


「うん!何が起こるか楽しみだよ」


「ララと一緒ならどこへでも参ります」


「わたくしも、どこまでもララ様についていきます」


(ララ、何があってもみんなは俺が守る。安心しろ)


 ふふっつ!みんな頼もしいね!




「じゃあ!出発!」




 魔動馬車は未知の海へ向けて走り出した。


 そして前回同様、海では周りに一切の障害物が無いので速度を上げていく。




「わあ!馬車が海の上を走ってるよ!すごーい!」


「話には聞いておりましたが、本当に海上を走れるのですね」


「砂漠の大陸にもこうやって来たんだよ」


「そうなんですね。大船団で渡っても危険な海峡をどうやって渡って来たのか不思議でしたが、海の魔物が現れた時はどうするのですか?」


「それなら大丈夫だよ。たまに魔物が現れる事はあるにはあるんだけど・・・」


 私は何もない海原を見渡した。


「あっ!ほら!いた!」


 前方の会場に小さな水飛沫が見えた。

 おそらくあれは魚ではなく魔物だ。



 ・・・しかし魔動馬車は、その水飛沫の横を一瞬で通り過ぎてしまった。



「ほらね、この馬車の速度が速すぎて、海の魔物は追いつけないから、襲撃される事は無いんだよ。真正面に魔物が現れたとしても、魔動馬が勝手によけてくれるからね!」



 そう、海の魔物の移動速度は、だいたい、一般的な馬車が地上を走る時より少し早い程度だ。


 ふつうの速度だったら、追いつかれて攻撃されてしまうのだが、現在、魔動馬車は一般的な馬車が地上を走る速度の5倍くらいの速度で海上を走っている。

 魔物が攻撃しようにも、一瞬で通り過ぎてしまっては攻撃が出来ないのだ。


 真正面に中級の魔物が現れた時はどうしようもないが、その時は私やジオ様が倒せばいい。

 それも、この速度では、偶然出くわす可能性も極めて低いのだった。


 前回の時も、結局ほとんど魔物と交戦せずに海を渡ってしまったのだった。




「そうなんですね。それなら安心です」


「前回は途中で『くじら』に出会ってびっくりしたけどね」


「『くじら』とは何ですか?」


「『上級の魔物』くらいの大きさのある海の生き物だよ」


「ええっ!それって危険なのではないですか?」


「くじらは頭が良くて性格の穏やかな生き物だから大丈夫だよ。前回もしばらく並走してたけど何もして来なかったんだよ」


「それならいいのですが・・・それにしても魔物以外でそんなに大きな生き物がいるなんて信じられません」


「おっきな生き物、あたしも見てみたいな!」


 レダもくじらの話に興味があるみたいだ。


「海には他にも不思議な動物がいっぱいいるみたいだよ」


「へえ!そうなんだ!見てみたいなぁ」


「海の生き物はみんな水の中で生活していて海上には滅多に出て来ないから、魔動馬車から見る事が出来るのは、ほんの一部かな?」


「確かに・・・先ほどから、生き物の姿をほとんど見ませんね?」


「何もいない様に見えるけど、実際には水中には地上よりも多くの生き物が生息してるんだよ」


「ララはどうしてそんなに海の中の事に詳しいの?」


 レダが人差し指を唇にあてて、小首をかしげて私に尋ねた。


 レダのこういう仕草は本当に可愛いな。


「それは以前にね・・・」


 私は人魚の里の事を話そうとした。


「ララ様!その話は!」


 あっ!そうだった!人魚の事は秘密だったんだ!

 シィラが止めなければ、うっかり話しちゃうところだったよ!


「どうしたの?ララ」


「前にね魔法で海の中を魔物を討伐した事があるんだよ。その時に見たんだよ」


 微妙に話を濁しておいた。


「ララは海の中で魔物と戦えるの?」


「まあ、こう見えても勇者だからね。勇者の能力で水中でも長時間動けるんだよ」


「そうなんだ、いいなあ、ララは」




 ふう、ちょっと苦しかったけど何とか誤魔化せたかな?


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