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勇者の弟子はお嫁さんになりたい!  作者: るふと
第7章 勇者誘拐
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12話 勇者の弟子と依頼主の正体

「ジオ様!ルルをお願い!」



 ヒナちゃんの姿が消えそうになった瞬間、私は咄嗟にルルをジオ様の前に寝かせ、短距離転移でヒナちゃんの隣に瞬間移動してヒナちゃんの手を掴んだ。





 「ララ様!今どうやって?」


 私が突然目の前に現れて驚いているヒナちゃんと一緒に、周りの景色が変わった。


 ヒナちゃんが転移する前にヒナちゃんの手をしっかり握ったので、私も一緒に転移出来たのだ。


 あと一瞬遅かったら間に合わなかった。

 普通に駆け寄らずに咄嗟に短距離転移を使って正解だったよ。




 ・・・私たちが転移させられたのは、薄暗い広間のような場所だった。




「なんでお前らまでついて来ちまったんだよ」


 誘拐犯のリーダーが、呆れた顔で私を見ていた。


「あなたがヒナちゃんを解放するふりをして、一緒に連れて行こうとするからでしょう?」


「俺は知らねーよ! 俺はちゃんとそいつを解放したからな、これは俺の責任じゃねえ」



 この様子だと本当にこいつの仕業ではないみたいだね。




 そして、その隣には例の囚人がへたり込んでいた。




「彼女は大丈夫なの?」




 ・・・そう・・・その囚人は女性なのだ。




「さあ?食事を与えても食べねえし、何を言っても一言もしゃべらねえ。まあ、俺としちゃ、依頼主にこいつを引き渡しちまえば仕事は完了だ」




「その依頼主というのが・・・あれね?」




「・・・ララ様・・・あれは・・・『魔王』ですか?」




 ヒナちゃんが、驚きと恐怖を含んだ表情で私に問いかけた。




 ・・・そう、この場所はどこかの城の謁見の間だ。


 そして、その玉座に座っている人物は・・・・・


 まるでおとぎ話に出て来る『魔王』の様な、真っ黒な甲冑に全身を包んでいたのだ。




「よお!ご依頼の囚人を連れて来たぜ!これで依頼完了でいいよな?」




 『魔王』は静かに頷いた。




「こいつらは勝手について来ちまったんだ。俺のせいじゃねえからな。あんたの仕業だろ?」




 『魔王』はゆっくりと私の方を見た。




「ひさしぶりね!元気だった?」


 私は『魔王』に声をかけた。




 ・・・『魔王』は無言のまま返事が無かった。




「何だよ、やっぱりあんたら知り合いかよ?」


「そりゃあ『勇者』だもの!『魔王』とは深い因縁があるのよ」


「・・・こいつ・・・本当に魔王なのか?確か数年前にあった魔王騒動は当時の『勇者』が鎮圧したんだよな?何でこいつ生きてんだ?」


「『解決した』とは報告したけど『殺した』とは言ってないよ」



「って、事は、やっぱりこいつは本物の魔王って事かよ?」




 ・・・『魔王』の正体はわかっているし、あの後も遭遇している。

  でも、この男やヒナちゃんのいる前で、その話をするわけにはいかないからね!




