8話 勇者の弟子と人質交換
「約束通り指定の囚人を連れて来たぞ」
レィアさんが誘拐犯に声をかけた。
「約束通り一人で来たみたいだな」
例のリーダーは索敵魔法で周囲を監視してるみたいだね。
途中、レィアさんが指定の場所に着くと仲介人が次の場所を指示して、何度も場所を転々とさせられて、隠れて追跡していた護衛を完全に巻いてしまったみたいだね。
私はこの索敵魔法の解析が出来てるから、私とヒナちゃんは相手の索敵魔法にかからない様に認識阻害魔法を使って距離をつめて、レィアさんを見失わずに済んだのだ。
「そっちの人質も確認させろ」
レィアさんが人質の確認を要求した。
「この通り、赤ん坊は無事だ」
手下の一人が抱きかかえている赤ん坊をレィアさんに見せた。
遠目で良くわからないけど黒髪の赤ん坊だ。
多分あれがルルなんだろう。
「もう一人はどうした?」
「保険としてここには連れてきていない。人質の交換が無事に終わって俺達の安全が確保出来たら返してやる」
「約束が違うぞ!ここで人質を返すという話だったではないか!」
「こっちは別に赤ん坊を殺しても構わないんだぜ?何ならここで一人殺して見せようか?それとも自分の子供じゃないから殺されても構わねえか?」
「卑怯者!」
「いいから仲間を開放しな!こっちは仲間が戻れば赤ん坊には用はねえ。ちゃんと返してやるよ」
「わかった、解放しよう」
レィアさんは囚人を後ろ手に掴んで剣を突きつけた。
「ただし、こいつはその子と交換だ」
「ちっ、そう来たか・・・まあいい。そのままゆっくりとこっちに来い」
レィアさんが言われた通り、囚人を連れてゆっくりと、リーダーの方へ歩いていった。
「さあ、先に子供を返してもらおう」
「同時に交換だ。赤ん坊を受け取る時に同時にそいつを放しな」
誘拐犯の手下が、レィアさんの方にルルを差し出す。
レィアさんが剣を収め、囚人を放してルルを受け取ろうとした瞬間に・・・
「そらよっ!」
手下がルルを空高く放り投げたのだ!
「何をする!」
レィアさんが手を伸ばしてルルを受け取ろうとした瞬間に・・・攻撃魔法がレィアさんを襲った。
レィアさんが吹っ飛ばされて、落下したルルはふたたび誘拐犯の手下の手に渡った。
「卑怯だぞ!」
レィアさんが体勢を立て直して挑みかかろうとした。
「おっと!動くなよ」
誘拐犯の手下はルルにナイフの切っ先を向けていたのだ。
「おのれ!」
「完全にこっちが有利な状況になったな」
「約束が違うぞ!早くその子を返せ!」
「ああ?この状況で何言ってんだよ?そっちにはもう手札がねえんだろ?こっちが言う事を聞く理由がねえ。こいつの命が大事なら、まずはその剣を捨てな!」
「くっ!」
レィアさんは言われるままに剣を捨てた。
すると、誘拐犯の手下たちがレィアさんの周りに集まって来た。
「騎士団には今までの恨みがあるんだ。ここで返させてもらうぜ!」
そう言って手下はレィアさんに殴りかかった。
そして他の手下も殴り始めたのだ。
「ララさま!」
隣にいたヒナちゃんが私を見た。
「うん、これ以上は黙っていられないね」
人質交換が問題なく終りそうなら、ルルが戻ってくるまでは様子を見ようかと思っていたけど、そうは言っていられない状況だよね!
はやくレィアさんを助けないと!
でもルルに刃物が向けられているし、どういう手順で助けよう?
あのリーダーの魔法も未知数で厄介だ。
段取りを間違えるとルルが殺されてしまう可能性がある。
まずはルルを取り戻すのが先決か?
やはりリーダーに気が付かれる前に一瞬でルルを取り返そう。
あのリーダーに手の内を見せたくなかったけど、私が転移魔法でルルのところ瞬間移動するのが一番確実だよね。
「私が行くからヒナちゃんはここに隠れてるんだよ!」
そう言って私が転移魔法を発動しようとしたその時・・・
ルルを抱えていた手下が・・・遥か遠くの方に吹っ飛ばされた行ったのだ!
えっ!・・・何が起きたの!ルルは無事なの!
「ララさま・・・ルルちゃんが・・・浮いてます!」
見ると、ルルが足を蹴り上げたポーズで空中に浮いていたのだ!
誘拐犯の仲間たちは。一瞬、動きを止めてルルに注目していた。
「なんだ・・・このガキは・・・一体何が起きた?」
次の瞬間、ルルは、レィアさんを痛めつけていた連中の方に移動していた。
そして、誘拐犯の仲間が次々と飛ばされていく・・・
「ジオ様!」
あれは、ルルじゃない!ジオ様だったんだ!
ちょうど今、目を覚ましたんだ!
「えっ?ジオちゃん・・・ですか?」
「ヒナちゃん!もう大丈夫だよ!レィアさんのところに行ってくる!」
私は、レィアさんのところに向かって走り出した。
その間にもジオ様は次々と手下を倒していく。
「うわぁ!どうなってんだ?このガキは!」
そこそこ腕の立つ連中みたいだけど、ジオ様の敵ではないよね?
これでもジオ様は、一応相手を殺さない程度に手加減しているのだ。
「レィアさん!大丈夫ですか?」
「ララさん!あれは?」
「ルルかと思ったらジオ様の方だったみたいです」
私はとりあえず治癒魔法でレィアさんの傷を治した。
「すみません、ララさん、わたくしの段取りが悪くて・・・」
「レィアさんのせいじゃないよ!向こうが卑劣なだけです!」
そんな乱戦の中、私はリーダーの姿を探した。
ジオ様が倒した中にはいない・・・どこに行った?
リーダーがアジトに帰ったら今度はルルが危ない。
何とかリーダーを捕まえるか、後をつけてルルを早急に見つけださないと!
しかし・・・いつのまにかリーダーの姿を見失っていたのだ。
「きゃあ!やめて下さい!」
声のする方を見ると、私たちが隠れていた場所でヒナちゃんがリーダーに腕を掴まれていたのだ!
「しまった!ヒナちゃんが!」
しかし、次の瞬間、リーダーとヒナちゃんの姿は描き消えていたのだ。
なんてこと・・・今度はヒナちゃんまで捕まってしまった。
そして、人質交換で渡した囚人も・・・一緒に消えていたのだ。
明日から新作の連載を開始します。
人間が滅亡した後の世界のアンドロイドの恋愛の話です。