「あからさまに魔王にしか見えない恰好をしてるんだし、そうなんじゃないかな?まあ、少なくとも数年前にあった魔王騒動の張本人である事は間違いないよ」



「・・・何か隠しているような気もしねえでもねえんだが、まあ、そういう事にしておくよ」




 ・・・やっぱりこいつ、鋭いよね。




「さてと・・・せっかく会えたんだし、少しお話ししましょうか?」


 私は魔王に向かって話しかけた。




 ・・・やはり魔王は反応が無い。




「なあ、俺はもう用済みだろ?ここから先の話は聞かねえ方が良さそうだ。残りの報酬さえ貰えれば俺はこの場を立ち去るぜ?」


 誘拐犯のリーダーは、私の方をちらちらと見ながら魔王に話しかけた。




 少しの沈黙の後・・・魔王が男の方を見ると、男の目の前に革袋が現れた。


 男が中を確認すると、どうやら報酬が入っていたらしい。


「確かに頂いた。じゃあ、俺はこれでおさらばするぜ。また仕事があったら引き受ける。ただし勇者がらみの仕事はもうお断りだ」


 男は私の方を見て軽くウィンクした。


 確かに、私もこいつとはあまり関わりたくないかな。



「じゃあな、『勇者様』」


 そして、男の姿が揺らぎ始め、やがてその姿はかき消えていた。


 ・・・そういえば名前も聞いてなかったな・・・まあ、聞いても仕方ないけど。

 再び敵対する事が無い事を祈ってるよ。




 誘拐犯のリーダーだった男がいなくなって、この場に残ったのは、私と魔王、それにヒナちゃんと、怯えてうずくまっている囚人の女性だけになった。



 さて、どこまで話せるかな?



「こうして次にあなたに会って話をする時の準備をするために、あちこち旅をしてたんだけど、意外とあっさり会えちゃったよね?」


 魔王は無言だけど、とりあえず話を続けよう。


「この女の人、『覚醒』前だけど・・・そういう事だよね?」


 そう・・・・この囚人の女性はおそらく覚醒前の魔女だ。


 確実にそうなかというと、覚醒してみるまで確証はないのだが、条件を考えるとその可能性はかなり高そうのなのだ。



「ヒナちゃんもそうだと思ったみたいだけど、ヒナちゃんは違うよ。それは私が保証する」


 おそらく、魔王はヒナちゃんにも覚醒前の魔女の可能性を見出したからここ連れてきたのだ。


 だけど魔女を集めてどうするつもりなんだろう?




「確かに・・・その娘は違った様だな?・・・しかし、利用価値はありそうだ」


 やっとしゃべったよ!

 でも、この様子からすると、魔王はヒナちゃんの関わった例の事件には関係ないみたいだね。


「その人、あなたの事を怖がってるみたいだけど、どうするの?本人はまだ何も知らないんだよね?」


「・・・こいつの覚醒方法は見つけてある」


「覚醒したところであなたの味方になるとは限らないでしょう?」


 ・・・魔王は再び無言になった。


「ねえ、まだ人類の一掃を企んでるの?」


「ええっ!どういう事ですか?ララさま」


 隣にいたヒナちゃんが驚いている。


「まあ、『魔王』だからね。魔王の目的と言えば人類の抹殺だよね?」


「そんな!・・・何とかならないんですか?」


「うん、だから何とかしようとしてるんだよ」


「ララさまなら倒せるのでは?」


「殺しても復活しちゃうからね。説得できないと同じ事の繰り返しなっちゃうから根本解決にならないんだよ」


「わかりました!わたしからお願いしてみます」


「えっ?」


「『魔王』さん!人類の抹殺なんてやめて下さい!話し合えばわかりあえると思います!」


 ・・・ヒナちゃん、いきなり魔王を説得し始めちゃったよ!




「・・・お前は・・・人間に恨みを持っているのではないのか?そこの女と同じ様に」


 魔王がヒナちゃんに答えた。


 ・・・そして、この囚人の女性は、どうやら人間に虐げられてきたみたいだね。


「恨みですか?恨み何てありません。みんないい人ばかりです」


「そうか?・・・お前も人間たちにひどい仕打ちを受けてきたのだろう?」


「そんな事ありません!確かに悪い人もいましたが、それ以上にいい人もたくさんいます!わたしはこの世界の優しい人たちが大好きなんです」



「ふふふふふ・・・面白い・・・過去にこれほど深く傷ついた者をどうやってここまで立ち直らせたのだ?」


 魔王が私の方に問いかけた。


「ヒナちゃんを救ったのは私の弟子だよ。彼のやさしさがヒナちゃんを救ったんだよ!だからあなたや、その人だって!」



「・・・まあ良い、だが、その様子ではその娘は使えんな・・・今日のところは引くとしよう・・・」




 魔王がそう言うと、ヒナちゃんの姿が揺らぎ始めた。


 そして、私自身もだった。


 しまった!・・・これは強制転移魔法だね?




 気が付くと、私とヒナちゃんは元いた場所に返されていたのだ。


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